「国民生活に大きな影響がある新型コロナ対応、これは一瞬たりとも気を抜くことができない。政権の最重要課題として取り組んできたところです」

岸田首相が就任し100日を迎えた2022年1月11日の朝。首相官邸のエントランスに姿を見せた岸田首相は、オミクロン株の拡大を受け、新たなコロナ対策を自ら発表した。
外国人の新規入国を原則禁止する水際対策を2月末まで継続する方針や、重症化を防ぐための飲み薬に関する今後の供給見通し、オミクロン株に感染した人の入退院に関する基準の検討に加え、ワクチン接種に関する新たな方針も表明した。

「自衛隊による大規模接種会場の再開」
「一般への3回目接種の前倒し」
「12歳未満の子供への接種開始」

岸田首相の周辺が「心して聞かないと消化しきれない分量」と指摘したこれらの新たな対策。
一方で、注目すべきはその「分量」だけではなく、岸田流のメディア対応だ。

会見する岸田首相 11日
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この日もそうだったが、岸田首相は立ちながら記者団と比較的近い距離感の中で、長めの時間を取って説明するスタイルが増えている。岸田首相がこのスタイルを多用する理由の一つに、菅政権の記者会見対応があったという。

菅政権を教訓としたメディア対応

「菅政権は記者会見の回数が多すぎましたよね」(岸田首相周辺)

岸田首相周辺がこう指摘するように、コロナ禍で政権を担った安倍首相と菅首相は、官邸の記者会見場を使用する正式な記者会見を、どのようなタイミングでセットするかに注力してきた。

背景には、首相が、会見ではなくぶら下がりなどの場で、“なし崩し”的にオンレコで発信する場面が増えることで、「想定外の応答」が発生することを、事務方が警戒したことがある。実際、記者とのやり取りを通じて、想定を超えた質疑が交わされ、現場で緊張感が走るケースも多々あった。

官邸の記者会見場で会見する菅前首相

また、首相と官房長官の役割を分担する狙いもあった。官房長官は「内閣のスポークスマン」のため、毎日会見を行う。それに対して、首相は「ここぞ」という時に会見で発信するため、会見の重みが違う。
ただ、菅前首相は、官房長官当時に多用した「全く問題ない」「ご指摘は当たらない」という“そっけない記者対応”から脱却できないまま首相になったため、キャラクターを変えることは叶わなかった。プロンプターなどを用いて目線を上げるなど、“見え方”の工夫を施したものの「言葉足らず・説明不足」との評価が変わることはなかった。待ったなしのコロナ対応の中で、突然首相のバトンを引き受けた不運も重なった。

こうした前政権での対応を教訓に、岸田首相は、正式な会見か否かはそれほど重視せずに、多少生煮えの内容であっても、スピード感を重視して発信する手法を取っている。そして、おかしな点があれば、後日修正する。
日々の記者対応を通じて首相自身のメディアとの“接触面積”が結果的に増えるので、改善点があれば、次の発信の場で、それを活かそうとする。さらに、事前準備や想定問答などで、多大なエネルギーを使う会見場での記者会見よりも、負担を分散できるというメリットもある。何より、演台がないぶら下がりスタイルの方が、堅苦しさがない。

あらゆる場面を利用して発信

政府関係者が「岸田首相の持ち味は、記者のその先にいる国民という視点を忘れないことだ」と話すように、この当たり前のことを自然に行う姿勢が、「なんとなく今までよりいいんじゃないか」という評価にも繋がっている。

岸田首相が重視する「車座対話」 13日

また、首相が重視する国民との「車座対話」など、首相の出張先で質問をぶつける機会が増えたことも大きい。あらゆるチャンネルを利用して首相が自ら発信する姿勢こそ、「岸田流メディア対応」の真骨頂と言える。首相周辺によると「ぶら下がり取材の前は、岸田首相はそれなりに緊張している」とのことだが、岸田首相のメディア対応を見る限りは、肩の力が抜けた雰囲気で出来ている。

課題は、前政権との比較で語られる期間は100日もあれば十分ということだ。今後は政権批判に抑制的になりがちとされる「ハネムーン期間」が終わり、岸田政権そのものが直球で問われることとなる。

(政治部官邸キャップ・鹿嶋豪心)

鹿嶋豪心
鹿嶋豪心

フジテレビ 報道局 政治部 官邸担当キャップ

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