菅政権は発足以来、連日コロナ対応に追われており、しかも今年に入ってからは長期間にわたり緊急事態宣言の発令や延長が繰り返されている。その政府のコロナ対応を安倍政権から継続取材する中で、いくつか「菅政権特有」の状況が生じていることに気づかされた。

“役人抜き”の意思決定「5大臣会合」

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菅政権の大きな特徴として、コロナ対策における意思決定を「5大臣会合」で行っていることが挙げられる。「5大臣」とは、菅総理大臣、加藤官房長官、田村厚生労働大臣、コロナ対策担当の西村経済再生担当大臣、赤羽国土交通大臣のことを指す。

ただ、この「5大臣会合」とは、あくまで永田町における“通称”にすぎない。正式な会議体ではなく、実態としては「総理執務室に大臣5人が集まって協議している」というものだ。そのため、政府対策本部のように、議事録のようなものが公開されているわけではなく、開催実績も正式には記録されていない。

加えて「5大臣会合」は政務(政治家)のみで行われるため、事務方(役人)が同席しない点がポイントだ。コロナ対策を担当する官邸や省庁の幹部(和泉首相補佐官や樽見厚生労働次官など)が冒頭に短く説明を行うこともあるが、途中で退出させられ、場合によっては「最初から最後まで中に入れず、廊下で待たされていた」(ある幹部官僚)ケースもあったという。

政務のみで議論を行うメリットとして、大きな「政治決断」を下しやすいことが挙げられるだろう。しかし、事務方が同席していないため、当初役所が想定していた内容と異なる決断がなされたときに、実務を担う役所に混乱が生じることは想像に難くない。

実際、沖縄県への緊急事態宣言が決定された5月20日の「5大臣会合」において、当初案が「6月13日まで」となっていたところ、会合を経て決定されたのは「6月20日まで」という内容だった。そして、決定内容は官邸幹部より先に、自民党幹部らへ伝達されたのだ。

安倍政権下では「コロナ連絡会議」という名称で、各府省の幹部らを交え、時には怒号が飛び交いながらも侃々諤々の議論が行われていたが、現在は「政治家中心」の意思決定が行われていると言えよう。

官僚出身の自民党中堅議員は「一部の政治家だけで決定を下していては、役所が付いてこないし、意見も偏ってしまう」と警鐘を鳴らす。「大臣のみ」による政治判断には、思い切って即断即決できるいうメリットだけでなく、リスクもあるということだ。

金曜日恒例の「儀式」

新型コロナ特措法に基づく、緊急事態宣言の発令やまん延防止等重点措置の適用にあたっては、「専門家による基本的対処方針分科会への諮問」「国会の衆参議院運営委員会への報告」そして「政府対策本部での決定」という一日がかりのプロセスが必要となる。直近では、緊急事態宣言の発令や追加等で、ゴールデンウィークを除くと4月第1週から5月第3週までの6週連続で、こうした一連の流れが行われている。

永田町では、こうした一連の流れが「儀式」と呼ばれ、6週連続での開催となったことから“マンネリ化”との声が出てきている。本来は、国民生活に直結する重大な意思決定プロセスであるが、こうした「儀式」が常態化しているのだ。

毎週金曜日に「儀式」が行われる理由として、週末から週明けの感染者数が検査を通して判明するのが週半ばであるため、判断は「週の後半にならないとなんとも言えない」(政府関係者)ことが挙げられるだろう。しかし、重要決定が五月雨式に毎週同様に繰り返されることは、「機動的」と評価できる反面、せっかくの効果が「マンネリ化」によって薄れてしまう面もあるだろう。東京都や・関西圏への緊急事態宣言の延長が確実になる中、いかに宣言の「メッセージ性」を担保できるかが問われている。

週末の“ルーティン”

菅首相は官房長官の頃から、週末には民間などの有識者との会談をハシゴし、各方面からの知見を自身の政策に生かしていたことで知られる。今も毎週末、首相公邸に様々な識者を呼び、その面会が実際の政策に結びついたこともある。

例えば、菅首相は5月15・16両日に医療法人桜十字グループの西川代表と面会し、同席者によると「企業での定期的なインフルエンザ予防接種のように、コロナワクチンも接種すれば良いのでは」との話になったという。この面会がきっかけとなり、FNNの取材で判明した「職場での定期健康診断でのワクチン接種」の実施方針が固まった模様だ。また、5月23日のプロ野球巨人・山口オーナーとの面会では、東京ドームにおけるワクチン接種の意向が表明された。

加えて菅首相は、毎週末の“ルーティン”として、コロナ対策を担当する幹部官僚らを公邸に呼び、感染状況のレクチャー(報告)を受けている。安倍政権下でも週末はこの「レク」が行われていたが、菅首相はそれに加えて民間の声を聞くことに積極的なことから、コロナに関する現場の声を気にしているということが週末の動静から読み取れる。

政策決定における「エビデンス」が重要に

緊急事態宣言の延長が確実となる中、コロナとの戦いは一層の「長期戦」の様相を呈している。「自粛疲れ」も表出する中で、国民の理解を得るためには、政策決定における「エビデンス」や「納得感」がますます重要になってきている。緊急事態宣言の延長や解除に向け、今後も「儀式」が続くであろうが、いかに国民への説明責任を果たし、かつ政策を動かす役所を束ねられるか、菅政権のコロナ対応の真価が問われている。

(フジテレビ政治部 山田勇)