「日本人にはファイターの精神がある!」トランプ氏がシンゾーに語った言葉の意味とは?

カテゴリ:国内

  • “シナリオがない”首脳会談で、中距離ミサイルの廃棄要請をしっかり打診
  • 「北朝鮮問題についてはシンゾーの言うことを聞く」は本当?
  •   「モテギはタフネゴシエーターだ」に米側代表が檄を飛ばしたワケ
日米首脳会談後の共同記者会見

「今回の首脳会談にシナリオはない」

3回目の安倍・トランプ会談を前に、政府関係者が語ったこの言葉が耳に残る。

蜜月、個人的な信頼関係、メンター(相談者)など、安倍首相とドナルド・トランプ大統領の関係はいくつかの“形容詞”で表現されるが、個人的にはどの言葉もまだしっくりこない。

片方が、あるいはお互いが窮地に立たされた時、信頼関係の本質が見えてくるからだ。

それはまもなく行われる米朝首脳会談、そして、その先に行われるかもしれない日朝首脳会談が終わるころ、ふさわしい形容詞がみつかるのかもしれない。
そういう意味で、今回のシナリオなき日米首脳会談は、両首脳のもとでの日米同盟の今後を占う試金石だったと位置付けることができる。

この会談について、様々な論評、評価があることは承知しているが、現場で取材した記者として知りえたことを書いてみたい。

日米共同会見では、2日間の首脳会談で、北朝鮮への対応、そして貿易問題が主要テーマになったことが明かされた。
ここでは会見の内容については割愛する。

短・中距離ミサイルも“廃棄要請”していた・・・

今回の会談で、米朝首脳会談で拉致問題を取り上げることについては、日本側の熱意が事前から米側に伝えられ、トランプ氏も拉致問題を取り上げることを確約した。

一方、シナリオがない、読みきれないのは北朝鮮の出方であり、今回の会談の主眼は、その北朝鮮の出方に対する様々なオプション・シナリオを具体的に検討することだった。

その中で、拉致問題と並ぶ日本側の懸案のひとつは、アメリカ本土に直接的脅威となるICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験停止・廃棄を北朝鮮がアメリカに打診し、一方で、日本を射程に収める短・中距離弾道ミサイルの発射・保有が黙認され、脅威が固定化されてしまうことだった。

今回の首脳会談でこの点が確約されていないのではないかとの指摘があるが、結論から言うと、短・中距離ミサイルの発射停止・廃棄についてもトランプ氏が米朝首脳会談で要請すると約束したことがわかった。

これは、複数の政府関係者が認めている。

「北朝鮮問題についてはシンゾーの言うことを聞く」

これは日米首脳会談を前に、トランプ氏が安倍首相に直接語った言葉だ。

さらに日米首脳会談に同席した政府関係者は、「北朝鮮問題は各論こそが本題だ」と語っている。会談で、非核化に向けて「具体的に綿密に話し合いをした」とする安倍首相の言葉は嘘ではないだろう。

そして「過去の過ちを繰り返してはならない」―この言葉は、安倍首相が共同記者会見でも強調したものだが、政府関係者は、過去の非核化への動きがことごとく失敗し、その結果、北朝鮮の核開発が進んだ歴史を忘れていない。

そうした中で日米両首脳は、米朝首脳会談の前に、北朝鮮の非核化が担保される交渉でなければ、決して圧力を弱めることはないとのメッセージを国際社会に発出した。
トランプ氏が仮に、金正恩氏との間で、非核化(必ずしも核廃棄とは言っていない)と、その対価に関する包括的合意なるものをしたとしても、そのプロセスに厳重に関与、監視していくことが日本の役割と言える。

そのための各論についても具体的に協議したのは確実だろう。

その上で、安倍首相が“指南したシナリオ”をトランプ氏が金正恩氏に正確に伝えられるかは、米朝首脳会談をみなければわからない。

「モテギはタフネゴシエーターだ」

一方、もうひとつの大きなテーマである貿易問題。

首脳会談でトランプ氏は安倍首相に対し、「とにかく対日貿易赤字はなんとかならないか?」と迫った。
TPPに復帰するメリットを根気強く説明した安倍首相。

日本側がもっとも恐れていたのは、農業や自動車分野などで譲歩を迫られる日米二国間のFTA交渉入りだった。

もっとも、日米首脳会談に同席した政府関係者は、「もしトランプ氏にFTAを持ち出されたらキッパリと断る」と強い口調で語っていたが、トランプ氏自身の口からこのFTAという言葉は出なかった。

 日本側にとっては、貿易問題についてトランプ氏が何を言いだすかわからないとの懸念がつきまとっていて、その時に備え布石も打っていた。

安倍首相は、アメリカ抜きのTPP11の取りまとめ役を担った茂木経済再生担当大臣を急遽、日米首脳会談に同席させることを決めた。

国会対応などに追われたため、茂木氏が現地フロリダ入りしたのは、2日目の首脳会談の直前だった。

トランプ氏がTPPへの復帰も視野に入れ始めた中、安倍首相はTPPに復帰するメリットの説明役として適任だと判断したのだった。

日米両国は、2日目の首脳会談で、麻生-ペンスラインとは別の、貿易に関する新たな協議の枠組みを設けることで一致したが、実は、通訳のみを交えた二人きりの首脳会談が行われた初日に、安倍首相がこの新たな枠組みを提案し、トランプ氏はこれを受け入れていた。

人数の増えた2日目の会談で、この新たな枠組みを開始することで正式に合意したが、貿易問題で議論は白熱。

トランプ氏が「モテギはタフネゴシエーターだ」と持ち上げると、茂木氏のカウンターパートとして紹介された、USTR=米通商代表部のライトハイザー代表が檄を飛ばした。

 「日本はEUとは自由貿易協定を結んでいるのに、なぜアメリカとはFTAを結べないんだ!?」

「日本人にはファイターの精神がある」

激しいやり取りもあるなかで、茂木氏は、「TPPだろうがFTAだろうが、お互いにとっていいディールを結べるようやりましょう」とかわした。

成果をあげていないと米側が不満を抱いた「麻生−ペンスライン」による経済対話に代わり、実のある議論が行われるか注視したい。

新たな協議のキックオフは、通常国会が閉幕する頃、早ければ6月にも行われる方向で調整が進む。

政府関係者は、日米首脳会談の成果について、北朝鮮問題については、「ほぼ満額回答だった」と語っている。

今後、南北会談、米朝会談と続くなか、日本外交の真価が問われるのはこれからだ。

拉致問題は、米朝会談で議題になったとしても、いずれ日本が主導して解決、勝ち取らなければならない最大の懸案だと言える。

トランプ氏は、初日の首脳会談後の夕食会で、アメリカで活躍する日本人スポーツ選手の話題をするなかで、日本の大相撲に関心を寄せ、熱心に安倍首相の話に耳を傾けながらこう語ったという。

「日本人にはファイターの精神があるんだ!」

トランプ氏は、土俵の勇ましい力士の姿を思い浮かべながら、この政権で拉致問題を必ず解決すると訴えた安倍首相の姿と重ね合わせていたのかもしれない。

(フジテレビ 政治部官邸キャップ 鹿嶋豪心)

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