沖縄・石垣島から来たその男は、いつもチームのピンチに現れた。“左キラー”のリリーフ投手として数多のピンチを救ったあの男だ。

WBSCプレミア12 日本代表にも選出

嘉弥真新也さん(36)。身長172センチとプロ野球界では、決して恵まれていない体格ながらも、現役時代は、左サイドスローから最速146キロのストレートとスライダー、シュートなど変化球を投げて左打者をキリキリ舞いさせた。2019年には『WBSCプレミア12』 の日本代表にも選出されている。

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しかし当時のことを尋ねると「工藤さん(ホークス元監督)に使ってもらった。いいピッチングを続けることだけを考えていたんで、記憶がない」と振り返る。工藤公康監督の許、チームが成し遂げた4年続『日本一』の偉業に大きく貢献したサウスポー投手だ。

プロ選手を夢見る野球少年たち

2025年11月、日曜日の朝。福岡・筑後市の羽犬塚中学校。野球少年たちの元気な声が響くグラウンドに嘉弥真さんの姿はあった。

現役を引退して約1年。嘉弥真さんは今『ホークスジュニア』の監督として、将来、プロ入りを夢見る野球少年の指導をしている。

プロ野球の各球団が、小学生のジュニアチームを編成し、年末に大会を開くNPBジュニアトーナメント。2005年の初開催以降、ホークスの近藤健介選手やセ・リーグMVPに輝いた阪神の佐藤輝明選手など、数多くのプロ野球選手を輩出してきた。

2025年、ホークスジュニアに選ばれたのは約3600人の応募のなかから厳しい選考を勝ち抜いた16人の精鋭たちだ。8月から毎週末、福岡を中心に行われていた練習。県外から通う子どもも多く、なかには小学生離れした力強いスイングをみせる選手もいる。

「すごい球も速い(子もいる)。こういう子たちがプロに行く」と将来を楽しみにしている嘉弥真さん。石垣島時代のことを尋ねると「自分が子どもの頃?裸足で野球をしている野生児だった」と笑った。

子どもたちの姿をいずれテレビで…

沖縄の石垣島でのびのびと育った嘉弥真さん。2011年のドラフト5位でホークスに入団した。プロ野球の世界に飛び込み、ホークスの先輩や指導者から教わることで“野球の奥深さ”を初めて実感したという。

入団当時、工藤監督から指導を受ける嘉弥真さん
入団当時、工藤監督から指導を受ける嘉弥真さん

嘉弥真さんは、自身が身を持って学んだその知識を、プロ野球を目指すホークスジュニアの子どもたちにも伝えたいと考えている。「プロでするような練習。当時、工藤監督やコーチに教えてもらった配球とかを子どもたちには柔らかくして伝えています」と話す。

投手のフィールディングや内野手への声のかけ方、走者へのけん制などの技術も身振り手振りを交えて丁寧にアドバイスを送る。

大勢の観客を魅了するプロ野球の舞台から、小学生を育てる監督へと様変わりした1年。

嘉弥真さんは「子どもたちが、いずれプロ野球の世界に行ったら1番嬉しい。その姿をビール飲みながらテレビで見られたら僕は幸せです」と笑った。

(テレビ西日本)

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