今年は関西から2人の受賞者が出る中、ノーベル文学賞の候補として期待が高まっていた、こちらも関西出身の作家・村上春樹さん。
受賞は逃しましたが、村上さんは「関西出身」なのに、「小説に関西弁が出てこない」という声が。
村上さん自身も「僕はどうも関西では小説が書きづらいような気がする」と過去にエッセイで記しています。“関西弁”が小説に影響するというのです。
一方で東京でビジネスに“関西弁を活かそう”という動きも。「笑いがあると関係構築が2倍加速する」といい、“笑いにつながりやすい”関西弁が武器になるそうです。
■ノーベル文学賞の有力候補にあがる村上春樹さん 京都生まれ西宮や芦屋で育つ
村上春樹さんは京都市で生まれ、その後兵庫県の西宮市や芦屋市で育ちました。
「風の歌を聴け」のデビュー作以来、「ノルウェイの森」や「1Q84(イチキューハチヨン)」など数々の名作を生み出し、毎年のようにノーベル文学賞の有力候補にあがっています。
芦屋市の公園には村上春樹さんの名前が刻まれた案内板がありました。
【記者リポート】「兵庫県芦屋市の公園です。ありました!村上さんの名前が書かれています」
デビュー作「風の歌を聴け」に書かれた公園です。
■村上さんの母校には“長年眠り続けている受賞祝いの垂れ幕”が
村上さんの母校である西宮市の小学校では、村上さんにまつわるクイズが掲示されています。さらに校長室には、受賞に備え、大きな垂れ幕が保管されていました。
【西宮市立香櫨園小学校・橋野泰輝校長】「春樹さんが受賞した時にはどーんっと校舎にかける垂れ幕でございます。14~15年前だと思うんですけどずっとあります」
(Q先生は見たことある?)
【西宮市立香櫨園小学校・橋野泰輝校長】「見たことないんです」
校長室に眠り続けていた垂れ幕を特別に見せてもらいましたが、思った以上の大きさで、中庭へ移動することに…
【西宮市立香櫨園小学校・橋野泰輝校長】「初めてみました。大きいですね。早くかけたいです。子供たちも偉大な先輩を知ってほしいです」
村上さんはこの小学校の1期生で、母校からも期待の声があがっています。
■村上さん通った神戸のピザ店 店主が語る「村上さんから関西弁を感じない」
そして村上さんが通っていた神戸市内のピザ店。オーナーが村上さんが座った席を案内しながら、思い出を語ってくれました。
【オーナー・山中崇裕さん】「男性の方が一人で座られたので、珍しいのでよく覚えています。シーフードピザを食べたと本に書いていただいているんですけど、その通り、シーフードピザを出したのが記憶にあります」
この店は村上さんのエッセイにも登場し、ノーベル賞発表の日には毎年村上さんのファン、「ハルキスト」が集結します。
ここでオーナーから、村上さんの印象について気になる言葉が…
【オーナー・山中崇裕さん】「関西の方じゃないのかなという雰囲気が(した)。関西弁を感じたことがなかったですし、作風も僕が読んだ限り関西の雰囲気が出てるようなところは気付かなかった。なんでなんでしょう(笑)」
■関西出身なのに…村上さんの作品に“関西”を感じない?
関西出身の村上さんの作品に“関西”を感じない?
ファンに聞いてみると…
【ファン】「関西弁は確かに出てこないかもしれないですね」
【ファン】「あんまり記憶ないですね。主人公にはいないですね」
このことについて、村上さんは過去のエッセイに記しています。
【村上春樹さんの著書「村上朝日堂の逆襲」より】「僕はどうも関西では小説が書きづらいような気がする。これは関西にいるとどうしても関西弁でものを考えてしまうからである。
関西弁には関西弁独自の思考システムというものがあって、そのシステムの中にはまりこんでしまうと、東京で書く文章とはどうも文章の質やリズムや発想が変わってしまい、ひいては僕の書く小説のスタイルまでががらりと変わってしまうのである」
■「関西弁のキャラクターにはステレオタイプがある」と専門家
村上春樹さんの作品を研究している専門家によると、関西弁のキャラクターには一定のイメージが出てしまうといいます。
【放送大学・大阪学習センター金水敏所長】「関西弁のキャラクターというのはステレオタイプというのがあって、例えばお金に細かいとか、食べ物にうるさいとか、よくしゃべるとかお笑い好きとか厚かましいとか。
関西弁のキャラが出てくると、なぜ関西弁のキャラを出したかというとこういう人物だからだっていうことを読者に予測させてしまいますよね」
“関西弁”の持つイメージがキャラクターの性格や性質と結び付けられてしまうというのです。一方、そのイメージも変わってきていると指摘します。
【放送大学・大阪学習センター金水敏所長】「お話が面白くてにぎやかで人懐っこい。関西弁好きっていう人が日本中で増えてきたが羨ましいと思っている、真似したいと思ってる」
■関西に住んだことのない人にイメージを聞いてみると「フレンドリー」
実際に、関西に住んだことのない人にイメージを聞いてみました。
【福岡県出身・20代】「『なんでやねん』とかイントネーションがかわいいです」
【千葉県出身・50代】「初対面でもなんかフレンドリーなイメージがあります」
【東京都出身・20代】「しゃべれるものならしゃべりたいですけど、なかなか昔から住んでないと難しいんじゃないですかね」
■「しゃーないな」東京のビジネスシーンであえて関西弁を取り入れた営業研修
そんな関西弁が、いま東京のビジネスシーンで意外な活躍をしているといいます。
企業研修で営業スキルなどを指導する鈴木敏秀さんによると、関西弁を使うことで商談がスムーズに進むそうです。
鈴木さんは東京で、あえて関西弁を取り入れた営業研修を実施しています。
【ラシックマーケティング 鈴木敏秀社長】「笑いがあると仲良くなる。関係構築ができるのが2倍ぐらい加速するよと言ってまして、関西弁は笑いにつながりやすいので、ビジネスの商談のなかに笑いを入れてみようみたいな」
具体例も紹介してくれました。まずは、「しゃーないな」という言葉。
【ラシックマーケティング 鈴木敏秀社長】「クレームが起きて、『申し訳ございませんでした』と営業が上司に報告する。そのときに上司が『お前何やってんだ!二度とやるなよ』と怒る人もいるかもしれませんが、そのときに言うといい言葉が『しゃーないな』と許す」
これを聞いた福岡出身の田中アナは、「その上司、『好きー!』ってなります」と好印象のようです。
■「知らんけど」もビジネスシーンの関係構築に役立つと鈴木さん
さらに、3年前流行語大賞でトップ10入りした「知らんけど」もビジネスシーンで重宝されているそうです。
【ラシックマーケティング 鈴木敏秀社長】「熱心にアドバイスしてあげているときの最後に『知らんけど』みたいな。あなたが責任持つんですよみたいな感じに使うと非常にいいので、『知らんけど』は東京の人に人気あります」
関西ならではの絶妙な間や落ちのある話し方は印象に残りやすく、東京のビジネスシーンでも客や同僚との関係構築に役立つのだそうです。
田中アナに感想を聞いてみました。
【田中アナ】「言葉の語尾にちょっと関西弁入れるだけで、急に仲良くなれたり、仕事もやりやすくなるんだなっていうのをすごく感じました。
今日からやってみようと思います。『まぁ、知らんけど』。なんか使い方ちょっと違う気がする…」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年10月9日放送)