連日、猛烈な暑さが続く日本列島。
最近では35度を超える猛暑日に驚きもしないほどになり、18日には岐阜県多治見市でついに40.7度を記録した。

夏の不快なものといえば、噴き出る汗に強い紫外線…そして夜中に耳元でブーンと聞こえる羽音はまさに「かほどうるさきものはなし」なのだが、最近この邪魔者、見ているだろうか。

Twitterでは「最近見かけないと思っていたけど、35度以上だと蚊は活動できないらしい」という投稿が話題になっている。
夏の風物詩、むしろ暑ければ暑いほど元気に活動しそうなイメージもあるのだが、7月も半ばを過ぎたところで、去年より蚊に刺されていないような気も…

みんなグッタリの夏、蚊もグッタリしてくれているなら人間からすればありがたい。早速、これが事実なのか、疾病媒介昆虫の研究をしている長崎大学熱帯医学研究所に確認した。
 

「35度で活動できなくなる」 は妥当

――35度の気温で蚊が活動できなくなるというのは本当?

ネッタイシマカという蚊を使った実験で、いろいろな温度と湿度の条件で蚊の飛翔活動を調べてみたところ、
飛翔が見られたのは10度から35度までだったという論文があります。
また、これまで最適と言われてきた27度よりも15度の方が長く飛んだとあります。

日本に多く、昼間野外でよくヒトから吸血するヒトスジシマカはネッタイシマカと近縁なので、高温に対する耐性もそれほど違わないと思われます。
ですから35度を超えると蚊が活動しなくなって刺されにくくなるというのは妥当だと思います。

よく見る「ヒトスジシマカ」
よく見る「ヒトスジシマカ」
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白黒シマシマの「ヒトスジシマカ」や赤っぽい体の「アカイエカ」をはじめ、日本にはなんと110種以上の蚊が生息していて、その中でも国内でよく見る「ヒトスジシマカ」の仲間は35度以上になると活動しなくなるという。

また、家庭用殺虫剤や衣料用防虫剤を展開するKINCHO(金鳥)でおなじみの大日本除虫菊株式会社にもお話を伺ったところ、蚊が活動できる気温は15度から38度程度までさまざまな説があるため一概には言えないが、活発に活動する気温は26度から32度だという。
蚊はもともと常に獲物を探して飛んでいるわけではなく、茂みなどに潜んで獲物を待つことが多い。近頃の暑さは蚊が好む気温とはいえず、涼しい場所を求めてじっと潜んでいるのだという。

今年は暑い日が続いたことから例年よりも2週間ほど蚊の発生が早まり、ゴールデンウィーク中から刺される人が出始めたというが、どうやら、最近になってあまり蚊を見かけなかったのは気のせいではなく、この異常な暑さのせいで間違いないようだ。
 

油断するな!潜む蚊に注意

ただ、蚊に刺される心配がなくなると喜ぶのはまだ早い。
大日本除虫菊株式会社によると「日中、蚊を見ないからといって安心しないこと」が大事だという。
日中、蚊はあくまで潜んでいるだけであって、比較的涼しい朝や夕方に動きが活発になるため、暑さのピークの中で蚊を見かけなかったからといって防虫ケアを怠らないでほしいとアドバイスする。

長崎大学熱帯医学研究所 病害動物学分野のサイトによると、蚊は「体温」「動物が呼吸するときに出す炭酸ガス」「濃い色と薄い色のコントラスト」「汗や体臭」の4つに寄ってくるという。
また、蚊に刺されやすいのは

(1)女性よりも男性
(2)体温が高い人
(3)成人>青年>子供>新生児(ただし60才以上の高齢者は刺されにくい)
(4)一般的にO型


だという。
夕方から夜にかけて汗をフキフキ帰るお父さんは、ちょうど元気を取り戻した蚊にとってゴチソウというわけなので、しっかりと防虫対策をしてほしい。


あまりの暑さに、蚊も休憩したくなる猛暑。
ネット上では「蚊はこの暑さが危険だと本能でわかっている!」「蚊を見習って人間も休もう」などの声も。
今年の夏は防虫対策も大切だが、そもそも外に出ることも危険な暑さが続いている。熱中症対策にも力を入れて、暑さを乗り切ってほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。