1979年に鹿児島県大崎町で発生した通称「大崎事件」について、殺人などの罪で服役した原口アヤ子さんの弁護団が5回目となる再審請求を2026年1月に行う方針を明らかにした。現在98歳の原口さんは一貫して無実を訴え続けている。
「無実が確定するまで頑張る」
大崎事件第5次再審請求弁護団の八尋光秀団長は2025年10月18日、鹿児島市で開かれた記者会見でこう決意を語った。
「有罪に仕立て上げて『それでよし』と、そういう社会のままでいいのか」
大崎事件は1979年、鹿児島県大崎町の牛小屋の堆肥の中から中村邦夫さんが遺体で発見された事件である。殺人罪などで服役した中村さんの義理の姉にあたる原口アヤ子さんは、これまで4度にわたり再審を求めてきたが、いずれも最終的には認められていない。

「無実が確定するまで健康である限り、頑張って無実だと疑いを晴らしたいと思っている」と原口さんは述べている。
最高裁裁判官の「反対意見」を足がかりに
弁護団は今回の再審請求で、前回の4回目の請求時に最高裁で初めて「再審を開始すべき」と判断した宇賀克也裁判官の意見を重要な足がかりとしている。
大崎事件第5次再審請求弁護団の鴨志田祐美共同代表は、「宇賀裁判官の反対意見というのは完成した再審開始決定と言ってもいい。殺人・死体遺棄事件はありえないということで、自白や目撃供述の信用性も落とすもの」と説明した。
宇賀裁判官は、「中村さんが事件前に起こした自転車での転落事故により既に死亡していた」とする弁護側の法医学鑑定について「高い信用性と有する」と評価。弁護団はこの鑑定を補強する新たな証拠を提出する予定だ。
一度は開かれた再審の扉
これまでの再審請求の経緯を振り返ると、1回目の再審請求では鹿児島地裁が、3回目の再審請求では地裁と高裁が再審開始を認めた。しかし、その後の上級審判断でいずれも覆され、再審の扉は閉ざされたままとなっている。

鴨志田共同代表は新たな再審請求について「まずは元々の証拠をもう一度吟味し直して、そこに複数の新証拠を加えて、裁判所に『間違いなく有罪判決に合理的疑いが生じている』と心証を抱かせ再審の扉を開く」と述べ、第5次再審請求を「2026年の1月上旬」に行う方針を明らかにした。

98歳原口さんの無罪判決への願い
弁護団は10月11日、施設に入所している原口さんを訪問し激励したという。「無罪判決の時にはアヤ子さんも一緒に裁判所に行くんだからね。元気でいてください」と伝えたとのことだ。
現在98歳となった原口さんにとって、一刻も早い審理の開始が求められている。長年にわたり無実を訴え続けてきた原口さんの願いが叶うのか、5回目の再審請求の行方に注目が集まる。
(動画で見る:「大崎事件 2026年1月に第5次再審請求へ 弁護団『再審の扉を開く』」)