不老長寿。これは人類の昔からの夢だろう。
日本人の平均寿命は2023年で、男性が81.09歳、女性は87.14歳。90歳まで生存する人の割合は男性26.0%、女性50.1%との見通しだ。
しかし長生きしても全員が最後まで元気に暮らせるわけではなく、2019年の厚生労働省の調査では、男性の健康寿命は72.68歳、女性は75.38歳だ。

こうした中、医学の世界では「アンチエイジング(抗加齢)医学」の研究が進み、加齢や老化を病気と見立て、元気な人生を送る方法の解明が進んでいる。
これまでにわかっているアンチエイジングのポイントを慶応義塾大学医学部生涯教育セミナー副委員長で医師の菅沼安嬉子さんに聞いた。
老化を加速させる「活性酸素」
「人生100年の時代です。血管を100年間持たせるためにはコレステロールを溜めず、老化を進める活性酸素の発生を抑え、骨と筋肉を維持する必要があります」

「活性酸素」は最近よく聞く言葉だが、どんな悪さをするのか。
人間は呼吸によって体内に酸素を取り入れてエネルギーを作り活動している。
酸素は最後は水になって排泄されているが、2~3%は活性酸素になる。

活性酸素は細胞を傷付ける悪者で、老化を進めるだけでなく、心筋梗塞やがん、アルツハイマーなどさまざまな病気に関係していることがわかってきた。
ではどのようにしたら活性酸素の発生を抑えることができるのか。菅沼医師は「食べ過ぎない」ことが最も有効な老化防止策だと話す。
老化防止は「腹8分目」
「老化を遅らせる一番効果のある方法は『カロリー制限』です。カロリーが少ないとエネルギー製造工場である細胞内ミトコンドリアでの活性酸素の発生が少ないので、体内も酸化ストレスに曝されることが少なくなります」
ミトコンドリアは、カロリーを制限すると増えることがわかっている。元気なミトコンドリアが効率良く働くため、活性酸素の発生を抑えて老化を遅らせるというのだ。

要するに高カロリー食を摂っていると体内の活性酸素が増え、老化が早まる。
健康で若さを保つためには食事は「腹8分目」を心掛けることがカギとなる。