出来た法律は虫食いだらけだ

坂本龍馬は「死ぬ時はたとえ、どぶの中でも、前のめりに死にたい」と言ったらしい。男なら一度は言ってみたいかっこいい言葉だ。

さて国会が終わり、次は総裁選。

 
 
この記事の画像(5枚)

立憲の枝野代表は国会最終日、延々2時間43分に渡る議事妨害の演説で「憲政史上最悪の国会」と安倍政権をこき下ろした。
確かに安倍首相はモリカケで多少モタモタしたものの、終わってみれば数の力を最大限に発揮して、通したい法案は大体通した。
予算案、働き方改革、IR、公選法、禁煙など。

でも枝野さんが怒るほど安倍さんはやりたい放題やりました?
全然違うと思う。
むしろ、野党、公明党、メディア、いろんな人たちに気を使い、できた法律は虫食いだらけだ。
安倍さん、全然前のめりじゃない!
 

安倍さんは小池さんに負けている

 
 

たとえば、働き方改革は、残業を規制するのは世界の常識だからいいとして、その分裁量労働を増やさないとフェアでないのに、厚労省の出したデータがいい加減で、裁量労働の拡大は外されてしまった。
これでは労働の自由化はいつまでたっても進まない。
むしろ中小企業は残業を規制されるだけで大変なのではないか。

IRはカジノの入場料や、面積規制を当初案より随分踏み込んだが、まだまだ規制が厳しすぎる。
みなさんカジノにばかり目が行っているようだが、今のままでは国際会議の誘致など、とても競争力を持てるとは思えない。

禁煙法案に至っては半数以上の飲食店が喫煙のまま、という、いったいどこの野蛮な国の話だよという恥ずかしい法律だ。
東京都の禁煙条例が8割をカバーしているので、前にも言ったが安倍さんは小池さんに負けている。
 

総裁選に勝つまでは無理をしない?

 
 

安倍さんはなぜもっと前のめりにならないのですかね?
今の政権基盤の強さをもってすればもっといろいろできるはずなのに。
理由はわかっている。
総裁選に勝つまでは無理をしない、その先に憲法改正もあるので、ということだ。

それはわかる。

総裁選で3選されれば2021年までの任期となる。
衆院の任期も同じく21年。あと3年は好きに前のめりになれるのだ。
これは楽しみだ。
どうか思いっきり前のめりになってほしい。
それ、みなさん嫌ですか?

 
 

もし嫌だったら次の首相をうんとリベラルな人にすればいい。
政権交代ってそういうもんですから。
欧米各国はそうやって2大政党が交代で政権を担っている。
日本は今はたぶんそれができないけど、その代り自民党内で総裁選をやって疑似政権交代する。
だから安倍さんの後継はリベラルな人になるかもね。

そういうことを前提に安倍さんにはおもいっきり振り切ってほしい。
どうか安倍さん、9月以降は前のめりでお願いします。

関連記事:【平井文夫の言わねばならぬ】すべての記事はこちら

(執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫)

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。