10秒ほどの握手の間、高市首相に少しに笑みが見られたものの、2人は硬い表情だった。APEC=アジア太平洋経済協力会議が開かれていた韓国での、高市首相と習近平国家主席の首脳会談冒頭での様子だ。握手は片手だった。
APEC首脳会議前に、控室で中国の習近平国家主席と挨拶を交わしました。 pic.twitter.com/WVt6lIH0sT
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) October 31, 2025
習主席の硬い表情は、APEC首脳会議の控え室で高市首相の挨拶を受けた際に見せた笑みとは対象的だった。
会談の冒頭、習主席は、高市首相が所信表明演説で「中国が重要な隣国で、建設的で安定的な対話関係を築き、両国の戦略互恵関係を進める必要がある」と表明したことに触れ、「これは、新内閣が中日関係を重視する証だ」と評価した。
また、中国外務省によると習主席は「中日両国は一衣帯水の重要な隣国で、両国の関係が長期的に健全で安定的に発展することを、両国民や国際社会が望んでいる」とも述べた。
その一方で習主席は、「中日関係の基盤が損なわれず、揺るがされないよう」歴史や台湾問題に関し、日中共同声明などで定めた規定を守るよう求めた。
「高市首相の歴史認識や台湾に関する言動を警戒」
では、高市首相との首脳会談を中国側はどう見ているのか。国営メディアや共産党メディアが伝えた順番や画像から考えてみた。
首脳会談当日の国営テレビのメインニュースでは、習主席が韓国で行われていたAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議に出席したことがトップニュースで、その次にAPECの場で行った各国との首脳会談がカナダ、タイ、日本の順で報じられている。
会談の翌日、11月1日付の共産党機関誌「人民日報」には、習主席が行った日本、カナダそしてタイとの首脳会談が1面に掲載されている。いずれも写真や記事のスペースはほぼ同じ大きさだ。ただ、位置的には、カナダとタイの下に日本との首脳会談が掲載されている。
記事には微妙な違いがある。カナダ、タイとは「首脳会談を行った」という表現。一方、日本とは「(日本の)要請に応じで首脳会談を行った」という意味を表す中国語「应约会见」が入っている。首脳会談は中国側から求めたものではないという意味にもなる。
こうした「違い」や「差」は首脳会談前からあった。習主席は、石破前首相や岸田元首相の就任に際して送っていた祝電を高市首相には送っていない。祝電は李強首相が送ったが、これまではあった中国側からの公表はないままだ。習主席が祝電を送らなかった理由について、中国の日本研究者は「中国が高市首相の歴史認識や台湾に関する言動を警戒していることの現れ」と指摘する。
王毅外相は、首脳会談の3日前に行われた茂木外相との電話会談で次にように述べている。
「日本の新内閣が中国との交流において『第一歩』を踏み出し、『最初のボタン』を正しく留めることを望む。歴史問題と台湾問題は両国関係の基盤と互いの基本的な信頼に関わるものである」
ともあれ、今回の首脳会談で両首脳は、互いの違いを乗り越え共通の利益を拡大する「戦略的互恵関係」の推進を確認した。
“平手打ち”と受け取られた台湾代表との会談
その首脳会談の翌日11月1日、高市首相はAPECに台湾代表として参加した林信義総統府顧問と会談したことを林氏と握手する写真とともに投稿した。
11月1日、台湾を代表してAPEC首脳会議に参加している林信義氏とお会いしました。日台の実務協力が深まることを期待します。 pic.twitter.com/AJDUkgMEnu
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) November 1, 2025
これについて共産党の関係者は、「習近平氏の顔を平手打ちするようなもの。台湾問題で中国を挑発している」と述べ、こう続けた。
「日中関係のスタートは良くないものになった」
(FNN北京支局長 垣田友彦)
