平成カウントダウン「改元」めぐる舞台裏 「新元号」公表日めぐる官邸の暗闘

政治部
カテゴリ:国内

  • 「4月1日新元号公表」で元日から大騒ぎ
  • 激しい対立…新元号を公布するのは今上天皇?新天皇? 
  • 決断の決め手と、安倍首相に袖にされた保守派の本音 

“新元号元年”を巡り1月1日から奔走

2019年、平成31年がいよいよスタートし、平成の時代が幕を閉じるカウントダウンが本格的に始まった。平成の次の時代をどう迎えるか期待や希望が膨らむ中、私たち政治部の記者は今年の皇室カレンダーの5月以降に記された“新元号元年”に向けて、年明けとともに、し烈な取材合戦を展開した。

4月1日に新元号公表へ―首相が年頭会見で表明

それは新年を迎えたばかりの1月1日午前0時過ぎ、除夜の鐘の音がまだ頭に残る時間だった。新元号は4月1日に発表されるという一報が流れ、テレビ・新聞各社が一斉に深夜の取材に入った。フジテレビ政治部も関係先への深夜の取材を経て、年越し番組の最中に「安倍首相が新元号を4月1日に決定・公表の方針固める」と2019年最初のニュース速報を出した。

そして迎えた1月4日、伊勢神宮を参拝した安倍首相は年頭記者会見で新元号の4月1日公表を正式に表明し、次のように語った。

「改元は皇太子殿下が御即位される5月1日に行います。新たな元号については国民生活への影響を最小限に抑える観点から、4月1日に元号を改める政令を閣議決定し、その公布は通常の政令制定の手続きに従って行う考えであります。そして、具体的にどのような過程を経て元号を制定するかについては、平成改元の手続きを踏まえつつ、決めていきたいと考えています。」

安倍首相の年頭会見(1月4日 三重・伊勢市)

新元号 事前公表日決定を巡る内幕

安倍首相が「新元号4月1日公表」の最大の理由に挙げた“国民生活への影響”。政府は、自治体や民間企業が新元号に合わせて事前に情報システムの改修が必要になることから作業上の便宜として、新元号の公表日を改元1か月前と想定し、システムの改修・準備を進めてきた。

これを踏まえて、官邸内では新元号の公表日について、「4月1日」、あるいは4月10日に超党派の議員連盟などが天皇陛下の即位30年を祝う式典を行うことを考慮した「4月11日」、さらには4月7日、21日の統一地方選挙の投票日を避けた上で5月1日に近い「4月下旬」など、様々な意見が交錯した。さらにこうした意見そのものに“待った!!”をかける人たちもいた。

官邸内で対立した“2つの勢力”

新元号の制定の流れには大きく3つの手続きがある。

それが「1 閣議決定・公表 → 2天皇による署名(御名御璽)・公布 → 3施行」の3つだ。この1〜3をいつ行うかについて、首相官邸内には対立する2つの勢力があった。

一つは杉田和博官房副長官など、官僚を含めた官邸中枢の勢力だ。こちら側は国民生活への影響を最小限に抑える立場から、新天皇が即位する5月1日の前に2までを行い、5月1日0時00分に新元号をスタート(施行)する考え方だ。

杉田和博官房副長官

しかし、これに反対したのが、自民党保守派の意見を代表する、衛藤晟一首相補佐官らだ。衛藤氏らは、今の天皇陛下の在位中に次の元号が発表されたり、今の天皇陛下が次の新元号を決める政令に署名するのは、天皇一代で一元号とする「一世一元の制」にそぐわないと指摘した。その上で、新元号の決定・発表から施行までの1~3をすべて新天皇が即位する5月1日に行うべきだと主張した。

衛藤晟一首相補佐官

しかし杉田氏らが事前公表の方針を崩さないのを受け、衛藤氏らは、新元号の事前決定・公表は容認した上で、「御名御璽(天皇による署名・押印)、それを新天皇が行うべきなのだ」と、せめて新元号の公布は新天皇が行うべきだという、譲れない一線を設定し直した。

それに対して杉田氏らは、政令の施行は公布翌日以降とすることが通例のため、保守派の主張に沿って新元号の公布を新天皇のもとで5月1日に行う場合、新元号の施行は翌5月2日からとなってしまう、つまり新元号のスタートが即位翌日の5月2日になってしまうと反論した。さらに仮に施行日を遡って5月1日に適用するという政令にしたとしても、5月1日に平成と新元号が混在してしまう問題を指摘した。

また、政令は通常、閣議決定から1週間以内に公布されるのだが、余裕をもって事前に閣議決定を行い、5月1日に公布した場合、閣議決定から公布までの期間が、通常の政令の場合を超えて空いてしまうことになる。杉田氏側によれば、それは保守派の考え方を尊重したということ以外に合理的な説明はつかず、「それこそ天皇の政治利用、また政教分離に反する」(政府関係者)ことになり、保守派の主張は受け入れられないという論拠となった。

この意見対立をめぐり杉田・衛藤両氏は、それぞれ安倍首相と何度も面会をし、双方の考えを繰り返し主張した。そして安倍首相が最終的に選択・決断したのは、4月1日に閣議決定し、現在の天皇陛下のもとで公布するという、杉田副長官らの考える日程だった。その首相の決断の背景を政権幹部は次のように話している。

「崩御の場合は(準備が)遅れても影響ないが、事前(にわかっている生前退位)だからこそ失敗できない」
「退位特例法が成立した際の付帯決議には、国民生活に支障が生ずることがないようにすることを政府に求めている」

もう1つの決め手…わずか1日違いでの影響が判明

さらに政府関係者が、杉田氏らの案が通ったもう1つの決め手としてあげているのが、政府が12月に行った調査の結果だ。政府は「改元1か月前」を想定していた事前公表の時期を保守派の主張に近づけ、さらに繰り下げることができるのか改めて調査したが、その結果、重要な事実が判明したという。

官公庁のシステムや一般的な民間のシステムは対応可能だった。しかし、多くのパソコンに用いられているマイクロソフト社のOS「ウィンドウズ」については、「更新作業が毎月1日に行われることが世界的な標準」(政府関係者)となっていた。つまり、4月1日より後の公表となると、システムに反映されるのが5月1日以降となってしまい、影響が生じるのだという。

 今回、首相に主張が容れられなかった保守派は、「年末にも、まだチャンスはあると年明けの挽回策を考えていた。しかし実際には、12月18日の安倍首相と衛藤補佐官の面会で、安倍首相としては仁義を切ったという理解なんだろう」とターニングポイントを振り返っている。それでも衛藤氏周辺は、首相の決断への理解を示し、これからも首相補佐官という立場のもとで、保守派の観点から首相への助言を続ける考えを明かした。

新年一般参賀(1月2日 皇居)

新元号の公表まで3か月を切った。今後は、公表から改元まで1か月の期間で混乱なく次の時代に移れるのかどうかと同時に、どんな元号が決定されるのかという点に最大の注目が注がれる。

(フジテレビ政治部 官邸担当 千田淳一 山田勇 杉山和希)

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