2025年は宮城県内で人々の信頼や公共の安全を揺るがす事件やトラブルが相次いだ。

子供たちの夢を奪ったイベントの突然の立ち消え、警察への信用を悪用した巨額詐欺、そして日常の風景から奪われた公園のポール。

人々からの“信用”を逆手にとって繰り返された手口は、大きな被害と社会不安を与えた。

消えた参加費と代表 子どもたちの夢を砕いたイングリッシュキャンプ

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海外からの留学生などと英語で交流するイングリッシュキャンプ。
仙台市の旅行会社などが企画したこの子供向け国際交流イベントは、3万円前後の参加費で100人以上を集める企画だった。
チラシは小学校でも配られ、仙台市や宮城県、各地の教育委員会の「後援」名義が信頼感を高めていた。

しかし、3年ぶりの開催とされた2025年5月、参加を申し込んだ人々の元に届いたのは、開催10日前に突然中止を告げる一通のメールだった。
支払った参加費は返金されず、運営団体や旅行会社とは一切連絡が取れない状態に陥った。

運営団体と旅行団体の代表は同じ人物だった
運営団体と旅行団体の代表は同じ人物だった

運営団体の元職員は「こうなるのは時間の問題だった」と語る。
運営団体と旅行会社の代表は同じ人物で、資金管理も事実上一人で取り仕切っていたという。
トラブルが発覚する直前から代表は雲隠れし、県の立ち入り検査や行政処分前の聴聞にも姿を見せず、7月には事務所も閉鎖された。

日本旅行業協会が弁済の申請を受け付け
日本旅行業協会が弁済の申請を受け付け

被害救済のため、日本旅行業協会が弁済の申請を受け付けたところ、全国から1544件、総額で5000万円を超える申し込みがあった。
さらに、人々の信用を得るために使われた自治体などの後援名義は、実際には承認されておらず、無断で使用されていたことも明らかになった。

県や各市町村の後援名義は無断で使用されていた
県や各市町村の後援名義は無断で使用されていた

消えた代表の行方も、返されない参加費も、解決には至っていないままだ。

「全財産を調査する」 警察への信用を逆手に取った巨額詐欺

警察官をかたる詐欺の実際の映像(警察庁ホームページより)
警察官をかたる詐欺の実際の映像(警察庁ホームページより)

「あなた名義の携帯電話が犯罪に使われている。犯罪に関わっていないか確認するため、全財産を警察と金融庁で調査する。」

不安をあおる詐欺の電話は、2025年も全国で相次いだ。
警察官などをかたる特殊詐欺の発生は、宮城県内も例外ではなかった。

犯人グループは、ビデオ通話で制服姿を見せたり、身分証明書のようなものを提示したりと、巧妙な手口で信用させようとする。

金を狙った特殊詐欺が多発している(画像の金は事件とは無関係)
金を狙った特殊詐欺が多発している(画像の金は事件とは無関係)

警視庁の警察官を名乗る電話を信じたある女性は、7月から10月にかけ、金塊を預けるよう指示された。
女性は8回にわたり、仙台市太白区内の駅のコインロッカーに金18.6kg(時価3億4800万円相当)を入れ、だまし取られた。
これは宮城県内で発生した特殊詐欺事件で、過去最大の被害額となった。

宮城県内では金塊を狙った同様の特殊詐欺が、2025年は12月24日までに7件発生し、被害総額は約6億2500万円に上っている。しかも、そのすべての事件に警察官を装った人物が登場していた。
捜査関係者は、金の価値が上昇していることや、海外でも取引しやすく持ち運びが容易なことなどを、金塊が狙われる要因として挙げている。

警察への信用を逆手に取った悪質な犯行に、宮城県警は「警察官が金塊の購入を指示することはない」として、強く注意を呼びかけている。

公園から消えた257本のポール 繰り返された単純な犯行

宮城県内各地の公園の車止めポールが無くなっているのが判明した
宮城県内各地の公園の車止めポールが無くなっているのが判明した

仙台市青葉区の公園で、車止めポールが4本すべて根元から抜き取られているのが見つかった。
被害はここだけにとどまらず、仙台市と富谷市の73箇所で、ポールと南京錠合わせて257点が盗まれる事件へと発展した。

送検時の佐藤健一被告
送検時の佐藤健一被告

一連の事件の容疑者として9月に逮捕されたのは、仙台市青葉区の無職、佐藤健一被告。
単独での犯行とみられている。

固定されているポールを持ち去った手口は、驚くほど単純だった。
夜間や明け方など人けのない時間帯に現場へ行き、ポールを揺さぶったり、ごく一般的な工具で固定ネジを外したりして、そのまま車で持ち去るというもの。
被告に特別な知識や能力があったわけではなかった。

警察が押収したポール
警察が押収したポール

佐藤被告は「生活費などを得るためだった」と話し、盗んだポールを金属買い取り業者に売ることを繰り返していた。犯行が発覚したのは、その買い取り業者からの通報がきっかけだった。

仙台市は約1300万円の費用をかけ、再設置作業を行う
仙台市は約1300万円の費用をかけ、再設置作業を行う

最初の盗難からおよそ半年。
仙台市は12月19日からポールの再設置作業を開始した。その費用は約1300万円に上る。
新たなポールは、以前のステンレス製より単価の安いスチール製にし、転売対策として市の所有物であることを示すシールが貼られている。

2025年に宮城県内で起きたこれら3つの事件やトラブルは、手口は違えど、いずれも繰り返されることで被害を拡大させた。

人々の信頼や公共の財産を標的にした犯行は、社会に大きな爪痕を残した。

仙台放送
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