車やSP足りない悩みも?皇位継承費用を徹底解剖! 時代を映す代替わり行事のウラ側

政治部
カテゴリ:国内

  • パレードのオープンカーはゴーン会長逮捕であの車に?
  • “ニッポンのおもてなし“195か国の要人にどう対応
  • 新時代を反映して予算増、一方で削減された予算も

数多くの儀式に10連休も! 注目の皇位継承行事

2019年最大の行事である天皇陛下の退位と新天皇の即位。それに向けた準備は目下、政府内で着々と進められている。様々な儀式・行事には、どんな人たちが招かれ、どれだけのお金が投入され、平成の代替わりとどう変わるのか、私たちが取材した現時点での最新情報をお伝えしたい。

今年予定されている皇位継承に関する儀式・行事は以下の通りだ。

2月24日 陛下の在位30年を祝う「天皇陛下在位30年記念式典」
4月30日 陛下が退位にあたってお言葉を述べる「退位礼正殿の儀」
5月1日 皇位のしるしを引き継ぐ「剣璽等承継の儀」
 新天皇が即位後初めて三権の長など国民の代表と会う「即位後朝見の儀」
10月22日 新天皇が内外に即位を宣言する「即位礼正殿の儀」
 新天皇がパレードを行う「祝賀御列の儀」
 祝宴を行う「饗宴の儀」
10月23日 来日した外国首脳らに感謝の意を示す「首相夫妻主催夕食会」
11月14~15日 新天皇が五穀豊穣を祈る「大嘗祭」

このように1年を通じて様々な儀式が行われることに加えて、退位と即位に伴い4月27日から5月6日は特別法により10連休となる。祝日法が施行された1948年以降、9連休は過去7回の例があるが、10連休は史上初のことで、まさに特別な1年となる。

新年一般参賀(1月2日)

予算なんと8000万円!パレード用の日本産オープンカーはどの車に

そして、一連の行事や儀式の費用として来年度予算案には約144億円が盛り込まれた。このうち、まず私たちが注目したのは新天皇が国民の祝福を受けるパレード「祝賀御列(しゅくがおんれつ)の儀」に使用するオープンカーの費用だ。 その予算額は実に8000万円。沿道の観衆から新天皇のお姿がよく見えるようにするためにはオープンカーがふさわしく、その調達費用なのだが、なぜ8000万円かかるのか。

即位の礼のパレード(1990年11月)

平成の代替わりに伴って購入された英国製ロールス・ロイスのオープンカーは年式が古く、修繕に多額の費用がかかることから、政府は新たにオープンカーを調達することを決めた。ただ、市場に流通しているオープンカーは2人乗りが多く、運転手や警護官が同乗できる4人乗りのオープンカーは新たに製造することになる。

そのため8000万円のうち、約1400万円が設計や試作などのための費用となり、残りの6600万円が実際の製造にかかる費用として見積もられている。そして政府はこれまでに、今回のオープンカーは、国産車とする方針を固めた。そこで注目されているのが、オープンカーが、どの自動車メーカーのどの車種になるのかだ。 

注目のメーカーと車種は…ゴーン氏逮捕の余波がここにも?

政権幹部は、「新天皇を乗せる車という特性上、必ずしも入札が良いとは限らない」と述べ、政府がベストだと思うメーカーを選んで発注できる「随意契約」にする方向であることを示唆した。そして当初は、国内大手自動車メーカーとしてトヨタ自動車と日産自動車の名前があがり、絶大な宣伝効果もあるこのオープンカーをどちらの社が受注するのか注目された。

ところが、去年11月に青天の霹靂のごとく起きたのが、日産のカルロス・ゴーン会長の逮捕だった。こうした不祥事と新天皇を関連付けられたくないためか、逮捕直後に、ある政府関係者は「これで一択に絞られた」と、トヨタを推す考えを口にした。

逮捕された日産・カルロス・ゴーン会長

本命はトヨタの最高級車センチュリー?

仮にトヨタの車が採用されるとした場合、同社には安倍首相の公用車でもある高級車レクサスなどを抑えて、車種の候補筆頭とみられるのが、同社最高級車であり、大物政治家が乗ることも多い「センチュリー」だ。去年フルモデルチェンジが行われたその一般販売価格は1960万円だが、この基盤をベースに、オープンカーにするための改造や、警備面も考慮した様々な仕様変更が行われ、そのための費用がかかることが考えられる。 

パレードが行われるのは今年の秋だけに、早急にメーカーを決めないと間に合わず、すでにメーカーが内々に決まっている可能性は高い。果たしてどういった車に新天皇は乗られることになるのか。なお政府は、パレードを終えたオープンカーを内閣府の管理のもとにおき、東京オリンピック・パラリンピックなどの行事に有効活用することにしている。

悩む外務省…平成より30か国増加で外国要人にはどう対応

今回の代替わりは、30年前の平成の代替わりの時と比べ、国際社会も大きく変わっている。平成元年当時の外国数は165か国だったが、2018年時点では195か国と、30か国も増えている。これに伴い、新天皇の即位を内外に示す「即位礼正殿の儀」に招待する対象となる外国要人の人数も、平成時と同じ基準に基づく内閣官房の試算では、500人から770人規模にまで膨れ上がる。

即位礼正殿の儀(1990年11月)

しかし、770人すべてを招くとなれば、祝宴(饗宴の儀)を何回かに分けて行わざるを得ないため新天皇の負担が増える。さらに即位礼正殿の儀に参列する要人らを招いて執り行われる首相夫妻主催の晩さん会は、都内のホテルで催されるため、会場の広さが足りない問題が生じてしまう。よって、外務省は現在、どの範囲の外国要人を招待すればよいのか、どういう線引きをするのか頭を悩ませている。しかし仮に「大国」に限るとしても、その基準は恣意的なものになりかねず、かなりの難題のようだ。

即位の礼には海外から多数の要人が(1990年11月)

しかも、来日する要人らは、都内や近郊のホテルに泊まることになるため、「ただでさえインバウンド需要が高いので早めに部屋を確保しないといけない」(外務省関係者)こともあり、宿舎確保の観点からも決定が急がれている。

なお、前述の首相夫妻主催晩さん会では、首相が挨拶をするほか、せっかく来日した外国要人に日本の伝統文化を深く知ってもらう目的で文化行事が予定されている。平成の代替わりの際は歌舞伎と能が披露されたが、今後調整されるその内容にも注目したい。 

SPも車も足りない!?海外要人の警備体制の構築に急ピッチ

そして、外国要人の来日は、警護の問題抜きに語ることができない。一般に、外国要人が来日する場合、外務省が警護の必要があると判断すれば警察庁に要請を行い、警察庁がその必要性を認めれば警護担当者(SP)や警護車列をあてがうことになる。

今回、即位にあたって来日する外国要人は原則として首脳クラスであるため、ほぼ全員にSPを割り当てることになる。その人数は、各国の規模などに応じ複数人で警備を行うため、政府関係者によると2000人規模が必要と見込まれている。普段ならば、外国要人来日にあたっての警護は警視庁が担うが、今回さすがに人数が足りないため、昨年の暮れより、全国の道府県警察から警備担当の警察官を東京に招き研修させるなどして、警護人材の育成を急ピッチで図っている。

そのうえで、警護車列で外国要人が乗る車は、現在は外務省予算で購入され警視庁で運用されている防弾仕様のマイバッハやベンツなどが用いられることが多いが、今回の即位行事にあたってはさすがに車が足りないため、各道府県警察に車列の運用を任せたり、ハイヤー会社から車を手配したりすることも視野に入れた調整が進められている。

こうしたことから、外務省が計上する外国賓客滞在等関係経費の予算は平成時の9.8億円から50.8億円へと5倍に膨れ上がった。これも平成の30年間に進んだ、国際化の実態を物語っているといえるだろう。

新時代を反映して予算増、一方で削減予算も

また、今回の一連の皇位継承式典にあたっては、時代情勢を反映した新たな工夫と予算節減の努力も図られている。

まず、30年前と比べ大幅なIT化が進展した今回は、情報通信分野で新規計上されている予算が多い。例えば、会場でのWi-Fi環境の整備費(約1100万円)、デジタルサイネージなど新たなメディアによる広報費(約1.1億円)、インターネットを通じた公式画像の提供費(約5900万円)などが挙げられる。また、簡素化の一環で式典のための仮設ステージを宮中に建てないことになったため、代わりに大型モニター等(約1.5億円)を設けることになった。

加えて、テロ対策が喫緊の課題となった今、小型無人機(ドローン)対策や顔認証システムの導入など、警備システムの費用として約1.7億円が計上されている。ちなみに平成時はわずか約400万円だった。そのうえで、万一のNBC(核・生物・化学兵器)テロに対応した医療体制の構築も図られる予定だ。

一方、コストが削減されているのが、記録物関連だ。平成時には式典の様子などを紙媒体の写真集やVHSでの記録映画等に収めていたが、オンライン配信などが可能となった今、そうした記録物の作成や頒布にかかる費用は約3億円の削減が見込まれている。

また、式典で使われる皇族方の装束についても、式典簡素化の観点から、過去に用いたものを再利用することで、約3.8億円ものコストカットが見込まれている。(新天皇の装束は新調される)

大嘗祭(1990年11月)

なお、コストに関連して大きなニュースとなったのが、秋篠宮さまがお誕生日にあたっての会見で語られた大嘗祭についてだ。

大嘗祭とは、新天皇が即位にあたって新穀を神々に供え五穀豊穣を祈るという1代の天皇に1回だけの重要な儀式だが、宗教色が強いため、今回も国事行為とはされていない。そのため秋篠宮さまが、大嘗祭を公費で行うことに疑問を呈し、費用を削減したうえで天皇家の私費で賄うべきだとする考えを示されたのに対し、政権幹部からは皇室の政治への介入につながりかねないとの懸念が示されるなど、物議をかもした。 

秋篠宮さまの記者会見(2018年11月)

この大嘗祭の実施にあたっては祭場となる大々的な「大嘗宮」が宮中に建設されるが、これはしきたりにより大嘗祭後には取り壊すことになっている。そこで今回は当初からコスト削減のための工夫が凝らされ、建物の一部縮小や、取り壊しを前提にする設計などが考えられ、宮大工などの人件費高騰や、材料となる萱が入手しにくい事情を勘案しても、総工費は平成時をやや上回る程度に抑えられたという面もある。

大嘗宮(1990年11月)

こうして見てきたように、一連の皇位継承に関する式典の実施は、古来の伝統を維持しつつ、時代の要請に合わせて変容を遂げている。今年の様々な儀式を通して発信される新たな時代の日本の姿は、世界にそして未来にどう語り継がれるのか、注目していきたい。

(フジテレビ政治部官邸担当 千田淳一、山田勇、杉山和希)

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