熊本県天草教育事務所の職員がおととし、長時間労働によって自殺し、その後、公務災害に認定されました。熊本県教育委員会は10日、職員の遺族に対し謝罪。解決金約1億円を支払うことで合意しました。
【遺族(妻)(55)】
「さきほど県の人から謝罪を受けました。そして今、調印をしました。けれども、亡くなった夫が帰ってくることはない」
遺族の代理人弁護士によりますと、熊本県天草教育事務所に勤務していた男性職員(当時51)が2023年1月に自ら命を絶ちました。
職員は亡くなるまでの数カ月間のほとんどで残業時間が100時間を超えていたということです。
厚生労働省の労災認定基準では直近1カ月で100時間、または2カ月から6カ月間で平均80時間以上の残業などが「過労死ライン」とされています。
地方公務員災害補償基金熊本県支部は去年3月、「長時間の残業によって精神疾患を発症し、その結果、自殺に至った」として職員の自殺を公務災害と認定。ことしに入り遺族の代理人弁護士が県教委に損害賠償を請求していました。
そして、10日県教委が亡くなった男性の妻と長女に謝罪し、両者が合意書に調印。
会見で、遺族は「和解ではなく、今の時点での合意をした。今後の県の長時間労働への対応を見極めたい」と話しました。
【遺族(妻)(55)】
「亡くなる前日が娘の成人式で3人で写真を撮った。休みの日ですが〈仕事がある〉と(単身赴任先の)天草に戻った。(夫が亡くなってから)長時間労働の実態を知らされた。『そんなに働いていたんですか』と思わず言った」
【遺族(娘)(23)】
「謝罪で終わりでなく、労働環境をどう改善するのか考えて父の死を無駄にしないでほしい」
〈あとコメ〉
県教委は、2023年度から再発防止策として県内の教育事務所の職員を増員。月80時間以上残業をした職員の上司に、教育理事などが助言・指導をするなどしているということです。
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