「客はゴミだと思って接したらいいから」
逮捕された水道業者の指示役とみられる男が口にしたのは、耳を疑うような言葉でした。
“トイレの詰まり”という、誰もが経験しうるトラブル。
そこに付け込み、ずさんな工事のうえに40万円という高額な料金を請求。さらにはクーリング・オフにも応じないという悪質な手口で、男は複数の客から金を脅し取っていたとみられています。
なぜ被害が広がったのか?悪質な水道業者の実態を取材しました。
■“トイレ詰まりの修理”をネットで見つけた業者に依頼しただけなのに…
取材に応じてくれたのは、息子が「悪質水道業者」の被害にあったと訴える女性です。
【息子が被害に遭ったという女性】「『言うたよな』みたいな感じで、脅してんねや」
去年2月、大阪市内に住む女性の息子(20代)が、自宅のトイレが詰まったため、インターネットで調べた業者に修理を依頼。
30分ほどの作業のあと、請求されたのは驚きの金額でした。
【息子が被害に遭ったという女性】「『60万かかるぞ』みたいに言われて。(息子は)『いや、お金はない』と」
息子は、高額すぎて支払えないと伝えましたが、しつこく求められ最終的に40万円を支払う契約書にサインしてしまいました。
■悪質水道業者は関西で同様の行為を繰り返していたか
そして今月5日、この悪質業者の1人が逮捕されました。
自称・水道工事業の佐田大希容疑者(30)は去年5月、トイレの修理を依頼した大阪市都島区に住む男性に対し、法外な工事代金を請求。
「こざかしい真似すんな。全部出せ」などと言い現金20万円やスマートフォン2台などを脅し取った疑いがもたれています。
この事件では、現場にいた牧谷龍真被告(26)と増田拳志郎被告(28)がすでに逮捕・起訴されています。
さらに、兵庫県警にも別の事件で逮捕されるなど、関西で同様の行為を繰り返していたとみられます。
■「客はゴミやから」悪質水道業者の実態
警察によると、佐田容疑者は指示役とみられ、「客はゴミやから」「特に年寄りは適当な値段を言って巻き上げたらいいねん」といった言葉を2人にかけていたということです。
取材班は、逮捕前の佐田容疑者に高額請求について電話で問いただしていました。
【記者】「水道工事で高額請求している?」
【佐田容疑者】「そちらに関しては事実確認中ですので、またご連絡させてもらっていいですか」
その後、連絡が来ることはありませんでした。
■なぜ高額代金を払ってしまうのか
息子が被害にあったと訴える女性が当時を振り返ります。
【女性】「(振込先が)佐田って人の名義の通帳だった」
工事代金の振込先として指定されたのは佐田容疑者の口座でしたが、現場に来ていたのは牧谷被告で、その作業はずさんそのものでした。
【女性】「普通、工事するんやったら清掃用具とか持ってくるじゃないですか。何に持ってこずに息子のタオルを借りたり。実際、トイレその後に使ったら水漏れしてきて、『これどないなってんねん』と」
それなのになぜ、高額な代金を支払ってしまったのでしょうか。
【女性】「書類も、結局全部工事が終わってからもう帰り際にササッと書いてサインさせた。いや、『それは見積もりでも何でもないよね』って」
■クーリング・オフで返金される?
支払いを躊躇していると、強い口調で「なんぼ出せるん。現金おろしてきて」とたたみかけられたと言います。
【息子が被害に遭ったという女性】「『金がないんやったら、なんぼ出せる?』と言われたみたいで。ちょっと怖かったんでしょうね」
作業がすべて終わった後に執拗に代金を請求して、客に支払わざるを得ない状況をつくっていたとみられます。
息子から連絡を受けて駆け付けた女性は不審に思い、契約解除(クーリング・オフ)を申し出ました。
【息子が被害に遭ったという女性】「さすがに40万円は行き過ぎやと。『ほんまに必要な金だけであとはもう返しなさい』って話をして。『何日後に返事できるの?』と言ったら、『あと1週間後ぐらいには返事できます』みたいな話だったんですけど」
■返金に応じる姿勢を見せるも延期に次ぐ延期
後日、書面でもクーリング・オフを正式に通知しましたが、ここから悪質業者の本性が見えてきました。
(電話の音声より)
【息子が被害に遭ったという女性】「どんな感じですか?」
【工事をした牧谷被告】「うちが12万いただいて、残りを返金っていう話であれば4月頭くらい」
【息子が被害に遭ったという女性】「確実な日をいただかないと困ります」
【牧谷被告】「4月頭と言っても、1日とか2日とか…」
【息子が被害に遭ったという女性】「28万円は必ず返ってくると思っていい?」
【牧谷被告】「そうですね」
【息子が被害に遭ったという女性】「こっちからかけないといけない?」
【牧谷被告】「僕ね、いま作業中で」
その後、女性は何度も電話しましたが、返金は何回も延期されたということです。
返金を先延ばしにする業者の狙いは何なのでしょうか。
【消費者トラブルに詳しい 増田朋記弁護士】「法的にはクーリング・オフで(お金を)返してもらえる。しかし、クーリング・オフを無視して逃げるっていうことがあるんですね。逃げてしまうので、被害回復できない。こういう手口が増えている」
■返金はされず…呆れた言い訳も
その後も返金は行われず、挙句の果てにはこんな言い訳も…
【息子が被害に遭ったという女性】「頑張って28万円の返金お願いできますか?」
【牧谷被告】「“頑張って”…。自腹になるんで、それ」
捜査関係者によると、牧谷被告は佐田容疑者に「現場の取り分は3割」「儲けたければ多く金を取ってこい」などと指示されていたということです。
女性が法的手段に出ると告げると、牧谷被告は「もしお客さんがそうするのであれば裁判でも」と開き直り、およそ1年経った現在まで返金はされていないということです。
【女性】「うちの子が2カ月働いた金、40万円取られてんねんで。実行犯にもむかつくけど、言うたら、その上が一番悪いわけじゃないですか。罰を受けてもらいたい」
■勝負の決め手は「払わないこと」と菊地弁護士
クーリング・オフを無視して逃げる悪質な手口は現在、増えているそうです。
現行の制度では行政処分の対象にはなりますが、「返金の強制力」はなく、この問題に詳しい増田朋記弁護士は、「業者の財産を差し押さえるなど、法律の見直しを検討すべき」と話しています。
「newsランナー」に出演した菊地幸夫弁護士は、勝負の決め手は「まず払わないこと」と「事前に見積もりを取ること」だと話しました。
【菊地幸夫弁護士】「今回のケースは作業が終わってからの契約で、『これだけやったんだから、これだけよこせ』という論理。『事前にいくらかかりますか? 見積もりを出してください』。その見積もりに60万円と書いてあったら『結構です』とここで何とか頑張る。最初が勝負です。行政も水道業者の資格を取り上げるなど、迅速に動いてほしい」
(関西テレビ「newsランナー」2026年2月12日放送)