1979年に鹿児島県大崎町で起きた大崎事件で、殺人罪などで服役した原口アヤ子さん(98)の再審を求める5度目の請求が2026年1月8日、鹿児島地裁に申し立てられた。事件から46年余り、原口さんは一貫して無実を訴え続けている。
「事件は殺人事件ではなかった」弁護団の主張
大崎町の牛小屋の堆肥の中から中村邦夫さん(当時42)が遺体で発見された大崎事件。中村さんの義姉・原口アヤ子さんら4人が殺人や死体遺棄の罪で服役した。一貫して無実を訴える原口さん。再審請求ではこれまで3回開始決定が出されたがその後の上級審でいずれも覆されてきた。
弁護団が今回の再審請求で主張するのは、被害者の中村さんが「殺害されたのではなく事故死」という点だ。確定判決では、中村さんが自転車で側溝に落ちる事故を起こした後、近くの住民に発見され、知人男性2人が軽トラックで自宅に運んだ。その後、原口さんが日頃の恨みから親族と共謀し、中村さんの首を絞めて殺害したとされている。
これに対し弁護団は、中村さんが自転車事故ですでに首に致命傷を負っており、知人男性2人に救護された直後に死亡していたと主張。つまり、殺人事件ではなかったとしている。

新たな医学的証拠を提示
弁護団が8日に提出した5つの新証拠のうち、中心となるのが3人の医師による鑑定だ。いずれも解剖時の写真に見られる「首にできた大きな血の塊」に着目したものだという。
しかし第4次再審請求において、写真をもとにした医師の鑑定結果は「遺体を直接検分したものではなく、限定的な情報から推論を重ねたもので証明力に限界がある」と判断された。今回の新証拠は、この判断をどのように乗り越えるのか。

「確かにこれまでは写真の色調、色が見方によってどうとでも取れるとか、写っていないものを推測するような鑑定意見が批判の原因になっていましたが、今回は当初の解剖写真からはっきり写っている首の前の大きな血の塊、これ自体をもとにして確実にわかる所見、そしてこの鑑定人が実際に経験したり、確実に文献に書かれていることをもとに結論が出されているという意味で、証明力は格段にアップしていると思います」と大崎事件弁護団の鴨志田祐美共同代表は説明する。
4度の再審請求、開いては閉ざされた扉
これまでの再審請求の経緯を振り返ると、第1次の鹿児島地裁、第3次の地裁、高裁では再審開始の決定が出された。しかし、第3次再審では最高裁がこれを覆すという異例の経過をたどり、続く第4次もこの判断を踏襲している。
注目すべきは、第4次再審請求における最高裁の判断だ。5人の最高裁判事のうち、宇賀克也裁判官が再審を認めるべきという意見を示した。宇賀裁判官は、医師の持つ「高度な知見」や「医学の発展により限られた情報から驚くほど多くの知見が得られるようになったこと」などを挙げている。
「宇賀裁判官はこの決定を出した数カ月後に定年で退官されています。まさにその最後に、これから鹿児島地裁で新たにこの事件を審理するであろう若い裁判官たちに、今の進歩した科学の知見を取り入れた現代の刑事裁判の水準で、改めてこの古い確定判決を見直してほしいというメッセージを込めたのではないかと思います」と鴨志田共同代表は話す。
「つくられた冤罪」98歳、最後の闘い
鹿児島地裁前には全国から集まった支援者や弁護団、それを取り囲む報道陣が詰めかけた。弁護団は「これが最後」と再審開始への決意を口にした。
会見で鴨志田共同代表は「つくられた冤罪によって、46年間一度も自白せずに無実を訴えていたアヤ子さんが98歳になるまで闘い続けなければならない現実がある。今回の第5次で終わらせなければならない。裁判所はこの間違った過去の有罪判決をきちんと見てほしい」と訴えた。

再審法改正の問題も重要な局面を迎えていると指摘。「再審開始決定に対する検察官の不服申し立てが廃止されるのかされないのか、これはアヤ子さんの生きているうちの再審無罪が可能かどうかに直結する問題だと思います。両方の問題を全力で取り組んでいくというのが私たちの今の決意です」と語った。
再審の扉は開かれるのか。今後の展開が注目される。
(動画で見る▶「これが最後」弁護団が5度目の再審請求 大崎事件で“事故死”新鑑定とは 鴨志田共同代表が生出演)
