福岡市内の保育園で、2人の保育士が、園児の容姿を“いじる”など、不適切な発言を繰り返していたことが、ボイスレコーダーの録音で発覚した問題。園は、保護者に対する緊急の説明会を開催した。しかし、具体的な回答はなく、保護者は、「一体、何が起きているのか分からない」と我が子を託す保育現場への不安を募らせている。

保育士A「カメレオンに似てる」

2025年10月7日午後7時過ぎ。福岡市内の閑静な住宅街にある保育園で開かれた緊急の保護者説明会。議題は、2人の保育士による園児への“不適切な”言動についてだ。

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▼保育士A「カメレオンに似てる」

▼保育士B「褒め言葉よ(笑)。アンタはさ、(髪を)結んだら痛いとか、なんとか言いそうだから嫌だ」

これは2025年9月、保育園内で2人の保育士が、わずか2歳の女の子に向かって話していたボイスレコーダーの録音内容だ。保育士Bは、さも面白そうに笑っている。

女の子の母親が、保育園に通い始めて3ヵ月が経った8月下旬、娘の様子に異変を感じ、娘のお守りにボイスレコーダーを入れて、保育園に預けたことで発覚した。

「最初に入園した時は、保育園の鞄を見るだけで喜んで、自分で玄関に持って行くという行動をしていたが、9月のちょっと前ぐらいから『嫌だ、嫌だ、嫌だ!』って言って、のけ反ったり、泣いたりとか…」。母親は、「何かおかしい」と違和感があったという。

娘が帰宅し、録音を再生した母親は、あまりの内容に絶句した。

▼2歳児「いやあ!」(娘が叫ぶ声)

▼保育士「そういう話をお母さんにしてもらいなさい。アンタのお母さんも喚いて言わんかったら、よかことしか言わんけん」

保育士は、泣いている子供に対して、「なに?訴えてこないで!」と口走っている。

暴言はそれだけではない。更に録音を再生すると…

▼保育士A「顔がお魚になってる」

▼保育士B「元からこんな顔です」

▼保育士A「マンボウみたいよ」

信じられない言葉が、次々と飛び出していた。

「容姿のことを馬鹿にしたり、笑ったり…、娘の立場に置き換えたら、正直、普通じゃいられなくて…。録音を聞いた時は、涙が止まらなかったのが本音」と母親は、憤りを隠さず話す。ボイスレコーダーには、他にも「親として許しがたい」音声が数多く記録されていたという。

園が保護者説明会を開くも…

この音声を入手したテレビ西日本報道部は、9月末にこの問題を放送。保護者会は、その翌日に開催が決定している。今回、開かれた説明会には、約50人が参加した。

保護者説明会でのボイスレコーダーの録音では、園の理事長が、「この度、当法人の施設におきまして、職員が保護者の方々を不安にさせてしまう、そういった事例がありました。皆様に大変深くご心配をお掛けしたことに対しまして、法人代表として、深くお詫びを申し上げさせて頂きます」と冒頭、挨拶している。

保護者からは、「放送を受けて、初めて問題を認識した」と怒りの声が飛ぶ。ある保護者は、「園からのお知らせだと、『会話に不適切な発言がありました』で、突然、『説明会を開きます』という内容だった。報道という言葉で出てると思うが、皆さん、多分、何かを察して『これじゃない?え?うちの園なの?』みたいな感じでモヤモヤして、皆さん来られた。この園で起こったことと認めると言うことで、よろしいですか?」(保護者A)と憤りを露わにした。

それに対して理事長は、「2人の職員が不適切な行動があった。報道されていることは事実、間違いない」と事実関係を認めた。それでも納得しかねる別の保護者が、「ニュースを聞いて凄く心を痛めて。直接、自分の子は言われてないかもしれないが、内容が分からないので。愛情を持って接して下さっている先生もいると思うが、やはり、こういう状況が起きてしまうと、凄く心が痛んで誰も信用できなくなって…。管理体制がどうだったのかというのは、後日でいいので説明をして頂かないと納得ができない」(保護者B)と発言している。

一方、問題となった不適切な発言の具体的な内容については、別の保護者が、「現時点で、具体的な内容に対して、何も回答できないってことですか?」(保護者C)と尋ねたが、理事長は、「調査が終わっていないのに答えるというのは、本当に無責任だと思うので、ちょっと、そこは今、お答えしかねます」と肝心な部分には答えず、かわす格好となった。結局、保育園側は、『調査中』との回答に終始した。

福岡県内で相次ぐ不適切発言

1時間以上に及ぶ説明会を受けて、2歳の女の子を通わせている母親は、「時には『自分の子供が言われてたんじゃないか』と不安になってしまって、涙を流す保護者の方もいたが、『何も一切答えられない』という感じで、全然、何を言っているのか、よく分からなかった。何の説明会だったのかと思った」とスッキリしない率直な気持ちを話していた。

保育園は今後、他の園児に対しても不適切な保育がなかったか確認を進めると共に、外部講師を招くなどして、再発防止に努めるとしている。一方、福岡市は、園に対して調査報告書の提出を求めている。

こうした不適切保育は、福岡県内で相次いでいる。2025年8月に田川市の私立保育所で20代の女性保育士が、『児童の頭や頬を叩く』事案が発生。このケースは、教室内の防犯カメラ映像で発覚した。そして9月、こども家庭庁が学校や保育所などの施設に「防犯カメラの設置」を推奨する案を発表している。「子供の性被害」を防ぐことが目的だが、不適切保育にも一定の抑止効果が期待されている。

(テレビ西日本)

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