食卓を彩り、私たちの健康を支える四季折々の野菜と果物。せっかくなら、おいしく上手に食べたいもの。野菜と果物を知り尽くした“野菜ソムリエ上級プロ”で“果物ソムリエ”の堀基子さんが、おいしさと栄養を余すところなく引き出す方法をお伝えします。
文・写真=堀基子
もっとも身近な果物の一つ、りんご。見るからに甘そうな蜜入りりんごは、本当に甘いのか?つるピカのりんごは、ワックスのような薬剤をかけているせいなのか?今回は、誰もが一度は気になったことがある、りんごの疑問にお答えします。
「蜜入り」の「蜜」が甘いわけではない
まずは、蜜入りりんごの謎を解明しましょう。実は、蜜の部分が特別甘いわけではありません。
あの透き通った蜜の正体は、「ソルビトール」という糖アルコールです。
りんごの葉が光合成でデンプンを作り、それが酵素の働きで「ソルビトール」になって果実へ送られ、またまた酵素の働きで果糖やショ糖、ブドウ糖になって、果実に貯えられます。
しかし、果実が完熟してくると、すでに細胞内の糖が飽和状態になっているため、葉から送られてきた「ソルビトール」は細胞の中に入れず、細胞と細胞の隙間に染み出して溜まり、あの蜜入りの状態になります。
この「ソルビトール」は砂糖の60%ほどの甘さなので、蜜入りの部分が特に甘いわけではないのです。
蜜入りを選ぶチェックポイント
ですが、蜜がたくさん入ったものは、よく熟しているので、おいしいりんごです。蜜入りしやすい品種は、「ふじ」、「ぐんま名月」、「こうとく」、「北斗」、「おいらせ」、「はるか」などで、「ふじ」の中でも袋をかけずに育てた「サンふじ」は蜜入りしやすく濃厚な味わいで知られています。
蜜入りの可能性が高いのは、ツルが太く、同じ大きさでも重く、お尻に丸みがあり、お尻の部分が黄色やオレンジ色に色づいているもの。
一方、蜜入りしにくい品種は、「王林」、「つがる」、「ジョナゴールド」などです。
つるピカは「油上がり」という現象
続いては、りんごのワックス疑惑についてです。
