2012年の俳優デビュー以降、数多くの映画やドラマに出演してきた清水尋也被告。
9月、都内の自宅で乾燥大麻 約0.4gを所持した麻薬取締法違反の罪に問われ、その後の保釈からおよそ2カ月半後の12月8日、東京地裁で初公判が行われた。
法廷で清水被告が語ったのは、俳優として活動するが故の苦悩、そして数々の謝罪の言葉だった。
淡々と答えた清水被告
12月8日(月)午前10時の東京地裁。一般傍聴席はわずか21席。
当選した傍聴人らが席に着き見守る中、黒のスーツ姿の清水被告は法廷に現れ、一礼。席に着くと膝に手を置き、前を向いてじっと一点を見つめる。
緊張している様子はさほど感じられず、落ち着いている様子だった。
そして初公判が始まった。
裁判官:
名前は?
清水被告:
清水尋也です。
裁判官:
職業は?
清水被告:
俳優をやっています。

罪状認否で裁判官の質問に淡々と答えていく清水被告。
裁判官:
何か言いたいことはありますか?
清水被告:
いえ、大丈夫です。
裁判官:
起訴内容で間違っているところは?
清水被告:
ないです。
唯一の肉親・兄の“覚悟”
法廷には証人として清水被告の兄・尚弥さんが出廷した。
尚弥さん自身も俳優で、唯一の肉親である清水被告との関係については「良好だと思う」と話し、被告の性格は「まじめ」と答えた。
清水被告は事件について尚弥さんと話した際、泣いて反省していたという。
そして保釈以降の清水被告が規則正しく、家事も自主的に手伝う姿は兄の目には「しっかりまじめに生きていると映っているようだ。
また、今後について「大麻が見つかった家にはもう住まない」と述べ、「同居して自分が責任を持って監督していく」と力強く話した。
俳優としての苦悩、将来への誓い
続いて行われた被告人質問。
改めて起訴内容について問われた清水被告は「間違いありません」と認めた。
さらに理由について「主にストレスの緩和やリラックス目的だった」「職業柄、プライバシーやプレッシャーという部分で無意識に強く感じていた」と述べた。
また、大麻が違法であることも認識していたということを何度か口にした。
先の冒頭陳述で検察側は語学留学のために渡米した20歳の頃に、学校の友人から勧められたことをきっかけに大麻を使用するようになったと指摘。
その後、日本でも22歳くらいの頃には大麻を入手して使用し、俳優をしていたことで直接密売人と顔合わせができないため、知人に金銭を渡して依頼していたとした。
この知人はもともと兄・尚弥さんの友人だった。
大麻について清水被告は「同居人を含めて知っている人がいれば家のテーブルなどに出していた。知らない人が来たらわからない場所に保管していた」と説明。大麻の存在は兄にも隠していたという。
兄を裏切ってしまったこと対して「申し訳ないですし、証人として足を運んでくれたのも兄の優しさ。感謝しかない」「次は自分が兄の人生を支えられるように成長していきたい」と想いを述べた。
また、清水被告の“大麻との向き合い方”に変化がみられる発言もあった。
逮捕前の状況については「大麻をやめようと強く考えたことはなかった」「(逮捕時ドラマ撮影中にも関わらず踏みとどまれなかったのは)自分を過信し過ぎていた。」と述べた。

一方、保釈後の向き合い方について問われると…。
裁判官:
保釈後、大麻をしたいと思ったことはありませんか?
清水被告:
今のところはないです。なるんじゃないかという怖さはありました。
そして今後については次のように語った。
清水被告:
生活を立て直すためにも一般の仕事を探して働いていく。
役者の仕事は1人の力で成立しない仕事だと思っています。まずは1人の人間として後悔ないように生きていきたい。
現在はクリニックと更正施設に通っているという清水被告。
最後に「自分の罪でたくさんの人にご心配・ご迷惑をおかけしたことを反省しています。申し訳ありませんでした」と謝罪し、1時間ほどで結審した。
検察側は常習性や依存性を指摘し、拘禁刑1年を求刑。
一方、弁護側は「再犯の恐れは低い」などとして執行猶予付きの判決を求めた。
清水被告は静かに頭を下げた
初公判から11日後。
再び法廷に現れた清水被告はマスク姿で、時折、咳き込む様子も見られた。
裁判官は「何度も売人から入手する中で、本件犯行に及んでおり、大麻に対する親和性が認められ、依存性も生じつつあった。刑事責任は決して軽くない」などと非難。
その一方で「事実を認め、二度と大麻に手を出さないと誓っている。保釈中に精神科医に通院し、自助グループに参加するなど行動に移している」などとして拘禁刑1年・執行猶予3年を言い渡した。
裁判官が最後に「前回の法廷で述べたこと、考えたことを忘れずにしっかり頑張って下さい」と語りかけると、清水被告は静かに頭を下げて法廷を後にした。
有罪判決を受けたあと、清水被告は所属事務所を通じてコメントを公表。過ちを繰り返さないとする強い決意を示した。
「今回の判決を真摯に受け止め、二度と同じ過ちを繰り返さぬよう、自身の行動と生活を改め、社会の一員としての責任を自覚した日々を誠実に過ごしてまいります」
大麻が「麻薬」と位置づけられて1年
近年の若者を中心とした大麻の乱用拡大は深刻な社会問題にもなっている。
今回、清水被告は大麻の所持で「麻薬取締法違反」の罪に問われたが、これは2024年12月、大麻に関する改正法が施行され「大麻」が「麻薬」として位置付けられたことにある。
さらに、すでに禁止されている大麻の「所持」「譲渡」などに加えてこれまで罰則が無かった「使用」も新たに禁止となった。また、「使用」は拘禁刑7年以下、「所持」についても拘禁刑5年以下から7年以下に厳罰化されている。
清水被告は法廷で「(大麻は)二度と使用しません」と強く誓った。
大麻のみに限らず、すべての薬物に対し、私たち1人1人がしっかりその危険性をこれからも認識していくことが強く求め続けられている。
(フジテレビ社会部司法担当 大熊 悠斗)
