私たちが美味しくいただいている「魚」は、どのように私たちの食卓や飲食店に届けられているのか。そこには早朝に行われる「競り」を中心にした独特の生活リズムで仕事にあたっている水産物仲卸業者の存在がある。宮崎市中央卸売市場の初競りの日、若き仲卸の一日に密着し、市場の現状と役割を追った。
午前3時の市場に入荷する全国の魚介類
年明け最初の営業日となる1月5日、午前3時の宮崎市中央卸売市場水産物部には、県内各地や全国から多種多様な魚介類が次々と入荷した。活気に満ちた競り場には水産物仲卸業者の姿があった。

この日は潮の流れや月夜の影響を受け、入荷量は約50種20トンと前年の約半分に留まった。

宮崎魚市場の石井正修さんは、状況について「潮が悪く全体的な釣り物など少ない。定置網も潮が悪くて入らなかったみたいで少なめ。今年初めなので、盛り上がってくれればいい」と話す。
公式LINEで飲食店へ最新情報を配信
所狭しと魚介類が並ぶ競り場で、熱心にスマートフォンを操作する男性がいた。

水産物仲卸「鳥原鮮魚店」の3代目、鳥原大樹さん(38)だ。仲卸は卸売市場で商品を仕入れ、小売業者や飲食店に販売する。
鳥原さんは競り場の状況やおすすめの魚を写真や動画で撮影し、毎朝、店の公式LINEを通じて取引先の飲食店へ情報を流している。
鳥原大樹さん:
僕たちが注文の魚介類を揃えないと店での販売が出来ないし、その先の消費者も食べられないので、なるべく注文の品物は揃えられるように、そのメニューに合う価格帯で仕入れができるように気をつけている。でもなかなかうまくはいかない。競り場に立って15年になるが、まだまだ競り場じゃペーペー、まだまだ下っ端みたいな感じ。まだまだ買えない日もあるし、難しい。

鳥原さんは以前、「東海大学海洋科学博物館」で海洋生物の飼育や水槽管理を行っていた。23歳の時に家業の鳥原鮮魚店を継ぐため宮崎に帰郷。

仲買人歴40年の大ベテランの父・肇さんとともに、15年間市場に通い続けている。
父 鳥原肇さん:
(仲買人としての大樹さんは)もう十分やっていける。苦労もしていると思うが、顧客の対応も魚の目利きもしっかりできているので、心配なく安心して任せられる。
初競りの攻防
午前6時30分、威勢の良い掛け声とともに初競りが始まった。

鳥原さんは序盤こそ順調に競り落としたが、中盤からは競り負ける場面も目立った。しかし、終盤には高値でも果敢に攻め、午前7時に競りが終了する頃には、注文の魚を買い揃えることができた。

鳥原大樹さん:
競りは、数秒でも声を出すのが遅れたら落とせない。どんなに高値をつけたとしても、ちょっとでも迷ったらダメ。注文が5本しかなくても、思い切って10本とか15本とかで買うような勢いがないと落ちない。
一刻を争う仕分け作業と取引先への配達
競り終了後も仲卸の仕事は続く。

仕入れた魚介類を店へ運び、注文ごとに素早く仕分けていく。鳥原鮮魚店では1日に平均30件、多い日には50〜60件もの注文が入る。
午前10時には、取引先である飲食店等への配達を開始した。

配達先の一つであるイタリア料理店の店主は、翌週の予約に向けた仕入れの相談を鳥原さんに持ちかける。こうした対面でのコミュニケーションも、仲卸の大切な業務だ。
Pappacarbone 三角光作さん:
店の料理に合う魚を選んで探してくれるし、納品時にはコミュニケーションをとって要望も聞いてくれるので、とても信頼している。
仲卸の厳しさとやりがい
鳥原さんは、仲卸の仕事をしていると、独特の生活リズムになるという。

鳥原大樹さん:
夜12時に出社して、市場で魚介類の仕入れを行い、配達後に家に帰るのは夕方6時。きつい時もあるけど、いい魚を買えて、納品した先のお客さんが「今日のめっちゃよかったね」と喜んでくれたり、「魚が美味しかったから次の日も食べに来てくれた」とか、そういう話を聞くと、やってて良かったと思う。
水産物の水揚げの減少や、漁師の高齢化、水産物を扱う店舗の減少が続くが、鳥原さんは「だからこそ一連の流れのスタートの地点にいるというのは仲卸の良さでもあり、責任を感じるところ」と話す。
(テレビ宮崎)
