食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。 

植野さんが紹介するのは「鶏チャーシュー」。東京・代々木上原の酒場「まるしゑ」を訪れ、しっとりジューシーな人気の一品を紹介。

居酒屋やバルで10年修業を重ねた実力派女性店主と、それを支える元寿司職人の夫、そして女性スタッフたちのいつも笑いが絶えない店づくりにも迫る。

代々木上原駅前にある酒場

植野さんがやってきたのは新宿から小田急線で約10分の代々木上原駅。女性に人気の魅力的なカフェやスイーツ店、おしゃれな雑貨店が点在するキレイな町並みが印象的な街だ。

町とともに歴史を重ねてきた「上原銀座」や「上原仲通り」といった商店街もあり、生活のしやすさでも高い人気を集めている。

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「まるしゑ」があるのは、代々木上原駅の北口を出て徒歩30 秒の場所にある、ビルの地下1階。2014年に開店し、今年で11年目になるという。店内は厨房を囲む広々としたカウンターのほか、テーブル席と個室もあり、全部で45席。

店主は、都内の居酒屋や立ち飲みバルで10年間修業を重ねた、柏木由夏さん。趣味は落語で、トレードマークの手拭いには「林家つる子」の文字が。

そんな柏木さんを元寿司職人である夫の寛之さんや、柏木さんを慕う女性スタッフが手厚くサポートしている。

10種類から選べるおばんざいが人気

「まるしゑ」の看板メニューはおばんざいと溶岩焼き。「おばんざい」とは、京都の家庭で日常的に食べられる総菜のこと。常時10種類をそろえ、好きなものを少しずつ選ぶスタイル。

溶岩焼きは、鹿児島県桜島の溶岩石から作った溶岩プレートで肉や魚、野菜などを焼いたメニューで、余計な脂が落ちて、ヘルシーに仕上がるので使っているそう。

なかでも、皮目をパリッと焼いた塩サバともろみをかけたキャベツをのせた溶岩焼きや、脂身の甘みを感じる和牛サーロインにウニとバターをのせた溶岩焼きが人気。

ほかにも、香りと辛みが心地よく抜ける「ごぼう山椒漬」や、旨みたっぷりの「アボカドの味噌漬け」なども。

お得なのが1200円のセット。ワンドリンクにおばんざい一つ、さらにミニおでんかカキフライを選べ、気軽に楽しめると評判。

一人飲みから家族連れ、デートまで、どんなシーンにも使えるうれしい一軒だ。

野菜を食べながら飲めばヘルシー

お店を始めた経緯について柏木さんは「お酒が好きだったので、居酒屋はやりたかった。それと、お酒を飲んでも健康的な食事を提供したいということがあった」と語る。

自身も酒が大好きな柏木さんは、野菜を食べながら飲めばヘルシーと考え、「おばんざい」を看板に。大学では管理栄養学を学び、栄養士の資格を取得している。その知識を生かした料理は、優しい味わいでヘルシーなのにお酒がどんどん進んでしまう。

開店前の仕込みをしている柏木さんに、料理している時の気持ちを聞くと「楽しい」と即答するが、1番の楽しみは「仕事終わりのビールかな」と笑った。

もともと会社員だったという夫・寛之さんは「この店がオープンした時は普通の会社員でした。妻と知り合ったタイミングで飲食に鞍替えをした」と話し、飲食業の魅力を教えてもらったという。

それから寛之さんは、寿司店で8年間修業し、現在は退職して柏木さんのサポートにまわっている。寛之さんは「働くというよりは飲みに来たい店」と店を評した。

ちなみに、店名の「まるしゑ」の「ゑ(え)」という字には、人々が集まるという意味もあり、“色々な食材と酒で人の縁をつなげたい”という想いを込めたのだという。酒飲みにはたまらない、何度も通いたくなる店だ。

本日のお目当て、まるしゑの「鶏チャーシュー」。 

一口食べた植野さんは「チャーシューにすると余計なものが抜けて、鶏肉のきれいな美味しさが詰まった感じ」と称賛していた。

まるしゑ「鶏チャーシュー」レシピを紹介する。