東京都は10月に「東京の資源循環及び廃棄物処理に係る施策の方向性について」の中間とりまとめ案を公表した。計画期間は2026年度から2030年度までの5年間とし、2050年度の東京の将来像を入れつつ、2035年度を想定した中期的な方向性も提示するとした。
その中に「家庭ごみ有料化」のシナリオが盛り込まれた。とりまとめ案では、「都内における一層のごみ減量を進めるため、家庭ごみ有料化の導入など、都民・事業者の行動変容を促す仕組みの導入に向けた検討を促す」としている。
家庭ゴミ有料化の導入を促す理由については、「有料化を実施済みの自治体では一定のごみ減量効果が見られている」としていて、「有料化未実施の自治体における家庭ごみ減量化に向けた方策の強化が重要である」と指摘した。
東京都の最終処分場は50~60年後に“限界”
なぜ、ごみ排出の抑制が必要なのか、それは東京都がごみを捨てられる最終処分場の容量が、50年から60年後には限界に達するとみられているからだ。
東京港内で最後の処分場とされている新海面処分場は既に埋め立てが開始されていて、50年から60年弱で満杯となってしまうとされている。
都内の一般廃棄物に係る将来排出量は、2030年度に417万トン、2035年度に418万トンになると推計された。一方、家庭ゴミ有料化が盛り込まれた場合は、2030年度に368万トン、2035年度に358万トンになると見込まれている。
排出量が削減されれば、最終処分場もより長持ちすることになる。特に東京都内にはもうどこにも処分場をつくる場所がないとされているため、最終処分場の寿命について都民は真剣に向き合う必要がある。
ごみ減量のための「3つの『R』」
東京都環境局資源循環推進部の江袋晃弘・埋立調整担当課長は、「ごみを焼却した灰などを埋め立てる最終処分場をできる限り長く使用するためには、一層のごみの減量・リサイクルの推進が必要となります。皆さんにお願いしたいことは、ごみ減量のための3つの『R』です」と話す。
「3つのR」とは、以下のものだ。
REDUCE(リデュース)…ごみを減らす
REUSE(リユース)…繰り返し使う
RECYCLE(リサイクル)…・再び資源として利用する
多摩地域のほとんどは「有料化」導入済み
都内の家庭ごみ排出状況をみると、多摩地域は一人当たりのごみ排出量・再生利用率ともに全国で最も高い水準にある。ごみ減量に効果的な家庭ごみの有料化については、多摩地域のほとんどで導入済みである一方で、23区や島しょ地域の多くが未実施となっている。
家庭ゴミを有料化すると、資源リサイクルも促進される。
小平市では、2018年度まで、ペットボトルなど除く容器包装プラスチックをごみとして収集していた。2019年度からは、東大和市と武蔵村山市と合同で構成している一部事務組合において、家庭ごみを有料化し、全ての容器包装プラスチックについても資源物として分別収集を開始した。その際、分別のインセンティブが働くよう、容器包装プラスチックの収集袋の料金を可燃ごみや不燃ごみと比較して低額に設定した。
こうした取り組みの結果、可燃ごみと不燃ごみの収集量を全体で約19%削減することに成功し、また、プラスチックの資源化量は約2.3倍に増加するなど、ごみの総排出量抑制と分別促進、資源化量増加につながった。
小平市では、燃やすごみのごみ袋40リットル相当を1枚80円、プラゴミは40リットル相当を1枚40円としている。
家庭ゴミの有料化に向けては、23区それぞれの立場や意見があり、本格的な議論はこれからだ。東京都の示したシナリオは、今後の議論に一石を投じたといえるだろう。