知らなかった!伊能忠敬より先に日本地図を作った男「赤水」と竹島問題

カテゴリ:国内

  • 知っていますか?江戸の地図男「長久保赤水」
  • 伊能忠敬の地図よりも売れたワケ 
  • 「特別展」開催の背景には韓国との竹島問題 

「領土・主権展示館」と「長久保赤水」

ロックの聖地「野音」こと日比谷野外音楽堂などがある東京の日比谷公園。

その一角にある歴史的建造物の中に、政府の内閣官房が運営する「領土・主権展示館」という施設があります。

韓国も領有権を主張する島根県の竹島と、中国も領有権を主張する沖縄県の尖閣諸島について、日本固有の領土であることを示す資料などが展示された施設です。

その領土・主権展示館で7月2日からおよそ1か月間、「長久保赤水(ながくぼ・せきすい 1717~1801年)」という人物に関する特別展が開催されるのですが、

この人物、日本史上の知られざる偉人なのです。

伊能忠敬より前に日本地図を作った男!

長赤水先生肖像 茨城県立図書館蔵

歴史上、初めて日本地図を作った人物といえば誰でしょうか。多くの方は、歴史教科書などでも有名な江戸時代の商人、伊能忠敬(いのう・ただたか 1745~1818年)と答えるのではないでしょうか。

伊能忠敬は、初めて日本地図を測量に基づき作った人物で、今年、没後200年を迎えました。

ところが、実測ではないものの、伊能忠敬の日本地図完成よりおよそ半世紀前に、驚くべき精度の日本地図を作り、全国に広めた男がいるのです。それが長久保赤水です。

長久保赤水は、江戸時代中期の水戸藩(現在の茨城県)の漢学者です。

農民出身で幼少期に両親を亡くした苦労人でしたが、努力を重ね、地理学に精通していきました。

そして日本全国の地理に関する様々な情報を収集し照らし合わせ、日本で初めて緯線と方角線(経線)を用いた地図を作りました。

これは「改正日本輿地路程全図」として1779年に出版され、それまで一部の人にしか広まっていなかった地図の大衆化に貢献、通称「赤水図」としてベストセラーとなりました。

改正日本輿地路程全図(安政8年)初版 高萩市歴史民俗資料館蔵・長久保赤水顕彰会寄託

伝聞と文献調査によって描かれているのに、日本列島が驚くべき精度で正確に描かれ、5000以上の地名も載っているなど、現代の地図と比べても遜色ない出来になっています。

地図の大衆化に貢献し、幕末の必需品に

赤水の地図が発刊されてから42年後の1821年、伊能忠敬の測量による正確な地図が完成しました。

しかし、実は伊能の地図は「門外不出」とされたため、ごく一部の人しか見ることはできませんでした。

そのため、伊能の地図の完成後も、一般に普及していた地図は、この「赤水図」でした。

幕末期には、今の貨幣価値にして4000~5000円程度で手に入り、その実用性の高さから吉田松陰をはじめ、内外の要人らがこぞって購入、明治維新にかけての日本の動乱期に無くてはならない必需品となりました。

「赤水展」開催の理由は竹島問題

この「赤水図」をはじめ、長久保赤水に関する資料が公開される特別展が、「領土・主権展示館」で行われるのですが、その理由は竹島問題です。

日本海に浮かぶ竹島は、島根県に属する日本の領土ですが、韓国も領有権を主張し、1950年代から韓国による不法占拠の状態が続いています。

日本政府は、韓国に抗議すると共に、国際社会に対し日本の領有権を主張し、竹島が古くから日本の領土である様々な証拠を提示していますが、その1つがこの赤水図です。

赤水図には竹島(当時の呼称は松島)が明確に記され、当時の日本で竹島が広く認知されていたことを示すものとなっています。

「領土・主権問題」への認知・関心を高める狙い

この竹島問題や、尖閣諸島をめぐる問題については、国民の関心はある程度高いものの、縁遠いと感じる人も少なくありません。

内閣府が2017年に実施した世論調査では、全体で59.3%の人が竹島に「関心がある」と回答したものの、30代までの若年層では約5割が「関心がない」と答えました。

そのうち「関心がない」「どちらかといえば関心がない」と答えた人に、理由を複数回答で尋ねたところ、64.7%もの人が「自分の生活にあまり影響がないことだと思うから」と答え、31.4%が「竹島に関して知る機会や考える機会がなかったから」と答えています。

そうした中、政府は今年1月に「領土・主権展示館」をオープンし、竹島や尖閣諸島が日本固有の領土であることを示す公文書や写真などの資料の展示を始めましたが、展示館そのものについての関心も、なかなか広がらないのが現状だといいます。

そこで、展示館では、学校の夏休みも念頭にした7月2日から8月4日まで、赤水をテーマにした特別展を行い、「地図」をきっかけに「領土」に広く関心を持ってもらおうとしています。

地球万国山海輿地全国図 高萩市歴史民俗資料館蔵・個人寄託

特別展では、赤水図が当時“トラベルマップ”のように使われていたことから、地図のレプリカに手を触れ、折りたたんだり出来るコーナーが設けられるほか、展示を説明するギャラリートーク、赤水の自伝を描いた漫画家による漫画講座も行われる予定です。

江戸の偉人の足跡に思いを馳せながら、領土問題の歴史と今後について考えるのも、意義深いひとときになるかもしれません。

(政治部 官邸担当 山田勇)

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