糖化だけが悪者ではない

大坂さんは、食生活の改善や抗糖化サプリ等を否定的にとらえているというわけではなく、糖化がすべての老化の元凶であるかのように語る今の風潮に問題を感じている。

「これは糖尿病治療でもいえることですが、ひとつのことだけにこだわっていては病気を予防することはできません。“食事にはすごく気を使っているけど、お酒やたばこはやめない。抗糖化サプリを毎日飲んでいるけど、日焼けは気にしない”。そんな生活では老化も病気も予防できるはずがありませんよね。それなのに、『糖化を防ぎさえすれば肌の老化は食い止められる』と誤解させるようなアドバイスをするコンテンツが少なくありません。これはいかがなものかと」

では結局、老化を予防したければ、なにをすればいいのだろう?

「肌の老化を少しでも遅らせたいなら、糖尿病の治療や予防と同じで食生活を見直し、適度な運動を行い、しっかり睡眠をとること。さらに紫外線対策も念入りに行うことが大切になるはずです。そうした対策をすべてやりきってから、抗糖化サプリやスキンケア商品に手を出すのなら分かりますが、ほかのことはすべてほったらかしにして『抗糖化サプリを飲めば老化は予防できる』と考えるのはやはり間違っています。

いずれにせよ、糖化は決して怖い病気ではなく、普通に生活している健康体の人の体内でも常に起こっている化学反応です。まずは糖化や老化のメカニズムをきちんと知ること。そして、健康的な生活を心がけることが大切になるはずです。くれぐれも糖化という言葉に踊らされないように気をつけてください」

大坂 貴史(おおさか・たかふみ)
医師。綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学講座 客員講師・臨床准教授。糖尿病専門医・指導医、総合内科専門医、日本医師会認定健康スポーツ医。糖尿病と筋肉、糖尿病運動療法が専門。病院の外で「糖尿病で不幸になる人を減らす」活動をしている。Xでは「筋肉博士」として医療情報を発信中。近著に『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)。

取材・文=中村宏覚

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