佐賀空港の上海便が大幅に減便された。また、不老不死の薬を求めて中国から日本へ渡ってきたという徐福にちなんだ日中交流行事では中国の駐福岡総領事が講演を辞退。中国の日本への渡航自粛の影響が広がっている。

“上海便”の旅客需要低迷で減便に

11月26日午前11時ごろ、佐賀と中国の上海を結ぶ春秋航空の上海便が佐賀空港に到着した。

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乗客のなかには団体客もいたが、いつもより少ないようにも感じる。この日の搭乗率は66%。10月までの平均、76%を大きく下回る。

中国から帰国した人に話をきくと「(行く前は)最初はやはり不安がありドキドキしていた」と話す。

このツアーには当初、日本人19人の予約が入っていたが、最終的には9人になったという。

中国語で「高市早苗のばか」と言われ

中国で観光や買い物を楽しんだというツアーの参加者の中には、日中関係の悪化を感じる体験をした人もいた。

中国から帰国した人:
エレベーターに乗りかけたときに(何か)中国語で言われたけど何かわからなかった。通訳さんが「“高市早苗のばか”と言ったんだよ」と言われたので、“えー”と思った

一方、「買い物しているときは店の人も友好的に発展するようにということで、いろいろ安くしてもらえた」「同じ人間なのでみんなで仲良くという思い」と中国観光の感想を話す人もいる。

後日の11月28日には搭乗率がさらに低下し57.8%。この時期としては大幅に低い数字となった。
佐賀県によると、上海便は現在週4往復運航しているが、12月1日から来年3月末まで旅客需要の低迷を理由に週2往復に減便。さらに減る可能性もあるという。

空港の飲食店は売り上げ減少を懸念

上海便の減便で空港の飲食店は影響を心配している。

中国語のメニューを準備するなど様々な客層に対応している「さがんれすとらん志乃 空港店」の担当者は「(上海便の減便は)正直、痛い。売り上げは下がると思う」と不安を口にする。

現時点(取材時の11月下旬)では中国人観光客の利用減少は感じていないとのことだが、12月からの減便と、特に日曜日の運航がなくなることによる売り上げの減少を懸念しているという。

さがんれすとらん志乃 空港店:
平日に関しては時間帯が午前中だったのでそこまで影響はないが、日曜日はちょうどお昼の時間帯だったので、そこだけでも20人以上のお客さんが減るので痛い。1、2カ月の減便だといいが、この先ずっと(減便)となると、もう本当に売り上げ的には厳しい

観光地「嬉野温泉」でもキャンセル

観光地でも上海便減便の影響を心配する声がきかれる。

中国人観光客にも人気の「嬉野温泉」。
この日は、日本人はもちろん韓国人観光客などの姿は見られたが、全体的には人通りが少ないように見える。温泉街の土産店からは、「影響は今のところあまり感じない」としながらも、今後の影響を懸念する声も聞かれた。

嬉野市内の旅館の代表によると、中国人観光客の宿泊は全体の1割程度だが、ネットによるキャンセルも出ているという。

長年の“日中交流イベント”にも影響

影響は観光だけではない。長年築き上げてきた日中の交流イベントにも影を落としている。

佐賀市金立町にある「佐賀市徐福長寿館」。ここには約2200年前に中国・秦の始皇帝の命で日本へ渡り、佐賀にたどり着いたとされる徐福にまつわる資料が展示されている。

この施設には中国人の来館もあり、全体の1割程度を占めている。

“中国の駐福岡総領事”が講演を辞退

開館30周年を記念した11月30日のイベントには中国の駐福岡総領事・楊慶東氏が講演する予定だったが、辞退するとの連絡が入った。その際、「参加することができず残念」とのメッセージが添えられていたという。

佐賀市徐福長寿館 事務局長:
諸般の事情でご辞退というご連絡がありまして大変残念に思っております

調整を続けてきた事務局長は今後の関係改善に期待していると話す。

佐賀市徐福長寿館 事務局長:
徐福というのは平和の懸け橋。日中関係の最初の懸け橋と思っておりましたので、それをずっと今後も続けていけば、今こんな状態ですけれども決して悪くなることはないと思っております

中国の“日本への渡航自粛”は、観光だけでなく、これまで築いてきた日中の交流にも影響を及ぼしている。

サガテレビ
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