石川県の冬の味覚と言えば、多くの人が思い浮かべるのが「加能ガニ」である。かつては福井の越前ガニや鳥取の松葉ガニといったブランドガニの独壇場だった中、石川県では2006年に「加賀」と「能登」から一文字ずつ取って「加能ガニ」としてブランド化に成功した。

2025年の初競りでは過去2番目に高い450万円で競り落とされた「輝」を筆頭に、その美味しさで全国的な人気を博している。今回は、そんな加能ガニの魅力と美味しさの秘密に迫っていく。

「加能ガニ」とは?石川が誇るズワイガニのブランド

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 金沢港では、毎年冬になると加能ガニの競りが行われる。「輝」と名付けられた最高級のカニは、2025年の初競りで過去2番目に高い450万円という値が付けられた。

なぜ、石川のズワイガニはこれほど高値で取引されるのだろうか?

JF石川の若松さんはこう語る。

「加能ガニの魅力はまず、足のみがぎっしり詰まった、甘みのある食べ応え。そして甲羅に入っている濃厚なカニ味噌です。足のみをカニ味噌につけて食べるのは本当に最高に美味しいです」

石川県では、かつては福井の越前ガニや鳥取の松葉ガニに比べて知名度で劣っていたが、「美味しさでは負けていない」という思いから、2006年に「加賀」と「能登」から一文字ずつ取って「加能ガニ」としてブランド化した。

身が詰まる秘密は「脱皮」にあり

加能ガニがなぜ身がぎっしり詰まっているのか、その秘密は脱皮にある。

オスのズワイガニは、海底で生活する稚ガニになってから死ぬまでに13回脱皮を繰り返すと言われている。そして、脱皮から時間が経つほど身に栄養が届き、美味しいカニになるのである。

そこで石川県では、「水ガニ」と呼ばれる脱皮したてのカニは取らないことを決めた。これにより、身がしっかりと詰まった状態のカニだけを漁獲し、高い品質を保っているのだ。

若松さんは、カニの状態を見分けるポイントも教えてくれた。

「甲羅のところに黒いつぶつぶがついているものがあります。これはカニビルの卵なんです。カニは脱皮するので、これがついていれば脱皮してから長い時間が経っていることがわかります。その分回復していて、身の詰まりもあるということの一つの目安になります」

日本海固有水がカニを育てる

 加能ガニの美味しさは、石川県周辺の海の環境にも大きく関係している。

「日本海はカニのいい漁場になっています。というのも、日本海には冷たい日本海固有水というのがあって、とても栄養豊富な冷たい水があります。カニが住んでいる海域は砂や泥で、餌が豊富にある。カニにとってはすごくいい漁場になっているんです」と若松さんは説明する。

日本海固有水とは、などの影響を受けにくい水深300mより深い海水のこと。酸素濃度が高く、年間を通して水温が0度から1度と低いことから、カニが住みやすい環境となっているのだ。

美味しさを保つための「海洋深層水」

加能ガニの美味しさを保つための工夫は、水揚げ後にも続く。金沢市此花町にある「大名茶家」の店主の吉岡典昭さんに、特別な水槽を使ってカニを管理している様子を見せてもらったた。

吉岡さんによると、競りで仕入れたカニは一旦専用の水槽で元気を取り戻してから提供するという。「今日はたくさん買いましたね。量で言うと全部で170杯ぐらい」と語る吉岡さん。

冬場になると悪天候で漁ができなくなる日もあるため、漁に出られる日にはできるだけ多く仕入れるのだという。

大名茶家が提供する加能ガニの美味しさの秘密は、この水槽にあった。

「海洋深層水が入っているんです。海洋深層水というのは普通の海水よりも酸素が多いのと、雑味のない綺麗な海水で、そこに入れるとカニがだんだん元気になります。このカニも大体水深200m、300mのところにいるので、元々のところに帰るような感じですね」

この海洋深層水を使うことで、カニは元気を取り戻し、より美味しい状態で提供できるという。「なるべく美味しくいただくにはどうしたらいいか、日々考えています」と吉岡さんは真剣な表情で語る。

加能ガニの最高の味わい方「カニしゃぶ」

 加能ガニを最も美味しく味わう方法の一つが「カニしゃぶ」である。

そこで今回は、石川テレビの食のキャンペーン『HUBEAT』アンバサダーの彦摩呂さんに、吉岡さんの大名茶家でカニしゃぶコースを堪能してもらった。

まず、吉岡さんが水槽から取り出した大きな加能ガニを目の前で捌く。「まだ生きています」

吉岡さんによると、加能ガニのしゃぶしゃぶの美味しい食べ方は、出汁でしゃぶしゃぶした後、焼いたカニ味噌に浸して食べる方法だという。「これが一番美味しいです」と吉岡さんは太鼓判を押す。

早速、彦摩呂さんが実食。「しゃぶしゃぶ...カニの足湯やいい湯だよ」と冗談を言いながら、カニを出汁に入れる。

わずか数秒でカニの脚の表面が白濁し、いい具合に火が通ったところで取り出し、熱々のカニ味噌に浸した。

「うわ、うわ、うわ、おお...うーん、甘い」彦摩呂さんの表情がとろける。

「この濃厚なカニの甘みとこの味噌の旨みが合わさってもう最高の幸せですね。本当にもう、ふわふわふわふわと広がりますよ。めちゃめちゃ美味しい」

続いて提供されたのは、焼きガニ。

「お腹の部分が一番美味しいところです」と吉岡さん。

塩だけのシンプルな味付けだが、これがカニ本来の味を引き立てる。

「確かに焼くことで水分が飛ぶので、カニの甘みが詰まって濃くなっています。ふわふわです。あと香ばしいし、焼き風味が」と彦摩呂さんは絶賛した。

加能ガニの漁期と今後の展望

 加能ガニの漁期はいつからいつまでなのか。大名茶家の吉岡さんによると、オスの加能ガニは3月20日まで。しかし、大名茶家では大型水槽に仕入れた加能ガニを保管しており、翌年の4月中旬頃まで提供が可能だという。

一方、メスのズワイガニ(香箱ガニ)は12月いっぱいで終わってしまった。彦摩呂さんは「また来年のために子供を産んでほしいから。カニの少子化対策や」とコメント。

加能ガニの魅力を体感した彦摩呂さんは、「まさにもう石川のグルメの代表ですよね。蟹祭りまさにカーニバルや」と締めくくった。

石川県の加能ガニは、その身の詰まり具合と甘み、濃厚な味噌の旨みが特徴だ。脱皮のタイミングを見極めた漁獲方法や、日本海固有水という恵まれた環境、そして水揚げ後も美味しさを保つための工夫など、様々な要素が重なって絶品のカニが生み出されている。

冬の味覚の王様と呼ばれる加能ガニ。その魅力は、食べた人にしか分からない。

ぜひ石川を訪れ、本場の加能ガニを堪能してみてはいかがだろうか。
(石川テレビ)

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