チーム岸田の中核人物は誰?

1月11日に発足100日を迎えた岸田政権。新型コロナ対応では水際対策などで機敏な対応を見せている。この岸田首相のフットワークの軽さを担保しているのが、総理秘書官や官房長官、官房副長官など「チーム岸田」の面々である。

安倍政権で“意思決定の中枢”にいた官僚の一人は、去年暮れ、岸田政権に対し興味深い指摘をしている。

「『岸田政権での今井尚哉(※安倍政権での首席秘書官)は一体誰なんだ』と探ってみたけど、そういう人は今の政権にはいなかった。どの役所も同じことを考えて『誰かいるんじゃないか?』と探ったけど、そういう人はいなかった」

岸田首相の周りには首席秘書官を務める嶋田隆・元経産事務次官のほか、各省のエース級が秘書官として脇を固め、政治家では木原誠二官房副長官が最側近と言われている。この面々を中心に政策の方向性を探り、各省との難しい調整を行う。「聞く力」を重視する岸田首相が、政治的なスタイルを超えて、官僚機構の統治手法として「ボトムアップ型」を実践している証左と言えるだろう。岸田首相は強力な権限を持った特定の人物だけが、権力を掌握する姿を好まない。

岸田政権は1月11日に発足100日を迎えた
岸田政権は1月11日に発足100日を迎えた
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当時の安倍首相が作り上げた「官邸一強」は、長期政権の原動力にもなったが、後の政権には禍根を残した。有能な官僚たちは無駄を嫌う。権力の所在地を探る中でその根幹を見極め、明日の政策を、いわば「官邸の顔色」を伺いながら推し量って動く。それでも嶋田秘書官は、政権発足当初から、安倍政権で筆頭秘書官を務めた今井氏に大所高所からのアドバイスを求めている。内政、外交、コロナ対応など全般についてだ。最長政権のかじ取りや反省点を当事者から直接聞くことは、岸田首相にとっても政権運営の重要な羅針盤になっているようだ。

「ボトムアップ」から「トップダウン」へ変化は

「ボトムアップ型」を実践する岸田首相も、最近は「トップダウン型」の必要性を認識している。1月7日には、オミクロン株の拡大に伴い、沖縄、山口、広島の3県に、岸田政権とはしては初となるまん延防止等重点措置の適用を決定した。今後、さらなる感染拡大が見込まれる中、オミクロン株がデルタ株などと比べて、比較的症状が軽い可能性がある一方で、爆発的な感染力を持っていること、この二つの要素が病床のひっ迫にどう影響するかを、岸田政権は最重要視している。しかし、「楽観を伴う発信は緩みに繋がるし、締め付けすぎれば経済が死ぬ」(政府関係者)との指摘があるように、オミクロン株の感染力の強さと症状がどの程度なのか、そしてそれが経済にもたらす影響を、どのように国民に説明して理解を得るのか、政府内でも考えはまとまっていない。

「ボトムアップ型」から「トップダウン型」に変化は
「ボトムアップ型」から「トップダウン型」に変化は

東京都や大阪府など、都市部を中心にさらなる感染拡大が予想される中、「重点措置を先手先手で決定すべき」という意見が、関係省庁の中から出始めている。ただ、首相官邸内では、東京や大阪などに対象を広げることには「現時点で慎重論が強い」(政府関係者)という。病床のひっ迫状況や重症者の数が理由だが、こうした慎重論は、どこか既視感がある。

岸田首相が真価を問われるのはまさにここからだ。“平時の岸田”というかつての嬉しくない称号を返上するには、本当の危機対応を粛々と行い、それを国民に見せる必要がある。重点措置の適用など、意見が割れる問題にどう対処するかが本当のリーダーシップとも言える。東京都の感染者数は1月12日時点で2000人を超え、翌13日には3000人、さらにその翌日には4000人を超えるなど、感染はこれまでにないスピードで広がっている。これまでコロナ対策に関わってきた政府関係者は「オミクロン株の感染力を見れば、多少やりすぎと言われても『前広に(重点措置や宣言を)やっておくべき』という意見が政府内にあるのは事実」という。続けてこう話す。

「重症化する確率がデルタ株より低くても、それを凌駕する感染者数の増加があれば、早晩医療は確実にひっ迫。計算すれば誰でもわかりますよね」

岸田政権は、どのように、感染力が強い「オミクロン株」と対峙していくのか・・・
岸田政権は、どのように、感染力が強い「オミクロン株」と対峙していくのか・・・

岸田首相の国民に対して丁寧な説明を心がける姿勢は、定着しつつある。今後求められるのは、どのような政策決定を下したとしても、「首相自身が何故そのような政策を選択したのか」を話せる「説明力」と、それによる「国民の納得感」を得ることだ。「共感無き政治」を進めれば、何を訴えても国民に響かなくなる。

国会論戦で攻めの姿勢に転じるか

今後、政権内では、重点措置の拡大・解除の是非、ワクチン接種に関する自治体との調整、さらには国会対応など、意見調整が必要な局面がこれまでより増える。その時に、必要な情報が必要なタイミングで首相に的確に届くシステムを構築できるかも重要なポイントになる。菅首相は首相在任時に、「総理になったら途端に情報が入らなくなった」と周囲に嘆いていた。

1月17日に召集される通常国会で、与野党の本格論戦が始まる。堀内ワクチン担当相など答弁が不安視される閣僚もいる。夏の参院選を控える中、安全運転に徹するのか、それとも自らが掲げた政策を実現するために攻めの姿勢で臨むのか。岸田首相の政権運営へのスタンスが近く明らかになる。

1月17日に招集される通常国会で、与野党の本格論論戦がはじまる
1月17日に招集される通常国会で、与野党の本格論論戦がはじまる

(政治部官邸キャップ・鹿嶋豪心)