1月19日、衆議院解散総選挙に向けた自らの決意を国民に伝えた、高市早苗首相。

高市早苗首相:
なぜ今なのか、高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか。今、主権者たる国民の皆さまに決めていただく。私自身も、内閣総理大臣としての進退をかけます。高市早苗に国家経営を託していただけるのか。国民の皆さまに直接ご判断をいただきたい。
私は今回の選挙、自分たちで未来をつくる選挙と名付けました。

解散を決意するに至った理由について「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか」を問うためだと説明しました。

この会見を受けて、連立のパートナーである日本維新の会からは「心強い解散表明だった」という意見が出る一方で、野党からは厳しい声が挙がりました。

立憲民主党 野田佳彦代表:
連立の意義、維新と組んだこと。そして、合意したことその信を問いたいと言うならば、連立したのは去年のことでありますし。積極財政について信を問いたいというならば、予算編成をしたのは去年のことでありますので…。

公明党 斉藤鉄夫代表:
「政治とカネ」の問題について、今回一切言及がなかったというのは本当におかしいのではないかと思いました。政治への信頼をどう回復させるかということを、まず衆議院解散されるにあたっておっしゃるべきだったのではないかと。
専門家は会見をどう見たか?「消費税減税を本当にやるかどうか…」
高市首相の会見を、政治、外交・安全保障、経済の専門家はどのように見たのでしょうか。『サン!シャイン』はそれぞれの専門家に話を聞きました。

まず、ジャーナリストの岩田明子氏が注目したのは、「内閣総理大臣としての進退をかける」という言葉。

ジャーナリスト 岩田明子氏:
首相の覚悟、高市首相の覚悟が伝わってくる会見だったと思います。
冒頭で、私がいいのか、私を選ぶのか、野田さんを選ぶのか、斉藤さんを選ぶのか。総理大臣に誰を選ぶのかというのを、この間接民主主義制度の中で、誰を選ぶのかを決めてほしいということを言って、自身の進退についてまで言及をしたというところが、非常にインパクトがありました。

さらに会見の中で、公明党の支持者に対して26年間にわたる支援に感謝を述べた後、「わずか半年前の参議院選挙で、共に戦った相手である立憲民主党に所属しておられた方々を、かつての友党が支援する少し寂しい気持ちもあるが、これが現実」と触れていたことについても…。

岩田明子氏:
あしたから「立憲民主党を支持しなさい」と言われた時に、一生懸命26年間これで戦ってきて、急に変わると言われても、ちゅうちょする人もいるでしょうし、やっぱり創価学会の学会の威力が発揮できる時っていうのは、ある程度の時間があってですね。入念に準備ができている時ってのは、最高の力を発揮できるわけですね。今回その時間も足りない。そうした中で、本当に言われた通りにするの?と。ここが非常に戦略的な一言だったかなと注目しました。

経済の専門家である木内登英氏は、「飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としない、財源やスケジュールのあり方など、実現に向けた検討を加速する」という言葉に注目しました。

野村総研エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏:
私の計算だと2年間の食料品の税率ゼロだと、それを実施した時には1年間で0.22~0.23%ぐらいGDPの成長率は押し上げられるんですが、2年目以降は効果もほぼ出てこなくなるので。
ちょっと効果は小さい一方で、財政関係を著しく悪くするだとか、円安・債券安の流れを作ってしまうとかですね。結構やっぱりマイナス面、弊害が大きいので、必ずしも必要な政策とは言えないんじゃないかなというふうに思っています。
2年間の実施では、効果よりも弊害の方が大きい可能性があると話す木内氏。ではなぜ高市首相は今回、わざわざ会見で「消費税減税」を掲げたのでしょうか。

木内登英氏:
選挙戦略としては、野党がまた総じて「消費税減税」を掲げていますし、新党も食料品の税率ゼロを掲げたので、自民党が出さないと選挙でやや不利になるということもあり、掲げたっていうことだと思いますけども。本当にやるかどうか、ちょっと分かんないなっていうふうには思いますね。

物価高対策の他に、有権者の関心が高かったのは、緊迫する世界情勢にどう立ち向かうのかという問題。
外交・安全保障の専門家である峯村健司氏が注目したのは、「国家情報局の設置、対日外国投資委員会の設置、インテリジェンス・スパイ防止関連法の制定を行う」という言葉。

キヤノングローバル戦略研究所上席研究員 峯村健司氏:
一番力が入っているところで言うと、情報分析能力を高めるというようにおっしゃっていましたよね。要は情報力がなければ、外交も防衛も経済も技術もないんだと。これってなかなか、これまで歴代の首相はここまで言い切った人はいない。
今回、ある意味解散を打って、強い戦力基盤を固める、強い政府になって、トランプ大統領とも習近平国家主席ともやり合うという意味だったなというふうに解釈しています。
勝敗ラインは「与党過半数」与野党の反応は
今回の選挙での勝敗ラインとして、「与党で過半数を目指す」と掲げた高市首相。
なぜ「自民党で」ではなく「与党で」と言うにとどまっているのでしょうか、その理由をフジテレビ解説委員長の松山俊行氏はこう推察します。

フジテレビ 松山俊行解説委員長:
本音のところでは単独過半数を目指すというのがあるのだと思いますが、今回の選挙の大義として高市氏が挙げているのが、自民と維新の連立政権になったと、それによって前回の衆院選には盛り込まれていなかった、政策の大転換が図られると。
政策合意書に基づいて、新しい政策をやっていくんだということを言うと、維新についての気遣いというのが必要になってくる。自民党だけで単独過半数を目指すというと、維新は要らないのかという話になるので、自民と維新であくまで与党で過半数を目指すという“建前論”としてこれを目標として掲げていると。

谷原章介キャスター:
覚悟や建前は分かりますし、維新と連立を受けた上では選挙は通過していませんから、これは信を得ていないという論理は分からないでもないのですが、今の時点でもう(衆院は)過半数持っていて、じゃあどこがラインだと言われたときに、与党で過半数と言われても今ひとつピンとこなかったりだとか。支持率も75%前後あるわけじゃないですか、ここまで高い支持率の中で、国民の信はある程度得られるとも見えるのですが。
松山俊行解説委員長:
そうですね、目標設定としては相当低めだという印象は我々も受けています。
与党の過半数というのは、それは目標として言えるのか?という感じはあるのですが、ただこれから先、約半年の国会が開かれるわけで、それを前に数々の政策の転換というのを打ち出して、途中で失速する可能性を考えると、一度ここで体制を立て直しておきたいと。国民の信を問うて、それが成功すれば次の国会をスムーズに進められるということもあって、ここで解散するのだと思います。
ただ、なぜ予算の年度内成立ができないこのタイミングなのに解散するのかという、そこについての説明は若干不十分だったかなという気がします。

――今回の会見を受けて、自民党内の反応は?
松山俊行解説委員長:
自民党内では、今回の会見は数々の政策について、こういう新しい政策をやっていくので力をくださいと強く訴える、感情的に訴える部分がありましたけども、かなり明確におっしゃったので、党内の評価はおしなべて高いです。
ただ、例えば公明党の関係者、結構公明党に対するノスタルジーみたいな言い方をしていましたけど、「私たちの同志はもう公明党の支援は得られない、半年前まで一緒に立憲民主党と闘ったのに」みたいな言い方をしていましたけども、あの表現を聞いて逆に公明党の関係者などは、「ケンカを売られた気分だ」とある幹部がおっしゃっていまして、やはり公明党が抜けたことへの恨みつらみみたいなニュアンスを受け取っているようです。それで、自民党との距離感を非常に感じると。これだけ公明党についての話をしているのに、公明党がなぜ抜けたのか、政治とカネの問題が自民党がしっかりしないから抜けたのに、政治とカネについての言及が全くないじゃないかということも言っているので、その辺りは与野党で受け止めが全然違っている。

谷原章介キャスター:
もう一個印象的だったフレーズが「国民不在」「選挙のための政治」「永田町の論理」という言葉を、2度くらい聞いた覚えがあるのですが、今回の解散ってまさにそれにも見えなくもないなと。
松山俊行解説委員長:
ただ、国民不在や永田町の論理というのを相手側、野党側に対して高市さんは使っている。

谷原章介キャスター:
でもご自身の「解散」という選択が、そうとも受け取れるのではないかと思うのですが。
松山俊行解説委員長:
まさに野党のほうは、今回の高市さんの解散の判断は、完全に“個利個略”だと。自分のための解散総選挙と受け止めていますので、そこの認識は完全に与野党で逆になっていますよね。
果たして誰のための選挙なのか、掲げた政策の実現は?2月8日に国民の審判が下ります。
(「サン!シャイン」 1月20日放送)
