職員へのセクハラが疑われる問題で、知事の職を辞する意向を表明した福井県の杉本達治知事。特別調査委員会による調査報告書の公表が年明けにずれ込むことを受け、「県政により深刻な影響を与える」として、12月議会が始まる前に辞意を表明したとしている。

会見の中では、職員が「知事から不適切なメッセージが送られた」と通報された事案について「軽口や冗談の延長のつもりで、認識が甘かった」と謝罪。さらに、他にも複数の職員に同様のメッセージを送っていたことも明らかにした。

11月25日に緊急で開かれた記者会見の詳細なやり取りは以下の通り。

知事の冒頭発言

私から、職員からの通報事案についての現在の思いをお話させていただきます。

杉本達治知事
杉本達治知事
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これまで、私は県、それから特別調査委員によります調査などに誠実に対応させていただきました。こうした中で、私として調査を通じ、通報者の方およびその他の職員に対しましてもセクハラと思われるメッセージを送っていたという認識に至りました。相手を深く傷つけてしまいましたことにつきまして、極めて重く責任を感じております。

本日、特別調査委員によります調査報告書の公表が年明け、来月以降になるという発表がありました。調査報告が年明けとなりますと、年明け早々から来年度予算については知事査定が始まりますし、また人事の作業も本格化します。また、2月県議会にも大きな影響を与えるということで、県政により深刻な影響を与えるものと思われます。まもなく12月県議会が始まりますが、ここでも予算案をはじめとして重要な議案についてご審議をいただきます。私がそこで説明をする知事として議会に臨むことは妥当ではないと考えました。

県政の混乱を少しでも抑え、1日も早く新しい体制で県政を再始動していただくために、私として知事の職を辞することを決意し、近日中に退職の申し出をさせていただこうということを宮本議長に対してご相談させていただいているところでございます。

今後とも、特別調査委員の調査には誠実に対応し、報告書の内容を真摯に受け止めてまいりたいと思っております。

通報をされた方、それから私の言動により深く傷ついておられる方々に対しまして、深くお詫びを申し上げます。また、県民の皆様、県議会議員の皆様、県職員の皆様の信頼を大きく損ねましたことに対しまして、心から謝罪をいたします。本当に申し訳ありませんでした。

報道陣との一問一答

報道陣: 先日の会見では、調査結果が出てから適切な対応を取るとおっしゃっていました。このタイミングで辞意を表明された一番大きな理由は何でしょうか?

緊急記者会見
緊急記者会見

杉本知事: 調査報告の結果が来月以降になると伺いました。私は元々、12月議会前にも出されるものと思っており、その段階で十分にご説明をさせていただこうという思いでおりました。それが1月以降になれば、予算、人事、議会に大きな影響を与えます。また、調査の過程で、私が送っていたメッセージがセクハラに当たると自分でも認識したことも理由です。こういったことを自分として極めて重く責任を感じ、県政をできるだけ停滞させないという思いから、今回この表明をさせていただきました。

報道陣: 辞職の決断をされたのはいつだったのでしょうか?

杉本知事: ここ数日、2、3日のうちです。

報道陣: 辞職の決断はここ数日のうちということですが、報告書の公開が年明けになると知らされたのはいつですか?

杉本知事: ごく最近です。

報道陣: 調査結果が出る前にセクハラに当たるとご自身が認識されたとのことですが、具体的にどのような思考を経てその認識に至ったのでしょうか?

杉本知事: 最終的には第三者委員会で認識が示されるものだと考えておりますが、私としての思いとして、セクハラに当たるなという認識に至りました。当初の通報事案についてもそうですし、その他の複数の職員に対するメッセージがそれに当たるということを、調査の過程で色々お話をさせていただく中で自分として認識をいたしました。

報道陣: セクハラに当たるという認識に至ったことと、県政への影響というタイミングの問題と、どちらが辞職の大きな理由でしょうか?

杉本知事: まず、複数セクハラに当たるテキストメッセージを送っていたことを認識したことで、大きく言えば辞職しようと決意しました。タイミングとして今の時期を選んだのが、公表が1月以降になるという発表があったことを踏まえて、今日発表させていただいたということです。

報道陣: 「幸福実感」を掲げ、心理的安全性を大事にされてきた中で、それを脅かしてしまったことを重く受け止められたということでしょうか?

杉本知事: おっしゃる通り、本当に申し訳ないと思っております。

報道陣: 次の知事選にご自身は立候補される考えはありますか?

杉本知事: 今そんなことを考えられるような状況にはございません。

報道陣: 調査は6月から始まっていますが、どのあたりからご自身でセクハラという認識をするようになったのでしょうか?

杉本知事: どのあたりか自分でも分かりませんが、聞き取り調査を踏まえながら、セクハラなんだなと認識をしました。当初の段階は、とても自分の認識が不十分だったと反省しております。

報道陣: 最初、テキストメッセージを送った時はセクハラという認識はなかったということですか?

杉本知事: 申し訳ありません。本当に認識が十分でなかったのだと思っております。若い頃から、一緒に仕事をしている仲間、後輩、仕事の仲間だとか親しい友人だとか、そういう感じでざっくばらんにずっと付き合ってきました。それは男性も女性もということです。やり取りの中で、自分としては軽口だとか、少しふざけたつもりで書いていたということが元々あったんだと思います。そういうことが、後から見ればセクハラだったんだということを強く認識したということです。

報道陣: 知事という立場と職員という上下関係がある中で、私的なメッセージを送られていたことについて、認識が欠けていたということでしょうか?

杉本知事: 一番大きく認識がずれていたのは、知事という立場に立って、職員もしくは周りの皆さんがどういう思いで私と接しているかということの違いを自分で認識しないままに、昔のままの思いで「ざっくばらんな関係なんだ」という思いで続けていたことが、今回のことになったなと深く反省をしております。

報道陣: 辞職が頭をよぎるようになったのはいつ頃でしょうか?

杉本知事: 特別調査委員の職員向け調査の期限が伸びた段階で、何らかの反応があったんだなというところで、自分としては色々とやはり考えを改めたというところかと思っております。

報道陣: 通報された方とは別に、複数の職員に対してセクハラに当たるメッセージを送ったという認識でしょうか?

杉本知事: これは相手の受け取り方ということもありますので、具体的に誰がということではございませんけれども、自分としても、これはセクハラに当たるなというものが複数あるというふうに認識していたということです。

報道陣: 報告書が出る前のこのタイミングで、やはり辞任すべきだったんでしょうか?

杉本知事: 冒頭にも申し上げましたが、より深刻な県政の混乱を招かないようにするため、いつの時期がいいかと考え、今日のタイミングになったと考えております。

報道陣: 辞職は近日中にとのことですが、具体的にいつ頃でしょうか?

杉本知事: 県議会のご意向なども伺いながら、ご相談をさせていただこうと思っております。できるだけ早い段階と考えております。

報道陣: 辞職されるということは知事選が行われます。知事が立候補されるお考えはありますか?

杉本知事:今そんなことを考えられるような状況にはございません。

報道陣: 出直し出馬について「今考えられる状況ではない」とのことですが、出る可能性はあると考えてよろしいですか?

杉本知事: 今は全く考えておりません。

報道陣: 出ないのであれば「出ない」と明言してほしいのですが。

杉本知事: 今は出るつもりはありません。

報道陣: 調査結果の内容が明らかにならないまま知事選で出馬するとなるとフェアではないと思いますが。

杉本知事: 仮定のご質問にはお答えできません。私、今、知事選に出ようと考えているわけじゃありませんので。

報道陣: 権力者のハラスメントを防ぐためにどうしたらいいか、ご自身の経験から言えることはありますか?

杉本知事: 申し訳ありません。私にその認識が足りなかったから今日を招いていると認識しております。

報道陣:いま辞任を表明されると、調査結果が出たタイミングで知事の説明がないままになってしまう可能性がありますが、その点はいかがでしょうか?

杉本知事: 調査結果については、私としては真摯に受け止めて、必要な対応をしてまいります。

報道陣: 調査結果が出た際の「必要な対応」に、公の場での県民に対する説明は含まれていると考えてよろしいでしょうか?

杉本知事: それは内容によりますけれども、必要な対応はさせていただきます。

報道陣: 道半ばで職を辞することに対するご自身の思いは?

杉本知事: 大きな影響がある、非常に重要な局面であるということは認識しております。そういう中でも、やはりより大きな深刻な影響をできるだけ避けるという思いで、今回表明をさせていただいております。県民の皆様方にご迷惑をおかけしますことを心からお詫びを申し上げます。

報道陣: 特にやり残したことを具体的に教えていただけますか?

杉本知事: 北陸新幹線の小浜・京都ルートをどれだけ早く認可着工に結びつけられるかということ、原子力の使用済み燃料の課題、子育てもアリーナ構想も、新幹線開業後の県内の発展も、福祉の面も、本当に課題は尽きないというふうに認識しております。

報道陣: 通報案件以外に複数セクハラに当たると認識されたメッセージは、具体的にどれぐらいの数ですか?

杉本知事: 相手の方もいらっしゃいますので、「複数」ということで。第三者委員会の方で明らかにしていただければと思っております。

報道陣: ご自身の中で、減給などではなく辞職に至ったのは、セクハラをどのように重く受け止めているからでしょうか?

杉本知事: 私は、程度というよりも、結果として自分の認識が非常に甘かった、不十分な結果、お相手の方を傷つけてしまった、そして自分が今、知事という立場にある、そういったことを極めて重く責任を感じて、今回辞職をさせていただくということです。

報道陣: 知事という優越的な地位の中での職員に対する思いが軽率だったのでは?

杉本知事: ご指摘は重く受け止めさせていただきます。そうした認識が極めて足りていなかったということだと思っております。

報道陣: 北陸新幹線の敦賀以西、小浜・京都ルートの推進が停滞する責任をどう考えますか?

杉本知事: 結果としてこういうことになり、全ての関係者の皆様方に大きなご迷惑をおかけすることを深くお詫び申し上げたいと思います。この課題は新しい知事になられる方も当然その方向に向かって力を入れていただく必要がありますし、新しい体制のもとで力を入れて進めていただければと考えております。

報道陣: ご自身が認識している複数の事案は、調査委員から「他にも同様の話が出ている」と説明があったのでしょうか? それともご自身で思い至ったのでしょうか?

杉本知事: 私の認識としてということでご理解ければと思います。決して特別調査委員から「これはセクハラだ」とか、そういう指摘を受けているわけではありません。ただ、私として今までのやり取りの中で色々お話を伺っている中で、自分がやってきたことを振り返って、それに当たるということを認識したということです。

報道陣: 複数の事案は、知事就任以降のことでしょうか?

杉本知事: 知事になって特に、公職にあるということを強く意識して、今の、セクハラのメッセージを送っていたなと思う、その知事以降ということを考えております。

報道陣: ご家族、特に奥様にはどのように説明されていますか?

杉本知事: 6月の初めに今回の通報事案を知った頃から、妻には中身も含めて詳細に話しましたし、経過の中でその都度説明もしてきており、妻は本当にずっと辛い思いをしているなと顔を見てても感じておりました。ただ、そうは言いながら非常に気丈に、今朝も含めて支えてくれているという状況です。子供たちにも話をしました。

報道陣: 調査報告書が出る前に辞職の判断をされたことについて、説明に一貫性がないという批判についてはどう考えますか?

杉本知事: 報告書が出た時に私として必要な説明をさせていただくということでございますので、そういう意味では、一番重い判断を早くしたということかと思っております。

報道陣: 調査結果が明らかになっていない中で、なぜ辞めなければいけないのかと思う県民もいると思います。また、通報者を責めるような言動をする人もいると聞きます。県民や県庁職員がこの問題にどう向き合うべきか、メッセージをお願いします。

杉本知事: 今回の件は私が起こした大変申し訳ない行為であったと思っております。そういう意味では、相手の方は被害者ということになるわけですので、私に対して優しいお気持ちをお持ちになっていただけることはとてもありがたいですが、被害者の方の思いもぜひ汲み取っていただければと思っております。いずれにいたしましても全て私の責任でございます。

報道陣: 県職員以外、例えば支援者やマスコミ関係者への不適切な言動はなかったのでしょうか?

杉本知事: 職員だけということは、確かになかったかもしれないと思います。そういうことから言えば、もし不快に思ってらっしゃる、辛い思いをされてらっしゃる方がいらっしゃれば、それに対しても本当に深くお詫びを申し上げたいと思います。

報道陣: テキストメッセージは、どういうつもりで送っていたのでしょうか?

杉本知事: 日常の雑談の延長だったということでございましたが、内容的に、人として申し訳なかったなと。後から見れば、ざっくばらんに楽しくというつもりで書いていたその瞬間はそうだったんだろうと思いますが、今考えてみれば本当に申し訳なかったなと思い、なおかつ知事としての立場であれば、なおのこと意識すべきだったと考えております。

報道陣: 全国で首長のハラスメントのニュースがある中で、なぜご自身の認識を再確認できなかったのでしょうか?

杉本知事: やはり未熟だったということだと思います。そのことで反省ができていなかった、もしくは気づきがなかった、認識が不十分なままだったということを深く反省もしておりますし、申し訳なく思っております。

報道陣: 今の率直な心情をお願いします。

杉本知事: まずは、通報者の方、また私の言動で深く傷ついていらっしゃる方、この方々に心からお詫びを申し上げたいと思います。その上で、県民の皆様、県議会の皆様、県職員の皆さま、全ての皆様方に対して、私の至らない行為によって大変なご迷惑をおかけすることに対しましても心からお詫びを申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。

1日も早く新しい体制を作って、新しいスタートを切り、福井県の良さをさらに伸ばしていけるような体制を作って再始動していただければと思っております。

福井テレビ
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