シリーズで伝える『くまもとニュースの深層』、今回は『8月の記録的大雨』だ。『線状降水帯』が猛威を振るい、内水氾濫や土砂災害が各地で相次いだ。8月の大雨の特徴などについて専門家を取材した。
都市部を襲った内水氾濫 その対策は
河川工学が専門の熊本県立大学の島谷幸宏特別教授は「特に八代市や熊本市などで、自動車の浸水被害が非常に大きくて、内水氾濫が、非常に市民生活に大きな影響を与えたのが、今回の水害の特徴」と話す。

『内水氾濫』は、市街地に降った雨が川の水位の上昇により排水できなくなり、マンホールや用水路などからあふれる現象だ。

島谷特別教授は、気候変動の影響で、これまでは〈数十年に一度〉とされていた規模の大雨災害が、〈数年に一度〉の頻度で起きていると分析。それに伴い「『内水氾濫』も起こりやすくなっている」と指摘する。

島谷特別教授は「なぜかというと、都市の排水機能は10年に1回や20年に1回の洪水に耐え得るようにできている。大きな川は50年に1回、数十年に1回の洪水に耐え得るようにできているので、『内水氾濫』のほうが起こる確率がずっと高い。それに私たちは備えていかないといけない」と話す。
内水氾濫の対応策の一つ『雨庭』
5年前の7月豪雨をきっかけに産官学と市民が連携した『共創の流域治水』の研究と普及に取り組む島谷特別教授。『内水氾濫』への対策の一つとして『雨庭』を挙げる。

住宅の屋根などに降った雨を水路に直接流さず、浅いくぼ地に一時的にためて、地中にゆっくり浸透させる『雨庭』。河川に雨水が一気に流れ込むのを抑え、洪水被害の軽減につながるとされている。

熊本市東区にある熊本県立大学内に造った『雨庭』では、降った雨の水路への流出をどの程度、抑えることができるかなどを観測。8月の大雨では、速報値で降った雨の流出をおよそ50%カットしたという。

島谷特別教授は「個人でも企業でも取り組める方法なので、自分たちも治水対策に関われることも非常に大きなポイントだと思う」と話し、『内水氾濫』対策として、『雨庭』を含めたグリーンインフラの推進などを被災した自治体に提言していく方針だ。
8月の記録的大雨の被害状況まとめ
8月の記録的大雨では、熊本県内で男女4人が亡くなり、いまなお男性1人の行方が分かっていない。

また、住宅の被害は12月9日現在8481棟に上り、5年前の7月豪雨の被害件数を上回っている。住宅が被災し、仮住まいを余儀なくされている人は、11月末時点で326世帯732人だ。
(テレビ熊本)
