テレビ宮崎の夕方ニュース「#Link」でお天気コーナーを担当している気象予報士・古山圭子さんが天気の豆知識を解説するコーナー。今回は、「月夜の大霜」についてお伝えします。

美しい満月の夜に潜む、冬の厳しさのサイン

5日の宮崎はよく晴れた夜となり、夜空に輝く美しい満月を拝むことができました。

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「きれいですね。この天気コーナーの時にきれいに見えるようになりましたね」と嬉しそうな児玉アナに、古山予報士も「日頃の行いが、いいのかもしれない」と笑顔で応じます。この日は、ことし最後の満月。澄んだ冬の夜空に浮かぶ月は、多くの人々を魅了したことでしょう。

しかし、古山予報士は「ただですね、注意が必要なんですよ」と続けます。ここで、冬の気象に関する一つのことわざを紹介します。

天気のことわざ「月夜の大霜」とは?

「お天気のことわざにこんなものがあるんですね。『月夜の大霜』というものなんです」

古山予報士が、自身で描いた可愛らしいイラストには、「月夜の大霜」という言葉とともに、月と霜の絵が描かれています。

このことわざが意味するのは、「月が美しく見えるほど晴れた日の翌朝は、地面が冷え込んで霜が降りるほど寒くなる」ということ。つまり、美しい月夜は、翌朝の厳しい冷え込みのサインでもあるのです。

「雲のお布団」でわかる!放射冷却の仕組み

では、なぜ晴れた夜は特に冷え込むのでしょうか。その鍵を握るのが「放射冷却」という現象です。そのメカニズムについて解説します。

日中、地面は太陽の熱で温められます。そして夜になると、その蓄えた熱を宇宙(上空)に向かって放出(放射)し、徐々に冷えていきます。これが「放射冷却」です。

ここでポイントになるのが「雲」の存在。

曇りの夜:
空に雲があると、地面から放出された熱が雲にさえぎられます。まるで「雲がお布団代わり」になってくれるため、熱が逃げにくく、冷え込みは緩やかになります。

晴れの夜:
 一方、空に雲がないと、地面の熱をさえぎるものがありません。熱はどんどん宇宙へ逃げていき、地面の温度が急激に下がります。

つまり、「月がよく見える晴れた夜」は「雲のお布団」がない状態のため、放射冷却が強まり、翌朝はグッと冷え込むというわけです。

放射冷却がもたらす「水道管の凍結」に注意!

この放射冷却による冷え込みは、私たちの生活に直接影響を及ぼすことがあります。古山さんが特に注意を呼びかけたのが「水道管の凍結」です。

6日の朝の予想最低気温を見ると、宮崎市で3℃、都城や延岡で1℃、そして高千穂町や五ヶ瀬町では-4℃と、山沿いでは軒並み氷点下の厳しい冷え込みが予想されていました。

 古山予報士によると、特に以下の条件では水道管が凍結しやすくなるとのことです。

・気温が-4℃以下になる地域
・屋外で水道管がむき出しになっている場所

凍結を防ぐためには、事前に保温材やタオルを巻いたり、一晩中ごく少量の水を流し続けたりといった対策が有効です。

「万が一凍ったとしても、熱湯をかけるのはNGです。破損の恐れがあるんですよね」と古山予報士。もし凍ってしまった場合は、タオルをかぶせて40℃程度のぬるま湯をゆっくりかけて溶かすのが正しい対処法です。

「私の地元、茨城でも、ばあちゃん家で屋外の水道が凍ってひびが割れて、もうブシャーって一晩中出ていたことがありますので…」という古山さんの実体験も交えた呼びかけに、冬の寒さへの備えの重要性を改めて感じさせられます。

冬の宮崎は「晴れのち晴れのち晴れ」?

天気図を見ると、日本付近には高気圧が団子のように3つも並んでいます。この影響で、宮崎県では、晴天傾向が続く見込みです。

「宮崎の冬、予報士いらずかもしれない。」と言うほど、冬の宮崎は晴れる日が多くなります。しかし、だからこそ「月夜の大霜」と「放射冷却」による朝の冷え込みには、十分な注意が必要なのです。

美しい満月を眺めながら、その裏にある自然の仕組みに思いを馳せてみる。そんな知識が一つ増えるだけで、日々の天気がもっと面白く、味わい深いものになるかもしれませんね。

(テレビ宮崎)

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