シリーズで伝える『くまもとニュースの深層』、今回は『8月の記録的大雨』だ。『線状降水帯』が猛威を振るい、内水氾濫や土砂災害が各地で相次いだ。復旧道半ばの被災地の今を見つめる。

記録的大雨で土石流が襲った興善寺町

2020年の7月豪雨でも熊本に甚大な被害をもたらした『線状降水帯』が、2025年8月に再び熊本を襲った。『線状降水帯』が10日夜から11日の午前中にかけて13時間以上にわたって熊本県にかかり続け、記録的な大雨となった。

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玉名市や八代市、上天草市など、七つの市と町に大雨特別警報が出された。熊本市では、24時間で8月の月間降水量の2倍に当たる380ミリの雨を観測。これは、多くの犠牲者を出した72年前の『6.26白川大水害』の時の雨に匹敵する。

今回は、この時のような『白川の氾濫』という最悪の事態は免れたが、堤防からの越水が確認された井芹川や坪井川の流域では内水氾濫も重なり、住宅や車などの浸水被害が相次いだ。

平野部の至る所で内水氾濫が起きた八代市では土砂災害も相次いだ。九州自動車道・八代インター近くの竜峰山では、大規模な土砂崩れが発生。ふもとの興善寺町を土石流が襲い、崩れた大量の岩や土砂が町を覆いつくした。

リフォームしたばかりだった自宅が被災した加来啓治郎さんと美和子さん夫妻、発災直後に加来美和子さんは「晴天の霹靂。びっくり。まさか、わが身。〈この地に住んでいていいのだろうか〉、昨日の夜も〈住めるかな…〉という話もした」という。

自宅だけでなく、手づくりの庭や畑も変わり果てた姿となり、夫婦は肩を落としながら片付けに追われていた。

発災から4カ月 被災地に咲いた希望の桜

あれから4カ月、川も道路も大量の土砂が埋め尽くしていしたが、現在は取り除かれている。ただ、山に近い上の方まで登っていくと、まだ砂利道で土砂が残っている。道路の舗装もされておらず、災害の爪痕が残っていた。

興善寺町に住む林田尚子さんは「(被災当初より)だいぶ良くはなってきた。ボランティアとかのおかげでやれた気がする。すごく助かったが、ここら辺だけがまだ残っているから早くしてほしい」と話す。

加来さん夫妻のもとを訪ねると、被災した自宅はその後、大規模半壊の認定を受けていた。現在、再建に向けた手続きの最中で、今も仮住まいを余儀なくされている。

それでも前を向こうと、流れ込んだ石を使って庭に花壇を造った。すると、一度は土砂に埋もれた植物が再び花をつけたという。いつもは春にしか咲かない裏庭のソメイヨシノが、取材の10日くらい前にポツンと咲いて2、3輪の花を咲かせたという。

加来啓治郎さんは「たぶん山の栄養分が来たのかなぁと…普通咲かないからね…〈希望の桜〉とかいって…」と照れ笑いを見せた。記録的な大雨から4カ月。これからも被災者に寄り添った支援が求められる。

(テレビ熊本)

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