上司は、Iさんの会議での態度、特に人の発言をちゃんと聞かないことや遅刻が多いことなどについて、本人に軽く注意することもありました。しかし、それ以上にIさんの度胸やアイディアを面白いと褒めることのほうが多いため、注意が効いているとは言いがたいようでした。

島田さんや他のメンバーは、このような上司のIさんに対する対応を甘いと思っていますが、それを上司に言うことはできません。結果として、島田さんが割を食っている状況となり、だんだんとIさんと関わることにストレスを感じるようになってきたということでした。

島田さんは、今後のIさんへの対応法について筆者のところへ相談にきました。

後輩の言動から推測される可能性は

Iさんの言動の様子を聞いている限り、彼女は、発達障害の一つであるADHDの可能性があります。ADHDの主な特性に、「不注意:気が散りやすい」や「衝動性:気持ちをおさえられない」、「多動性:落ち着きがない」があります。

さらに、これらの特性を「不注意優位型」(忘れ物が多い等)、「多動性・衝動性優位型」(余計な一言がある等)、「混合型」(不注意と多動性・衝動性双方が併存する)の3タイプに分けて考えることがあります。

女性は幼少期からADHDの特性が目立ちにくい傾向にある(画像:イメージ)
女性は幼少期からADHDの特性が目立ちにくい傾向にある(画像:イメージ)

女性は幼少期からADHDの特性が男性より目立ちにくく、発見が送れる傾向にあります。女性のADHDは、「不注意優位性」が目立ちやすいのですが、実は、本人も無自覚なまま「多動性・衝動性優位型」や「混合型」で悩んでいること(周囲との関係がうまくいかないため、反対に周囲を悩ませていることもある)も多いです。

Iさんの場合は、整理整頓が苦手なことは「不注意」によるもの、空気を読まず話しはじめるのは「衝動性」によるものと考えられます。また、ADHDの人は余裕をもって行動するのが苦手です。

時間や段取りの見立てが甘く次々と予定を入れてしまうのは、思考の「多動性」ゆえに考えがまとまらないからです。これらの特性を踏まえるとIさんは、「混合型」といえそうです。

ADHDは医師による治療で症状が改善するため、本人が悩み、仕事に支障をきたしているのなら、専門医に相談することが望ましいでしょう。

ただし、Iさんのように社会人になるまで問題なく過ごしてきているケースは、おそらく医療機関を受診しても発達障害の診断名は付かず、その特性がある発達障害グレーゾーンという扱いになりそうです。そもそも、Iさん本人が困ったと自覚するまでは、受診は選択肢に入らないでしょう。