3月16日、ついに北陸新幹線が金沢から敦賀まで延伸。名実ともに北陸3県を結ぶ北陸新幹線となった。北陸新幹線開業に合わせて「北陸応援割」も始まっている。観光地のにぎわいはどう変化しているのだろうか。
「観光で応援していきたい」
能登半島地震による観光需要の落ち込みを支援する「北陸応援割」。まずは、加賀地域がその牽引役となる。
1人あたり1泊最大2万円が割り引かれるとあって、初日から利用して訪れた人も多くいたようだ。その恩恵は、金沢の観光地でも見られた。歴史的街並みが残るひがし茶屋街では、普段通りの人出が戻りつつあり、地震前に戻ったかのような人混みとなっていた。
一時は、売り上げが10分の1まで落ち込んだという和菓子店「KazuNakashima」でも、応援割直後からは客は半分以上は増えているという。
「KazuNakashima」スタッフ・金山麻里さん：
ちょっとほっとした気持ち。やっと戻ってきて、うれしい気持ちでいっぱいです
金沢市民の台所・近江町市場では、浜焼きや新鮮な北陸の魚を求め、行列ができていた。新幹線で来たという観光客も目立った。「被災されて大変だったと思う。落ち込まず、観光で元気に応援していきたい」と話す。
市場関係者も「週末にかけて少しずつ戻ってきている感触はある」と応援割の効果を実感している。
大口水産・荒木優専務：
北陸応援割を始めてくれるのは非常にありがたい。一生懸命われわれもついて行けるように頑張れば、能登の復興にも力を貸せるのではないかと思いますよね
地震から2カ月…いまだに断水が続く旅館も
その「北陸応援割」で加賀地区の多くの旅館などに予約が殺到する一方…七尾市の和倉温泉では、能登半島地震で甚大な被害を受け、20以上の旅館は今も観光客を受け入れられないままだ。
FNN取材団・矢崎佑太郎記者：
旅館の厨房です。地震の影響で、10～15cmほど床が沈んでしまっているところがあります。さらに奥には大きな亀裂が入っています
さらに、七尾市内の多くで断水が解消したにもかかわらず、和倉温泉の地域はまだ水が通っていない。
地震から2カ月がたち、3月半ば。この場所で10年以上旅館を営む「はまづる」の高城一博専務は「この調理場を直して使うには、まだもうしばらく時間がかかる」と話す。
旅館は、調理場や客室などが被災。建物の修繕のほかに、ボイラーや、ろ過装置などの機械も修理が必要で、費用は約4億～6億円かかるとみられる。
和倉温泉 はまづる・高城一博専務：
和倉温泉は応援割が除外されているんですけど、それによって全体の観光業が衰退してしまって落ち込むのはあってはならない。元気なところには行っていただいて、巡り巡ってまた和倉温泉にも戻ってきたりするので…
和倉温泉は、断水が続き観光客を迎え入れることができないため、応援割りの枠組みに参加していない。しかし、高城さんはこのキャンペーンを通して、全国の人が県内に足を運ぶきっかけになればと考えている。
和倉温泉 はまづる・高城一博専務：
今は復旧・復興の方がこの地域は急がれますので、旅行割というのはその随分後になるとは思うんですけど、それに期待して頑張りたいと思います
客足に影響？和倉温泉直通の電車が終了
ただ、和倉温泉にとって心配なのが、北陸新幹線の敦賀開業で、大阪から直通の特急サンダーバードが終了したことだ。
和倉温泉直通も1日1往復あったものがなくなり、大阪方面からの客は、敦賀と金沢で2回乗り換えが必要となり、関西からの客足に影響が及ぶと懸念されている。
電車がなくなり、客数自体が減るのは「致し方ない」と高城さんは言う。それでも震災をきっかけに、これまでとは違う新しい観光の形を作っていきたいと前を向く。
和倉温泉 はまづる・高城一博専務：
新しいお客さんを取り込んで、また和倉温泉が素晴らしい場所になればということで、みんなで一丸となって頑張りますので、そこはなんとかカバーしていきたいなと思っています
全国で、被災・震災に遭い、いろんなことで商売が立ち行かなかったり苦労しているところもたくさんある。高城さんは「どこを見ても前向きに頑張っている。私たちだけのことだけではなく、全体的にみんなで頑張っていけたら」と望む。
「北陸応援割」は県外の人の力を借りて。そして、和倉温泉のような過酷な状況が続く場所は県の力も借りながら…復旧・復興へ一歩一歩着実に進んでいくことを願う。
（石川テレビ）
