気分が沈んだとき、安らぎを求めてどこかに行きたいと思った経験はありませんか?自らの経験から地域住民が集える居場所をつくりたいと、書店を開いた女性を取材しました。一般の書店とは少し違った形態の店舗。店主の思いに迫ります。
秋田市民の台所として親しまれる秋田市民市場。その1階に8月、小さな書店がオープンしました。店の名前は「程々(ほどほど)」。
店長を務める大石美和子さんは、秋田市で生まれ育ち、26年間図書館に勤めました。在宅で家族を介護した経験から、家以外で一息つける場所の必要性を感じ、書店を開業しました。
程々・大石美和子店長:
「社会人になって祖父の在宅介護をするようになり、色々気持ちが参っていた時に、家と職場以外の居場所が欲しくなった。居場所というのを意識するようになったことが、店を開こうと思ったきっかけ」
店の中央には、レシピ本や絵本など大石さんが選んだ本が並び、読書ができるカウンターも設置されています。
山崎友海也アナウンサー:
「程々では一般の書店では見られないある特徴があるんです。それがこの本棚!置かれているものをよく見ると、ふぐ屋のポン酢。そして手作りのひまわりのブローチなど、本以外のものが並べられています。大石さん、本棚には個性的な商品が並んでいますが?」
程々・大石美和子店長:
「こちらは一箱オーナー制度というものです。一つ一つの箱を借りてもらって、借りた人が自由に本や雑貨を販売できる仕組みとなっています」
程々で取り入れている「一箱オーナー制度」。決められた料金で本棚をレンタルし、本だけではなく、自分の好きなものを棚に並べることができます( 書籍の陳列・販売は2100円、書籍以外の物販の場合は3400円)。
なぜこのような取り組みを始めたのでしょうか?
程々・大石美和子店長:
「元々居場所をつくりたいという思いがあり、本や物を通して人と人が緩やかにつながれる。人とつながるのに適した仕組みではないかと思い導入した」
現在、棚はほぼ埋まっている状態です(10月7日現在)。
どんなものが並んでいるか見てみると、日本在来馬の情報をまとめたガイドブック。日本固有の馬が大好きな棚主が自費で制作した本で、日本在来馬をより多くの人に知ってほしいと出店しました。
一方、「アートの小部屋」と書かれた引き出しには、棚主がハンドメイドしたブローチが並んでいます。
大石さんは自分の好きなものを並べられる「一箱オーナー制度」は、棚主の“推し活”に利用でき、訪れた人も誰かの好きを楽しむことができると話します。客と棚主が貸し棚を通じて交流できる“居場所”をつくることが、大石さんの目標です。
程々・大石美和子店長:
「自分がそうだったように、すごく頑張ったりつらかったりしたときに、ちょっと肩の力を抜いてふらっと立ち寄ってリラックスできる場所を提供したい。一箱オーナーの棚主同士と、棚主と客とのつながりができるような仕組みをつくっていきたい」
ふらりと立ち寄れて、心地よく、そして自分の好きを発信できる居場所を。「程々」は地域の人に憩いの場を提供します。