生まれ変わった「町中華」。長野県松本市で45年間愛されてきたラーメン店「若大将」。店主の高齢化などを理由に9月末で閉店したが、市内の企業が事業承継し、12月8日、プレオープンした。少し味を変えたが名物の「山賊焼ラーメン」も引き継いでいる。
駅前に「ニュー若大将」
大きな山賊焼きが乗ったみそラーメン。
客:
「みそのベースとか、前の『若大将』さんの魂的なものはしっかり残っているのかな」
松本駅前の町中華「ニュー若大将」。前の店「若大将」は9月末で閉店したが、市内の企業が経営を引き継ぎ2カ月ぶりに「再オープン」した。
GANSO代表取締役・清宮寛久さん:
「若大将さんが45年間営業されてきて、このままなくなるのは惜しいという思いで事業承継に手を挙げさせていただいた」
店名の由来は加山雄三さん
1980年に創業したラーメン店「若大将」。店主の藤井國廣さんが45年間、店を守り続けてきた。
店名の由来は藤井さんが憧れていた加山雄三さん。主演を務めた「若大将シリーズ」を見て決めた。
藤井國廣さん:
「みんなに愛される名前であってほしいな。男気。なかなかいい男だなと思って、俺もああいう男になりたいと思ったけどならなかった。全然だめだ(笑)」
藤井さんはこう話すが、料理の味とその人柄で市民に愛される店となった。
人気メニューは、山賊焼きがトッピングされたボリューム満点のラーメン。市内の飲食店で山賊焼きを名物にする取り組みが始まった際に藤井さんが開発し、長年親しまれてきた。
「老体です」45年の歴史に幕
ただ、藤井さんも82歳。後継者もいなかったことから9月末で店を閉じることを決めた。
藤井さん(9月):
「(どうして店をやめることに?)老体です。老体、もう体がついていかない」
9月30日最終日、別れを惜しみ多くの客が訪れた。
客:
「お疲れさまでした」
常連客:
「『お疲れさまでした。おいしかったです』。もう本当にこの言葉でしょうか」
常連客:
「味もそうなんですけど、親父さんの笑顔を見に来る。親父さんとともに、このラーメンを食べるのが一番おいしい」
藤井さん:
「(若大将は)自分のふるさとというか、心のふるさとというか、そんなところもある。やり遂げた満足感がないわけでもないし、寂しさもあるし、両方だね。本当はもっとお客さんと接していたいなと思ったけど、ここでさよならするのも人生の区切り」
市内の企業が事業承継
藤井さんの「若大将」は45年の歴史に幕を下ろしたが、市内で3つの飲食店を経営するGANSOが「事業承継」に手を挙げ藤井さんも了承した。
清宮さん:
「若大将さんの良さは引き継ぎつつ、さらに愛される『ニュー若大将』として頑張って営業していきたい」
藤井さん:
「幸せです。若大将を継いでくれるという一言だけで大満足。少しでも皆さんに愛されるお店、新しいお客さんをどんどん引き入れていただけるあたたかいお店になってほしい」
閉店から約2カ月…
新たな店名は「ニュー若大将」。閉店から約2カ月たった12月8日「プレオープン」の日を迎えた。
清宮さん:
「ドキドキしています。緊張の方が大きいですね」
午後5時半開店―。
清宮さん:
「どうもありがとうございます」
客:
「おめでとうございます」
8日は取引先などの関係者が訪れた。
藤井さん:
「はい、どーも。おめでとうさん」
藤井さんも開店を祝いに訪れた。
藤井さん:
「(店には)2カ月(ぶり)だね、変わったね。いいじゃないですか、明るい感じで」
お酒も楽しむ「中華酒場」
これまでの「ラーメン」メインの店から少し変わり、「ニュー若大将」は一品料理などを充実させ、お酒も楽しむ「中華酒場」となった。
イチオシの新メニューは、油で揚げた薄切りの豚のもも肉に、トウガラシなどで作った辛味オイルをかけた「麻辣豚」に、ワンタンなど。
麻辣豚を食べた客:
「おいしい!香辛料の使い方が爽やか」
ワンタンを食べた客:
「プリっとしていて、中に肉汁がたっぷり入っていて、すごくおいしい」
名物「山賊焼ラーメン」も
藤井さんからのあいさつも―。
藤井さん:
「私もこの地で45年間(店を)やらせてもらって、後を清宮さんにやっていただけるということで、非常に寂しいですけど、逆に新しいものが、新しい若大将の歴史が刻まれるのではないか私も期待。きょうは本当におめでとうございます」
新たな「若大将」。引き継がれたメニューもある。看板メニューだった「山賊焼」だ。
山賊焼きは、よりラーメンに合うようにと少しアレンジしています。下味にこれまで使っていなかったカレー粉なども加えた。
客:
「スパイスが効いている。昔ながらを残していくのはいいことかと。僕の子どもとか、大きくなったらその子どもにも伝えていける。そういう面で残していけるからいい」
「(若大将は)昔ながらの山賊焼き。これは新しい感じがして非常においしい」
「心配と楽しみが半々」
藤井さんもこの日、初めて『新たな』山賊焼ラーメンを食べた。
藤井さん:
「麺も違うし、みそも違うし、山賊(焼き)も違う。違っていいんだけどね。もうちょっと、研究の余地ありかな。一番お店で大事なものは、誰もが受け入れられる味。誰でも受け入れられる味を出してもらえればいい。誰もに愛される店にするには、そこが大事。この味がみんなから受け入れられるかどうか。心配と楽しみが半々くらいかな」
45年間、店を守り続けた藤井さんだからこその少し厳しめの意見。ただ、新たな味を磨き長年、愛される店にしてほしいと願っている。
「地域に愛されるお店に」
藤井さん:
「頑張って、応援しているから」
清宮さん:
「ありがとうございます」
藤井さん:
「何とかオープンできて、これでお客さんがついてくれればいいな。みんなに愛される、地元の人に愛されていければ」
GANSO代表取締役・清宮寛久さん:
「若大将さんの良さを生かしつつ、地域に愛されるお店にして、今の時代にあった町中華酒場としてやっていきたい」
