「例えば道具を使わない代表的な筋トレとして、スクワットが挙げられますが、通常のスクワットにジャンプの動作をプラスした“ジャンプスクワット”を行えば、より負荷をかけられます。また動作をゆっくり行う『スロートレーニング』もおすすめです。同じ動作でも、ゆっくり時間をかけて行うと、筋肉により大きな負荷をかけられるのです。また、女性に人気のピラティスも基本的には筋トレと同じなのでおすすめできます」

「プレート法」のバランス(編集部作成)
「プレート法」のバランス(編集部作成)

並行して実践したいバランスの取れた食事については、「“ベジファースト”は効果なし?誤解されている理由と血糖値の上昇を緩やかにする『プレート法』の考え方」で紹介したプレート法を参考にしてみてほしい。

「マンジャロ」を専門医が処方できない理由

前編と後編に分けて、糖尿病専門医の大坂さんに糖尿病薬「マンジャロ」をダイエットに濫用する危険性や、ダイエットを行う際の注意点を聞いてきた。

自由診療でマンジャロを処方している美容系クリニックでは、こうした説明はほとんど行われていない。そう考えると、肥満防止や薬の使い方に詳しい糖尿病の病院でも、自由診療でマンジャロを処方してくれればいいのに…と思ってしまうが、現状はそうはなっていない。なぜなのか。

「確かに、ダイエット目的ならば糖尿病専門医やスポーツ専門医が、その人にあった運動や食事を含めたダイエットプログラムを提示しながらマンジャロを処方したほうがいいに決まっています。でも、それはできないことになっているんです。なぜなら、日本糖尿病学会では『糖尿病患者以外にマンジャロを処方することは不適切な使用にあたる』として、自由診療による処方を禁じているからです」

とはいえ、今後は変化もあるかもしれないと予想する。

「今、揺り戻しのようなことが起こっていて『マンジャロをダイエット目的で処方する際も、食事や運動についてきちんと指導できる医師が処方すべきではないか?』という意見が徐々に増えつつあります。もしかすると、そう遠くない未来、きちんと知識を持った医者がマンジャロを処方するようになるかもしれません」

なかなか成功させることが難しいダイエット。“薬で痩せられる”という甘い言葉につい飛びついてしまいたくなるが、そんなにうまい話はない。リスクを理解したうえで、よりよい選択をしたいものだ。

【前編はこちら】糖尿病治療薬「マンジャロ」を使ったダイエットのリスクは?間違った使い方で健康被害も…無責任な医師の処方に警鐘

大坂 貴史(おおさか・たかふみ)
医師。綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学講座 客員講師・臨床准教授。糖尿病専門医・指導医、総合内科専門医、日本医師会認定健康スポーツ医。糖尿病と筋肉、糖尿病運動療法が専門。病院の外で「糖尿病で不幸になる人を減らす」活動をしている。Xでは「筋肉博士」として医療情報を発信中。近著に『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)。

取材・文=中村宏覚

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