熊本県天草教育事務所の職員が2023年1月に長時間労働によって自殺し、その後、公務災害に認定された。熊本県教育委員会は10月10日に職員の遺族に対し謝罪し、解決金約1億円を支払うことで合意した。

残業100時間超の労働を苦に自殺した職員

遺族の代理人弁護士によると、熊本県天草教育事務所に勤務していた男性職員が2023年1月に自ら命を絶った。

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職員は亡くなるまでの数カ月間のほとんどで残業時間が100時間を超えていたという。厚生労働省の労災認定基準では直近1カ月で100時間、または2カ月から6カ月間で平均80時間以上の残業などが「過労死ライン」とされている。

地方公務員災害補償基金熊本県支部は2024年3月に「長時間の残業によって精神疾患を発症し、その結果、自殺に至った」として職員の自殺を公務災害と認定。2025年に入り、遺族の代理人弁護士が県教委に損害賠償を請求していた。

そして、10月10日に県教委が亡くなった男性の妻と長女に謝罪し、両者が合意書に調印。会見で、遺族は「和解ではなく、今の時点での合意をした。今後の県の長時間労働への対応を見極めたい」と話した。

「亡くなる前日に3人で写真を撮った」

亡くなった職員の妻は「さきほど県の人から謝罪を受けました。そして今、調印をしました。けれども、亡くなった夫が帰ってくることはない」と話した。

また、「亡くなる前日が娘の成人式で3人で写真を撮った。休みの日ですが〈仕事がある〉と(単身赴任先の)天草に戻った。(夫が亡くなってから)長時間労働の実態を知らされた。『そんなに働いていたんですか』と思わず言った」と、夫が亡くなった直後を振り返る。

亡くなった職員の娘は「謝罪で終わりでなく、労働環境をどう改善するのか考えて、父の死を無駄にしないでほしい」と話した。

県教委は、2023年度から再発防止策として、県内の教育事務所の職員を増員。月80時間以上残業をした職員の上司に、教育理事などが助言・指導をするなどしているという。

悩みごとを抱えたら、1人で悩まずに相談窓口、『いのちSOS』などにご相談してほしい。

(テレビ熊本)

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