高市早苗首相の中国による台湾への軍事侵攻が想定された、「台湾有事」をめぐる国会答弁を発端とした波紋が広がり続けています。

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14日には、中国外務省が「日本の指導者が公然と台湾問題で挑発的発言を行い、日本に滞在する中国人の安全に重大なリスクをもたらしている」として、日本への渡航を当面控えるように注意喚起。

さらに、中国国防省も、「武力介入するなら惨たんたる代償を払うことになる」と警告しました。

今回の件を受けて、中国在住の日本人からも不安の声が…。

中国在住の日本人:
これから中国に出張にくる日本人は怖いと思います。日本語をしゃべらないようにとアドバイスしました。
日本人が中国に来なくなってしまうと、ビジネスにも影響が出る可能性も…。状況次第では中国でビジネスができなくなり、帰国またはほかの国を探す必要が出てくる。

ビジネスやインバウンドなどにも波及する中国の対応。
高まる日中の緊張の中、この影響はどこまで広がるのか。キヤノングローバル戦略研究所の上席研究員で、中国研究センター長でもある峯村健司氏に見解を聞きました。

峯村健司氏:
中国の“怒り度”は100%です。中国は、他の国のようにドンとやるのではなく、少しずつ階段を上がるようにテンションを強めていくんです。それで言うと、今回は振り切っているなと。
そして、「軍」が出てきたと、これは大きくて、軍が批判をしたということは、(怒りが)最高レベルまで行っているのだろうと。

――特にその後、日本側から刺激するような発言はなかったと思いますが、なぜエスカレートしている?
問題はその間、薛剣総領事(の投稿)と13日の外務省の発言の間に、習近平国家主席から指示が出ているらしいんです。今回の態度については、強硬な態度で行けと。
もともと事務方レベルでは穏便にしようとしていたのですが、トップから命令が出たというところで、みんなアクセルを踏んでいる。もしここで手を抜いたりすると、捕まってしまったりするので。

――あくまでも日本の防衛の話をしたのに対して、なぜ中国側は『日本が攻めてくる』という表現をするのか
そこは中国もわかってはいるんですが、今回の機会をうまく利用して、日本に対して圧力をかける。中国にとって、台湾を統一するというのは国家の目標なんです。邪魔な存在で言うと、米国と日本。そのひとつである日本に「お前ら邪魔をするなよ」と、これを機会にどんどんプレッシャーをかけている。

今後、関係緩和に向かう可能性は G20が“カギ”?

10月末に行われた日中首脳会談では、お互いに良い雰囲気で終えることができたはずが、なぜ、ここまでこじれてしまったのか。

峯村氏はその発端として、高市氏が台湾代表とのツーショット写真をSNSに投稿し、「林信義総統府顧問」と肩書も書いたことが関係しているのではないかと言います。

峯村健司氏:
これは中国が主張している「ひとつの中国」の原則に逸脱していると。台湾を「国」と認める表現を、一国の首相がやっていると。まずここで“イチ切れ”している訳です。台湾を政府として認めていることが、「ふざけるな」と。
そのあとに、また同じ台湾問題で存立危機事態だと言ってきたことに対して、2回同じことで挑発してきたというふうに中国側は見ていると。

――発言の撤回や注釈を付けることで今の状況は変わり得る?
私は変わらないと思いますし、撤回するべきではないと思います。間違ったことを言っているわけではないですし、高市氏が一度修正しているにもかかわらず、何も変わっていないことを考えると、ここは撤回などはしない方がいいと思います。

――今後緩和に向かう可能性は?
南アフリカでG20の会合があります。習近平氏は行かないのですが、ナンバー2の李強首相が出席するんです。正式な会談が入ったという話はまだ聞いていませんが、仮になかったとしても、高市氏はコミュニケーションが上手な方なので、「私の真意はこうなんだ」ということを、ちゃんと話をする機会ができれば、緩和に向かう可能性はゼロではない。

――実際に中国国内で自粛の動きはあるのでしょうか?
これは気になって私も聞いたのですが、旅行会社にあまり日本に行かせるなという指示が出ていたり、中国と日本を結ぶ飛行機の減便も計画されているみたいです。
(中国は)すごく政治的な国なので、政府が言えば、皆さん“風を読む”んです。なので、ここは結構指示が行き渡ると思います。

――過剰反応しないことが大切?
おっしゃるとおりで、今SNS上ではものすごい言葉が行き交っていますが、冷静にこちらも見るというところです。そこが大事だと思います。
(「サン!シャイン」 11月17日放送)