山陰地方は朝晩の気温がようやく平年並みとなり秋の訪れを感じられるようになってきた。
その一方で、この夏の猛暑や異例の残暑の影響で“秋の風物詩”が異変を見せている。
島根・出雲市特産の西条柿「こづち」は、生産量が半減する事態に…。
また鳥取・大山では、ブナ林などに「葉焼け」現象が発生していて、11月に迎える紅葉シーズンに懸念が広がっている。その現状を取材した。
中国山地に秋を告げる…幻想的な雲海

10月10日の早朝、島根・美郷町の田之原(たのはら)展望台。雲海が朝焼けに染まっていた。冷え込んだ朝に現れる幻想的な光景だ。
標高約500メートルの展望台から眺めると、小高い山々が島のように浮かび、オレンジと白のグラデーションに染まった雲海が中国山地に秋の訪れを告げていた。

この日は「両国おろし」と呼ばれる珍しい現象も発生した。
白い霧が、広島県三次市側から標高の低い美郷町側へと山を越え、滝のように流れ込む様子が観測された。
山陰地方では10日、晴れて放射冷却が進み、各地で今シーズン最低の気温を記録。
日南町茶屋で10.2℃、邑南町瑞穂と飯南町で10.9℃、鳥取で15.0℃など、29の観測地点のうち22地点で最も低い気温となった。
美郷町によると、本格的な雲海シーズンはまだ先とのことだが、雲海が現れる確率は秋の深まりとともに高くなる見通しだ。

異常気象で生産量は半減…特産の西条柿がピンチ
一方で、秋の味覚に異常気象の影響が及んでいる。
島根特産の西条柿「こづち」は、縦長の形と柔らかくなめらかな食感が特徴だが、主要産地の出雲市平田地区では大きな打撃を受けている。

平田地区では96人の農家が西条柿を生産しているが、春先の低温や霜の影響で花芽が枯れてしまい、実がならない木が多発。

さらに夏の猛暑が追い討ちをかけ、実がなっても「奇形」になるものも少なくないという。
JAしまねによると、平田地区での出荷量は前年の約200トンから約110トンへと半減。
販売額に至っては、前年の約1億5500万円から約5400万円へと3分の1に減少する見込みだ。

そんな厳しい状況の中、出荷式では関係者が「耐えて収穫にこぎつけた。しっかりPRして販売につなげたい」と意気込んでいた。
島根県全体では、平田地区の不作を石見地方でカバーしながら、前年比95%の約250トンの出荷量、前年比85%の約1億1250万円の販売額を見込んでいる。
紅葉にも異変…名所の木々に「葉焼け」現象

鳥取の紅葉の名所の一つである江府町の鍵掛峠。
大山の南壁を望む絶好のロケーションで、例年10月中旬から中腹の木々が色づき始め、11月初旬に見頃を迎える。
しかし今シーズンは猛暑の影響で「葉焼け」という現象が起きている。

日本山岳ガイド協会認定の登山ガイド佐々木淳一さんは「部分的に茶色くめくれあがったりしている、これがいわゆる『葉焼け』という症状です」と説明する。
葉に直射日光が当たり組織が破壊されて、光合成ができなくなったことで葉が傷む現象だ。

この「葉焼け」現象は、全国の紅葉スポットで確認されている。
京都・嵐山では直射日光を長く浴びた葉が枯れてしまい、現在色づいている葉も本格的な紅葉シーズンには落ちてしまう可能性があるという。

ただ、大山の場合は朝晩の冷え込みが強いため、佐々木さんは「例年通り日中との寒暖差が大きくなれば、影響は最小限に収まるのではないか」と見ている。
2024年もシーズン前には「葉焼け」の影響が心配されたが、全体の彩りを損なうほどではなかったという。
「(鍵掛峠からの景色は)鳥取県の一番彩りが強いところですので、マイカーでも登山でもそれぞれの秋を楽しんでいただければ」と佐々木さんは話し、紅葉シーズンのにぎわいを期待している。

日本気象協会によると、大山の紅葉の見頃は例年並みの11月2日ごろと予想している。
思うように色づかなければ観光面で大きな影響があるだけに、関係者は順調に紅葉が進むことを願っている。
(TSKさんいん中央テレビ)