福岡・朝倉市のいわゆる“外国人向けマンション”を巡る問題に自治体は困惑している。また反対のデモが起きるなか、建設予定地を所有する企業の関係者が取材に応じ「建設には協力できない」と話した。

「住人の8割以上が外国人になる」と説明

11月16日。「朝倉のことを勝手に決めるな!」。いつもは静かな朝倉の町並みにシュプレヒコールが響く。日の丸の旗を振りながらデモ行進するのは、いわゆる“外国人向けマンション”の建設に反対する人たちだ。デモの主催者は「1人でも多くこの問題を知って頂く。その目的でデモをしました」と話す。

外国人向けマンション建設反対デモ(11月16日・朝倉市)
外国人向けマンション建設反対デモ(11月16日・朝倉市)
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朝倉市の柿原地区では今から3年前の2022年、中国系の開発業者が、マンションの建設を計画した。

その後の2024年5月、業者側は地元の住民に対して計画の概要を説明している。

それによると「中国系が40%、香港・台湾が40%、日本・韓国が20%の割合で販売する」という内容だったという。

開発業者側は、住人の8割以上が外国人になることを説明し、約1万8000平方メートルの敷地に、14階建てのマンション2棟の建設を予定し、290世帯が入居見込みになると話したという。さらに業者側はマンションを6棟に増やし2000人が住むことを目指すと説明したということだ。

地元住民は「『来てほしくない』という話しか聞かない。どうなるんだろうな」と不安な面持ちだ。

SNS上で拡散するデマの数々

地元住民からマンションの建設に対する不安の声が上がるなか、2025年の春、SNS上に“或るデマ”が拡散した。

「現在、マンションが出来ており、数十年後には1000棟のマンションを作り、2万人の中国人を移住させるとの話」《SNSより 2025年4月の投稿》

6月には、朝倉市議会で市議がこのデマについて指摘する場面もあった。

▼朝倉市 渡辺毅・市議「2カ月ほど前にSNSで、中国系のマンション建設の情報が誇張されて大げさに流れていたことはご存じか?」

▼朝倉市 都市建設部長「市としては、把握はしていません」

さらにSNSには『知事が建設を許可した』などという事実と異なる情報も投稿され、これを信じた人から県に抗議電話やメールなどが殺到。これを受けて、県が『許可した事実はない』と否定する異例の会見を開いた。

また、朝倉市には約1200件以上の苦情の電話やメールなどが相次いでいるという。

ほぼ同じ文面のメールが約60通

朝倉市人事秘書課課長の古賀勝さんは「『移民政策反対』『中国人が2万人来るがいいのか』という電話が多い」と話す。そして不可解なメールも届くという。

「“主権行使メール”。例えば、日本憲法前文および第1条に基付き、国民主権=設計権の行使者として以下のことを指示します。外国人マンションの反対。国民主権=設計権で『設計権』という言葉は使わないので違和感はあります。どういう意味なんだろう」と古賀課長は頭を抱える。

朝倉市によると『国民主権』を主張し、海外資本による土地売買の規制などを指示する内容のメールが、2025年9月中旬以降、約60通届いたというのだ。

文面はほぼ同じで、朝倉市は対応に苦慮している。

「マンション建設には協力できない」

こうした建設反対の声に対し10月、開発業者側は、自社のホームページで釈明した。

「『外国人専用マンションが開発される』旨報道されておりますが、事実とは異なります。特定の国籍者の移住を推進する目的はございませんし、法令に違反する入国や在留を推進する目的も一切ございません」(開発業者のホームページより)

「現在のところ1棟のマンション(総戸数164戸)の建設を予定しております」(開発業者のホームページより)

現時点でマンション建設の計画に変更はないとした業者側。一方で建設予定地を所有する企業の関係者は、取材に対し回答を寄せた。

「元は、近くにあるクリニックに中国人を呼び込み、その中国人の患者が宿泊できる施設をつくると聞いていました」(建設予定地を所有する企業の関係者)

「ただ、反対運動が起きるなか、地域との関係も考えるとマンション建設には協力できないと判断し、開発業者側にもその立場を伝えています」(建設予定地を所有する企業の関係者)

波紋を広げる朝倉のマンション計画。現在も開発許可をめぐる手続きが滞り、建設予定地では既存の建物の解体も始まっていない状況だ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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