神通川流域の公害病・イタイイタイ病の発生源、現在の神岡鉱業に対する立ち入り調査が行われ、被害者団体が排水中の有害物質を低減する取り組みを確認しました。
岐阜県飛騨市にある神岡鉱業への立ち入り調査は、被害者団体と原因企業の三井金属鉱業が結んだ公害防止協定に基づいて実施されました。
*リポート
「年に一度行われるイタイイタイ病の原因企業への立ち入り調査、今年はどのような成果が得られるのでしょうか」
今回の調査では、神通川流域の住民や科学の専門家、弁護士など約60人が現地を訪れ、排水をより安定かつ高いレベルで浄化するため、被害者団体の提案をきっかけに神岡鉱業が鹿間工場で新たに設置した設備の効果などについて確認しました。
*神岡鉱業の担当者
「時間の経過とともに上積みの固形分が減り、水の見た目もきれいになっているところがある。中間調整槽(新たに設置した設備)の一定の効果があると考えている」
従来は、鉱山や工場などから流れてきたカドミウムなどの有害物質を含む「濁水」を沈砂池などを通したのち、「シックナー」と呼ばれる沈降濃縮装置に入水し、有害物質を沈殿させていました。
今回、新たに排水を処理する中間調整槽が設けられ、これにより水の流れを穏やかにし、より高い沈殿効果が得られるといいます。
会社側の説明を受けながら、協議会のメンバーはその効果を確認していました。
また、近年の異常気象を受け、豪雨や洪水時の対策や雨ざらしの採掘土壌からカドミウムなどの重金属が流出しないよう木々を植え、緑化を進める植栽の進捗状況なども見て回っていました。
被害者団体は、より安定した高いレベルの排水処理を目指して取り組むよう求めていて、これに対し、今年就任した田邊修孝社長はその要望を受け止め、継続的に取り組む姿勢を示しています。
*神岡鉱業 田邊修孝社長
「環境安全最優先という運営方針を掲げているので、継続して環境の改善に努めていかないといけない」
神岡鉱業への立ち入り調査は1972年から毎年実施されています。
この間に神岡鉱業から出るすべての排水中に含まれるカドミウムの平均濃度は8.1ppbから10分の1に大幅に減少し、国の排出基準値を下回っています。
*神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会 江添良作代表理事
「これまで企業(神岡鉱業)に指摘することが中心だった。今後は提案型で協働の力によって、目的に向かって新たな段階に進む」