2025年のプロ野球、セ・リーグは阪神が両リーグ史上最速で優勝し、パ・リーグはソフトバンクが2年連続でリーグ制覇した。日本シリーズでは、第5戦の延長11回までもつれた熱戦を制したソフトバンクが5年ぶり12度目の日本一に輝いた。フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2025年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2026年シーズンを展望する。

連覇、そして日本一を目指すべく、2024年のオフに田中将大・甲斐拓也・マルティネスの大型補強をしたが、昨季3位に終わった巨人。投手は後ろが盤石になるも、先発が手薄になり、打線は主砲・岡本和真の長期離脱を経験した。

しかし、言い換えれば多くの選手にチャンスが与えられたシーズンでもあった。そしてこのオフ、岡本がMLB挑戦を表明。「岡本のいない巨人」を1年早く経験したとも言える昨季、チームは何を得たのか。そして、今季チームに必要なものとは。

“高速フォーク”山﨑伊織の快進撃!チーム課題の「先発」

昨季、開幕から1カ月経っても無失点を貫いていたのが、山﨑伊織(27)だ。

4月30日の広島戦で開幕から35イニング連続無失点のセ・リーグ新記録。5月7日の阪神戦で記録が途切れるも、山﨑の活躍はチームのスタートダッシュに大きく貢献した。

快進撃のきっかけの1つは内海コーチからの「フォークの握りを浅く」というアドバイス。これによりフォークの平均球速が2024年シーズンに比べ4キロほど上がり、打者を翻弄。大きな武器となった“高速フォーク”で三振を重ねた。

「今年は例年より走っている」「(体力の)基準を上げることで、後半戦に対応していけるように」と語っていた山崎。

基礎体力の向上。山﨑は自主トレの時から1年間戦い続けることを目標にしていた。

これは後半戦で粘れなかった2024年シーズンの反省を踏まえた上での決意だった。

振り返ると、昨季の巨人は先発ローテーションの固定に苦しんだ。

エース菅野智之がMLB挑戦で抜け、次期エース候補で開幕投手を任された戸郷翔征(25)は8勝止まりとなった。安定感抜群のグリフィン(30)はコンディション不良に苦しみ、復活が期待された田中将大(37)も日米通算200勝こそ達成したが、昨季3勝に終わった。井上温大(24)や赤星優志(26)などのローテーション候補も奮闘を見せるも定着には至らず。

結果的に山﨑は『シーズンを通して先発ローテーションを守った唯一の選手』となった。阿部監督もすでに「(今季)開幕で投げてほしいという希望は持っている」と話すなど、指揮官からの信頼も得ている。今季も8月、9月に防御率が4点台と悪化するも、自主トレからの取り組みが実を結び、1年間しっかり投げきった。

【山﨑伊織 25試合 11勝4敗 防御率2.07 131奪三振】

昨季11勝をあげた山崎伊織
昨季11勝をあげた山崎伊織
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一方、チームとしての課題は明確。先発投手の整備は必須となってくる。

実際、ドラフトでは1位の竹丸和幸(鷺宮製作所)を始め、3位まで即戦力の投手を指名。助っ人や現役ドラフトでも積極的に投手の補強に動いている。

それでも、先発ローテーションの枠に対しこれだけのチャンスがあった今季、その位置を確かなものにできたのが山﨑だけというのは寂しく感じる。今季は奮起を期待したい。

岡本和真の離脱 4番を欠く中での戦い

打っては3度の本塁打王、6年連続30本塁打。守ってはファーストとサードで計3度のゴールデングラブ賞を受賞し、外野の守備もこなす。常に勝利が求められる読売巨人軍で結果を残し続けた主砲・岡本和真(29)。

開幕、良いスタートを切っていた。後に長期離脱を強いられることになるが、離脱前は阪神・佐藤輝明の11本塁打に次ぐリーグ2位の8本塁打。2024年、7年ぶりに30本塁打に届かなかった主砲はメラメラと闘志を燃やし挑んだシーズンでもあった。

しかし、5月6日の阪神戦でアクシデントが襲う。

プレー中の怪我で「左肘筋損傷」と診断され、チームを離れた。

好調スタートを切った岡本和真
好調スタートを切った岡本和真

岡本の離脱後「一気に巨人打線の迫力がなくなった」と、そう感じた人も少なくはないだろう。
【岡本和真2025成績:69試合 打率.327 15本塁打 49打点】   

NEXT4番候補? 途中加入のロマン砲

岡本の離脱をきっかけにチームが動く。離脱から1週間も経たない5月12日、高卒の大型内野手・秋広優人(22)、中継ぎ左腕・大江竜聖(26)とリチャード(26)の2対1の電撃トレード。ソフトバンクの未完の大器がやってきた。

リチャードはファームで2020年〜2024年まで5年連続の本塁打王。しかし一軍ではその長打力を発揮できず、2024までは通算10本塁打とくすぶっていた。

移籍すると、持ち前の明るさですぐにチームに馴染んだ。守備練習では誰よりも大きな声を出し、打撃練習ではしょっちゅう阿部監督からの直接指導を受けるなど、首脳陣から熱心な指導が入った。

調子の波はあったものの、昨季キャリアハイ&自身初の2桁本塁打。

特にシーズン後半はここぞの場面で一発が飛び出したり、4試合で3本塁打を打ったり、しっかりとボール球を見極めたりと、随所で成長が見えた。 

昨季キャリアハイ11本塁打のリチャード
昨季キャリアハイ11本塁打のリチャード

阿部監督が「ここで打つんじゃないかと期待しちゃう“宝くじ”」と表現するほど、魅力のある長打力。「確実性」がついてくれば数字はもっと伸びるであろう。

間違いなく、岡本のいない今季の巨人の4番候補の1人だ。

【リチャード 2025成績(巨人):77試合 打率.211 11本塁打 39打点】  

“バッティングの天才”がレギュラー遊撃手に

昨季の巨人打線を語る上で欠かせないのが、プロ2年目でショートのレギュラーに定着した泉口友汰(26)。

そのバッティングはチームメートからも絶賛されている。

中山礼都:
バットコントロールとミートの天才です。

リチャード:
技術の塊です。

山﨑伊織:
ボール球にスイングがかからない。僕は泉口をイメージして打席に立っています。ちょっと短めに持って、トップからあんまり動きをせずにバットをスッと出すみたいなイメージ。

プロも認める天才的なバッティング技術を持つ泉口は、昨季セ・リーグ2位の打率.301をマーク。球界全体を見ても「打てるショート」が少なくなっている近年のプロ野球では貴重な存在だ。

泉口のすごさといえば波やムラがないことである。対投手でいうと、右投手への打率.307、左投手への打率.291と左右で苦にしない。

月別の打率で見ても、4月.313、5月.284、6月,274、7月.260、8月.327、9月.322と絶不調な時期を作らない。チーム別で見ても下記表の通りセ・リーグの全球団に対し年間25本以上のヒットを放っている。

■泉口友汰 2025チーム別成績
チーム   試合  安打  打率   出塁率
阪神    22  26  .306  .352
DeNA     30  24  .319  .381
中日    22  25  .329  .435
広島    25  25  .328  .308
ヤクルト  22  29  .326  .371

このようにコンスタントに成績を残し、調子をキープし続けたことでレギュラーを掴んだ。   

昨季打率セ・リーグ2位の泉口友汰
昨季打率セ・リーグ2位の泉口友汰

山﨑伊織が話すように、ボール球にスイングをかけない「選球眼の良さ」も高い率を残している要因の1つだろう。首位打者のタイトルは惜しくも逃したが、堂々のベストナイン。

バッティングだけでなく、守備でも自身初のゴールデングラブ賞を獲得。

他球団にたっぷり研究されるであろう今季も堅い守りと巧みなバッティングを期待したい。

【泉口友汰 2024成績:66試合  打率.201 1本塁打 9打点】
【泉口友汰 2025成績:133試合 打率.301 6本塁打 39打点】

逆襲誓うベテラン坂本勇人

もちろん、岡本という大きな穴は簡単に埋められるものではない。

「まだまだ、このまま終わりたくない。レギュラーでもう一回、長い時間グラウンドにいられるように。何がなんでも活躍したい。」昨季は代打での出場が多かったベテラン坂本勇人(37)は契約更改の場で逆襲を誓った。今シーズンは岡本がシーズン終盤守ったサードのポジションが空く。

長年レギュラーを張ってきた男が簡単に若手にポジションを明け渡すはずがない。

そして浅野翔吾(21)や石塚裕惺(19)らポテンシャルの大きな高卒ドラ1の台頭も必須だろう。

松本剛(32)のFA加入で各ポジションのレギュラー争いも激しさを増す。チームの核が抜ける今こそ、巨人にとって成長のチャンスなのかもしれない。

(文・巨人担当 入江早雪)