高校生たちの発想を政策に生かそうと福岡・古賀市でユニークな取り組みが始まっている。この取り組み、本気度が違うようだ。
メンター制度をリバースさせたものとは
2025年9月。古賀市役所の会議室にいた緊張した様子の高校生たちの前に現れたのは、田辺一城市長(45)。

「ただいまより、令和7年度、高校生“リバースメンター”の提言会を始めます」と司会者が促す。

『リバースメンター』という聞き慣れない言葉。先輩が若手をサポートする『メンター』制度を『リバース』、つまり逆転させたもの。地元の高校生たちが市長の相談役として考えた自らの政策を提言するという、全国的にも珍しい取り組みなのだ。

田辺一城市長は「大人は、経験や知見、毎年、毎日、どんどん増やしていると思うんですけれども、子どもだからこそ持っている、そうした感性に基づいて、何か社会課題を解決するための提案を市長にして欲しい」と話す。

古賀市が2025年度から導入したこの取り組み。書類選考と面接を経て選ばれた高校生たちが提言する政策は…
次々に高校生が古賀市に提言
提言①:古賀駅にエスカレーターを!
「古賀駅ではエレベーターしか設置されていません。当時、足を骨折していた私は、階段を使うことができず、もしエレベーターが故障や点検などで止まってしまったら、私はどうすればいいのかと不安に思うことがありました。同じクラスの高校生27名にアンケートを取ったところ27名中、26名が必要と答えてくれました」

提言②:古賀駅周辺に学生向け店舗の誘致を!
「古賀駅周辺を調べた結果、飲食店が約20店舗、カラオケ店は約5店舗でしたが、飲食店の殆どは居酒屋など学生が気軽に行けない場所で、カラオケ店の殆どはカラオケ喫茶でした。放課後、友だちと『遊ぼう』ってなった時に、古賀駅周辺には何もないから、どうしても隣の福津市に行って遊ぶ」

提言③:漢字検定を無料に!
「クラスで漢字検定に興味がある人が6割、受けたことがある人が2割、では、なぜ受けないかというと『受験料が高い』が100%でした。漢字検定の受験料補助を実施している自治体が、全国で250自治体あります。サブスクリプションのような方式で、古賀市から直接、漢字検定に。例えば1年間、何百万円を払う」

専門家や市の職員らとのワークショップを重ねて作り上げた政策をその必要性や具体策も織り交ぜて発表された。
子どもたちの案を、大人が絶賛して終わり…。だとよくある話だが、古賀市の取り組みは、そうではない。「これを本当に政策として実現をしていくという責務、責任が私たちにはある」(田辺一城・市長)。提言を提言で終わらせず、実現させることを前提としている。

2024年の第1回の高校生“リバースメンター”の提言会では「自転車と歩行者の事故を減らしたい」という提言に対し、提案者の高校の通学路に自転車専用レーンを整備すべく、新年度の予算化に向け動きが進んでいる。

また「ヤングケアラーを助けたい」という提言には、相談窓口を伝えるショート動画を制作し、市のSNSで公開している。

貧困家庭の習い事支援と送迎の支援策
今回、市長をうならせた提言が、福工大付属城東高校1年生の松尾尚磨くんの提言だった。松尾くんは、学校での授業を通じて、政治に関心を持ち、家族からの勧めでもあってリバースメンターに応募したという。
松尾くんは「全国で22%の子どもたちが、習い事をできていない状況にあります。一番、大きいのが経済的負担です。まず1つ目は、貧困家庭の習い事へ、金銭的支援を考えています」と提言。子ども1人当たり、月1万円の支援を行っている福岡市を例に挙げ、貧困家庭を対象に、クーポンを使った習い事の金銭的支援を訴えた。

さらに2つ目として松尾くんは「小学生の時、習い事で剣道とサッカーをしたいと思っていたんですけど、親が仕事の関係で送り迎えができないと。共働き世帯が増えている関係で時間が取れないから、習い事ができないという子どもたちが多くいます」と続けた。幼い頃の苦い経験から、コミュニティーバスなどと連携した送迎の支援策も提言したのだ。

田辺市長は「いい。2つ目いいね。社会が送迎を支えなきゃいけないんだと。これ、意外と出てこないですよ。子どもが家庭の影響を受けない、そういった社会を作るための政策のひとつとして、今回、提案頂いたものは、重要だなと感じました」と応えた。
必要経費8000万円以上 “習い事支援”に暗雲
提言会から3カ月が経過した2025年12月。古賀市役所を再び訪れてみると、習い事の支援を訴えた松尾尚磨くん(福工大付属城東高校)と担当職員との協議が行われていた。
▼担当職員①「金銭的支援について就学支援を受けている人たちとかを対象にしたらいいのではないかと。そしたら大体8000万円以上のお金がかかってしまうとなってくるんですよね」

▼松尾くん「厳しいのであれば、送り迎えの方を重点的に行った方がいいのかな…」

▼担当職員①「夜8時ぐらいになって少し遅くなったりしたら、お父さんたちが帰ってきて、送り迎えができるとか、そういった状況とかあったりしますかね?」

▼松尾くん「ありますね。自分も英会話行ってたんですけど、早い時間帯が送り迎え厳しかったので」

▼担当職員②「『ノルート』(地域バスの愛称)エリアだとまぁ8時までバスが運行していて、ミーティングポイントっていって、バス停が細かく設定されているので、その辺だとやりやすくはあるかもしれないですね」

まずは、習い事の送迎支援の実現を目指し、地域バスの活用や定期券の支援などエリアを絞った実証実験を行っていく方向で話が進む。

松尾尚磨くんは「16年間、住んでいる街に対して自分の意見を通して、どんどん街に影響を与えていけるのかなと思ったら結構ワクワクしてきます。自分の周りの友だちとかからも意見を聞いていって、それを街にどんどん実現させていけたらいいなと思っています」と意欲を見せた。
(テレビ西日本)
