「登校拒否」から生まれた「トーキョーコーヒー」
35万3970人、学校を長期で欠席した小学生、中学生の数だ。「過去最多」となった不登校。そんな子供や親のために居場所を作ろうと奮闘する女性が愛媛県伊予市にいる。
自宅でくつろぐように楽しく過ごす子供たち。そばにいるのが太田聡美さん(36)。
毎週月曜日、伊予市中山の山あいにある太田さんの自宅には、様々な理由で不登校になっている子供たちがやってくる。絵を描いたり、ネコと遊んだり、自由に過ごせる場所だ。ここは、「トーキョーコーヒー」。「登校拒否」のアナグラム=文字を入れ替えて作る言葉遊びから生まれた全国的なプロジェクトで、不登校の子どもとその親が一緒になって様々な活動を行う拠点のひとつ。
当事者の居場所づくりに取り組んでいる
不登校支援を行う太田聡美さん:
「私自身が中学校の頃学校に行けない時期があって、情報もなければ頼れる人もいなくて、すごくしんどかったので、いま学校に行けなくて悩んでいる子供たちに、同じ思いをさせたくないなと思ったところがスタートです」
全国の小中学校で年間30日以上欠席した児童生徒の数は、12年連続で増え続け、昨年度は35万人を超え過去最多となった。県内の小中学校でも3950人と同じく過去最多だ。太田さんは、今不登校について学ぶセミナーを開催したり、地域と交流するマルシェを開いたりして当事者の居場所づくりに取り組んでいる。

「まわりに優しい人が集まってくる」
松山市の中学1年生なおさん。2年ほど前からトーキョーコーヒーに通っている。
なおさん:
「さっちゃん(太田さん)が優しいから、まわりに優しい人が集まってくる」
仲良しのロナさんは、伊予市の小学6年生。1年ほど学校を欠席していましたが、今は行ったり、行かなかったり、自分で選びながら過ごしているという。
ロナさん(小6):
「みんなが好きとか嫌いとかなく受け付けてくれる感じがして、心が楽かなって思ったから。心の休み場所みたいな、それで学校いけるようになったけん、よかったって感じ」

ここに学校のような「時間割」はない
ロナさんの母親は、太田さんと一緒に活動している。
ロナさんの母:
「子供が選択して選べる場所っていうのは、いくらあってもいいと思うんですよ。(娘は)来てみたら両立ができるようになったというか、考え方が変わったというか。こっちもいいんだ、こっちもいいんだ、両方手段として持ってていいんだって、かたよらずに、って本人が気づいた。学校に行けない、だから不登校、だから悪い、じゃない。じゃあどうするか、次の一歩を踏み出せるような後押しが私たちの活動でできればいいのかなって思ってます」
この日は、庭の畑でとれたサツマイモでスイーツ作り。
トーキョーコーヒーに学校のような「時間割」はない。料理も、したい人がしたいだけすればOK。
太田聡美さん:
「これやりましょうって言われてやらされるのがすっごい苦手で、やりたくないことはやりたくない!って子供で。ここは大人も子供も自由に過ごせる場所でありたい」

息子のごうきくんはほとんど学校に通っていない
趣味のネイルを披露している奥田夕子さん。小学5年生の息子ごうきくんは、入学直後からほとんど学校に通っていない。
奥田夕子さん:
「仕事とかもやめてしまったので気持ちがね、沈んでしまうかなと思うので、できるだけ出ようと思ってさっちゃん(太田さん)の相談会とか、いろんなところに出るようになって、(ここに来て)自分で楽しみを見つけるっていうのを久しぶりに思い出したなっていう気がします」
親子そろって通えるこの場所は、互いを確認しながら安心して過ごし、リフレッシュできるという。

「みんな普通の子どもだから、分けないでほしいな」
太田聡美さん:
「子供が学校いかなくなると、子供のことで頭がいっぱいになっちゃう。そういうときはここにきて(親が)自分の時間をまず作る。自分のことを考えてあげる時間が必要。」
太田聡美さん:
「悔しいですね、特別な子として見られているのが悔しい。みんな普通の子どもだから、分けないでほしいなと思います」
太田さんは、「不登校」という言葉をこの3文字に置き換える。“歩登幸”
太田聡美さん:
「学校行く行かないていう話よりも、もっと人生を考えたときに、親子で幸せになるために道っていっぱいあって、子供が学校に行っている道も幸せになる道のひとつだし、学校に行かなくなっても道はもう無数にあって、どの道に進んでいくかを親子で一緒に考えている期間かなと思います」
ゆっくり、でも着実に幸せへと歩む親子の姿を見守る。

