トランプ大統領も「マムダニ氏勝利」に言及

全米最大の都市ニューヨークで、いまかつてない政治的熱気が広がっている。

11月4日(現地時間)に行われる市長選挙で、社会主義者を名乗る民主党のゾーラン・マムダニ候補(33)が支持を伸ばし、各種世論調査で他候補を大きく引き離しているからだ。

元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏は2位に甘んじ、共和党のカーティス・スリワ氏は遠く3位。

各種世論調査で1位のゾーラン・マムダニ氏
各種世論調査で1位のゾーラン・マムダニ氏
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さらに注目を集めたのは、トランプ大統領が側近に「マムダニはもう負かすことはできない」と語り、自身の対立党の候補者の勝利を予言したとも報じられたことである。

大統領は9月、「マムダニが市長になれば連邦資金を止める」と発言したが、その後ホワイトハウスは選挙を待たずして180億ドル(約2兆7000億円)のインフラ予算を凍結した。

マムダニ氏人気の“背景”

そのマムダニ氏はアフリカのウガンダ生まれ、インド系の両親とともに幼少期にニューヨークへ移住した移民二世でイスラム教徒である。現在はクイーンズ地区選出のニューヨーク州議会議員で、民主的社会主義者(DSA)の一員を名乗り、「現実的な社会主義」を掲げる。

選挙公約は家賃の凍結や幼児教育の無償化、市営スーパーの設置、バスの無料化といった都市生活者の切実な不満に応える内容だ。

資金源として法人税率の引き上げや高所得者課税を提案するが、従来の急進派のように「資本主義を否定」するのではなく、「公平な分担」を訴える姿勢が目立つ。
かつて「警察予算の削減」を叫んだが、最近は謝罪のうえで「安全な街づくりのために警察と協力する」と語り、現実的な方向転換も見せている。


マムダニ人気の背景には三つの要素がある。

第一に、若者を中心とした草の根の組織力だ。ブルッキングス研究所によれば、彼の陣営はわずか数か月で3万人を超えるボランティアを動員し、投票登録者を急増させた。

第二に、生活費と住宅費の高騰という「実感のある危機」を正面から取り上げたことがある。支持者たちが街角で唱える「家賃を凍結せよ」というスローガンは、政治的信条よりも生存感覚に根ざしている。

第三に、時代の空気だ。CNNの世論調査によれば、民主党支持層の66%が「社会主義に好意的」と答え、資本主義を肯定的に見る人は42%にとどまった。冷戦期のように「社会主義=悪」という図式は、いまの米国では通用しない。