“日本一短い手紙”として知られる「一筆啓上賞」の入賞作品が22日、福井・坂井市で発表された。今年のテーマは「失敗・成功」。寄せられた約3万5000点のうち157点が入賞。大賞5作品、秀作10作品をすべて掲載する。
最大40文字で伝える想い
「一筆啓上賞」は、徳川家康の家臣・本多作左衛門重次が陣中から妻に宛てて送った短い手紙「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」にちなみ、福井県坂井市が1993年に創設した。「お仙」とは、後の越前丸岡城主の本多成重(幼名仙千代)のことで、天守が現存する丸岡城には、この手紙文を刻んだ碑が立っている。
一筆啓上賞は、テーマにあわせて思いを伝える最大40文字の日本一短い手紙。33回目を迎得る今年は、「失敗・成功」をテーマにした約3万5000点が国内外から寄せられた。
1月22日に坂井市内で入賞者発表会が開かれ、シンガーソングライターの小室等さんやタレントのパックンら6人の選考委員が見守る中、地元・丸岡南中学校の2年生が入賞作品を朗読した。
大賞<石川県金沢市・山口結衣さん(8)の作品>
天国のママへ
漢字テスト「手紙」を「毛紙」と書いた。ばあばが温かい手紙だねと笑ってくれた。
選考委員の1人で小説家の宮下奈都さんは「選考会で議論に上がった瞬間に、みんなが“これ大賞なんじゃない?”って、もう1番最初に決まった作品でした」と述べた。
同じく大賞には、地元・坂井市の小学5年生の作品も選ばれた。
大賞<福井県坂井市・上條美和さん(10)の作品>
前田先生へ
失敗×の角度を変えると成功+になる。ずっとわすれません
選考委員の俳人・夏井いつきさんは「棒が2つ交差しているだけなんだけど、こういう言い方をすると、ちゃんと子供たちに人生の失敗と成功を端的に短い言葉で伝えられる。これはなかなか難しい。10歳の女の子がずっと忘れないと、人生の心の支えになるような形でこの言葉を胸にとどめているなんて素晴らしい先生だろうと思い、私は強くこれを大賞に推したかった」と評した。
また、宮下さんはその後の取材の中で「前田先生というのは、実は保育園の先生だったということが分かった」といい「小学5年生になるまで忘れていないというところが、より響いた」という。
この他、3作品が対象に選ばれた。

大賞<和歌山県有田市・秦凛歩さん(7)の作品>
おとうとへ
かけっこ一とうしょうになったね でもね「ようい」で走りだすのはだめなんだよ
大賞<愛知県尾張旭市・岡桃子さん(34)の作品>
6歳の息子へ
車に傷を付けた私に「ママすごいよ!流れ星みたい」って。傷、そのままにしておくね。
大賞<千葉県柏市・渡会克男さん(75)の作品>
結婚をためらう息子へ
失敗とか成功とか、ロケットの打ち上げとは違うんだよ、結婚は。
秀作に10作品
選考委員らは、身近な親や先生への感謝が伝わる作品が多く、失敗を成功につなげる勇気が感じられたと講評した。

秀作<福井県坂井市・幸山桜己さん(6)の作品>
ままへ
せいこうしたら、ちゅうしてね!しっぱいしてもぎゅうしてね!
秀作<佐賀県伊万里市・平松琴都さん(12)の作品>
いとこへ
やっと取ったって言ってカブトムシとねてる君。本当はゴキブリってのは黙っとく。
秀作<鹿児島県大島郡・實利應さん(7)の作品>
とうさんへ
あせくさいってママとわらうけどぼくはすきだよそのにおい。がんばったあかしだもん。
秀作<石川県金沢市・中嶋未紗都さん(34)の作品>
夫になるキミへ
初告白は失敗。初デートも失敗。初プロポーズも失敗だと可哀想よね。成功させたげる。
秀作<福井県福井市・山田みゆさん(18)の作品>
パパへ
合格発表当日。いつもそっけないパパからのグータッチ。あふれた涙。受かったんだな。
秀作<福井県福井市・芳賀明衣さん(16)の作品>
男運が無いお母さんへ
遺伝してるよ。
秀作<愛知県みよし市・松崎貴子さん(53)の作品>
台湾の六人のクラスメイトへ
手違いで持参した空の弁当箱に皆が詰めてくれて一つの弁当が完成した事は忘れないよ。
秀作<カナダアルバータ州エドモント市・津川恵茉さんの作品>
にほんにすむおばあちゃんへ
みずにうけるようになったよ らいねんこそはおよいであそびにいくね
秀作<福井県坂井市・吉川鈴菜さん(8)の作品>
おかあさんへ
しっぱいした時の合い言葉「だいじょうぶだいじょうぶ。」たまにだいじょばないんだよ。
秀作<大阪府富田林市・田中康之さん(64)の作品>
お父ちゃんへ
息を引き取る前の言葉は「よかったわ」。ぼくもお父ちゃんの子どもでよかったで。
顕賞式は5月に行われる。
