複数の県職員にセクハラにあたる不適切なメッセージを送っていた責任を取るとして、福井県の杉本達治知事が4日に辞職した。再出馬への意欲を問われると「考えていない」とした。自らの不祥事で2期目途中での失脚となった。

県議会が全会一致で退職に同意

12月4日の福井県議会本会議では、前日に杉本知事が県議会議長に提出した辞職願について採決し、全会一致で同意。杉本知事の4日付での辞職が決まった。

知事は採決後に議場で、2期6年7カ月の県政運営への協力に対する感謝の言葉を述べ「任期途中での辞職で迷惑をかけ申し訳ない」と謝罪した。

議場で謝罪する杉本知事
議場で謝罪する杉本知事
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知事として6年7カ月、総務部長や副知事時代を含めると12年余りに及ぶ福井県政との関わりについてはコロナ禍の対応、北陸新幹線の県内延伸など自身の実績を挙げた。北陸新幹線の小浜・京都ルートの実現や福井アリーナの整備、原発の使用済み核燃料の県外搬出といった積み残された県政の重要課題については「新しい体制で県議会や県民と力を合わせて1歩でも2歩でも前に進めていただきたい」とした。

報道陣とのやりとりは以下の通り。

6年7カ月、任期半ばでの辞職

Q. 知事の任期途中での退任について、県議会の承認は得られたのか―
知事: はい、県議会において退任の議案について承認をいただいた。
 
Q. 知事としての任期はどのくらいの期間だったのか―
知事: 6年7カ月の任期で、副知事時代と総務部長時代を合わせると12年余りになる。

辞職が決まった直後、記者会見に応じた
辞職が決まった直後、記者会見に応じた

Q. 知事の辞職申し出が全会一致で同意されたことについての受け止めを―
知事:できるだけ早く県政を新しい体制の方に向けていけるようにという思いについて、ご理解がいただけたのではないかと考えている。

Q. 退職金の受け取りについてはどうするのか―
知事: 今回のこと(セクハラ問題)については責任を感じ退職させていただいた。一方で、これまで県政の推進のため全力で取り組んできたという思いなので、規定に従って執行されると考えており、全額受け取る予定。

セクハラ問題についての説明責任

Q.辞職してすっきりした感じかもしれないが、県民、有権者から見たら真相が分からないままセクハラを認めて何も語らないまま辞職するというのは、非常に無責任ではなか。
 辞職に至るような事案というのは、セクハラに当たるメッセージを複数の職員に送ったことについてなのか、通報者を含む1件1件のことが深刻に受け止めざるを得ないと思って辞職するのか、説明を―
知事:いずれも。調査の過程で、1つ1つについてもそうですし、複数あるということについても非常に重いと考え、内容的にも不適切も極まりないと考え、今回こういう判断をした。本当に申し訳なく思っている。

Q.6月から調査を受けて、その時点で辞職という判断もあったはずだが、それをしなかった理由は―
知事:調査の中で話もしているし、これからもしっかりと答えていく。1つ1つについて申し上げると、断片的なことで物事が判断されたり調査に影響をあたえかねないので、調査に誠実に協力したうえで、報告書で明らかにされると思っている。

Q.知事を辞職した後も、セクハラ問題について会見を開いて説明すべきでは―
知事:お話は真摯に受け止める。

Q. 調査報告書の公表時にはどのような対応を―
知事:報告書の中身を見て適切に対応し、説明責任を果たしていく。具体的な対応方法については、報告書の内容に基づいて判断する。

知事を辞職した後について

Q. 次の知事選に出馬する意志は―
知事:今は考えていない

Q. 政治家を引退するのか―
知事:政治というのは憲法上認められた権利であり、社会を良くするそういう活動だと思っているので、そういう意味では政治ということには関わっていくのかなと思っている。
 
Q. 知事としての信念や軸は何か―
知事: 県民主役の県政、徹底現場主義、チーム福井というのが目指した福井県政であり、県民の皆様が何を求めているかを常に現場に出て話を聞いて、県民の皆さんと一つになって前に進めていくというやり方。

自身の県政運営を振り返り熱弁
自身の県政運営を振り返り熱弁

Q. 任期中に道半ばで終わった政策はあるか―
知事: 道半ばというのは常にあるものであり、政策はある日1日で全部終わっていくわけではなく、常に誰かが種をまいて育てて形にして、その後どう活用するかが続いていくのが行政もしくは政治の常だと考えている。

Q. 次の知事に期待することは何か―
A. 北陸新幹線の京都ルート早期認可着工、福井アリーナの整備、原子力使用済み燃料の県外搬出といった待ったなしの課題の解決、および日本一の幸福実感をさらに高めていくことを期待する。

Q. 11月25日に辞職を表明した後、県政への関与についてどのように対応したのか―
知事:福井県の将来を決めることに大きく関与することが良くないかもしれないということで自制したが、それでも必要なことについてはしっかりと対応した。

Q. 知事職を辞した後は福井県にとどまるのか、それとも離れるのか―
知事:県民の皆さんが許してくださるのであれば、いち県民として福井県の発展のために力を尽くしていきたい。

Q. いち県民というのは公職にあたるのか、それとも一般の県民としてなのか―
知事:全く今のところ何も考えられていないというのが実情。明日からどうするかについては、取りあえず挨拶して歩かなくてはと考えている程度。

辞職後は妻と海外旅行に
辞職後は妻と海外旅行に

Q. 辞職後にやってみたいことはあるか―
知事:妻と海外旅行に行くことを考えている。長期間、県内を空けることについてのプレッシャーが強かったため、海外旅行をしたいと考えている。

Q. 知事選について、特定の候補を応援・支援する可能性はあるか―
知事:何も考えていない

原子力行政について

Q. 原子力政策における再稼働について、どのような判断をしたのか―
知事: 福井県は半世紀以上に渡って国のエネルギー政策・原子力政策に協力してきており、県民の皆さんとご相談させていただいて、結論を得ていく丁寧な過程を踏ませていただいた。

Q. 原子力行政を進める際の心がけは―
知事:目の前で起きている課題を解決するためだけでなく、もっと長いスパンでものを考えて、その先の行政やエネルギー政策を常に考えながら進めてきた。

使用済み核燃料の県外搬出問題も道半ば
使用済み核燃料の県外搬出問題も道半ば

Q. 国に対して指針を示してほしいと言い続けた理由は―
知事:福井県のこれからをどう考えるかということを考える上で、極めて重要だから。
 
Q. 次のリーダーにはどのようなことを求めるのか
知事:県民が何を求めているのかを肌で感じていただいて、お決めいただければと思う。福井県の原子力部門は長い歴史と優秀な職員がいるので、職員や専門委員会、議会などと相談しながら進めていけば県民の皆さんの求める方向性に進めていけると思う。

Q. 使用済み核燃料の処理について、6年以上求め続けられているが見通しが立たない状況について―
知事:六ヶ所の再処理工場の進行が遅れているというのが本質的な原因。これまでも事業者にも国に対しても強く求めてきたが、今後も六ヶ所の再処理工場の予定通りの竣工を実現していただきたいと思っている。

県政課題について

Q. 北陸新幹線の開業について、どのような考え方を持っていたのか―
知事: 開業がゴールではなく、それがスタートだという考え方で、その結果としてまちづくりや県内の大型投資が続いていると考えている。
 
Q. 福井県のブランド化について、どのような成果があったのか―
知事.:恐竜といえば福井、福井といえば恐竜というほどに、全国どこでも福井が認識されるようになった。

県内に延伸した北陸新幹線
県内に延伸した北陸新幹線

Q. 新幹線開業による福井県への影響は何か―
知事:社会全体が明るい雰囲気になり、チャレンジや起業を志す若い世代を中心とした動きが活発化し、全体として前向きになってきた。

Q. 知事として6年半の任期で職員に最も伝えたことは何か―
知事:職員クレドに凝縮されており、仕事に向き合う気持ちと、最後までやり抜くというところを重視してきた。

Q. 知事が主導で導入されたディレクターの職やチャレンジ制作提案などの推進力が失われることについて、どのように責任を感じているか―
知事:新しい体制の中で必要だと思われれば推進していただけると思う。重要なのは県民の皆さんがどう考えるか、そして新しい知事がどのように考えるかということ。個人としては続けてほしいと思うが、次の人に対して指示するのではなく、判断は新しい知事に委ねる。

妻とは「最後の日だね」と会話

Q. 知事は今日何時頃登庁したか―
知事:8時半ぐらい
 
Q. 登庁の際の移動手段は何か―
知事:以前は徒歩だったが、最近は車を利用している。
 
Q. 本会議が始まるまでの間は何をしていたか―
知事:来客があり、その後、部長会議で皆さんと話をして、その後は今日の答弁などを勉強した。

最後の会見になるのか…
最後の会見になるのか…

Q. 本会議終了後の予定は―
知事:お弁当を食べる予定。お弁当を持って来ている。
 
Q. 今朝ご自宅を出られる際に家族からどのような声かけがあったのか―
知事:日頃と同じようなことを言いながら、最後の日だね、といったような話をした。

福井テレビ
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