長崎市にある諏訪神社の鎮座400年、そして被爆80年という節目の年の 「長崎くんち」が7日開幕し、6つの踊町が踊りを奉納した。
6つの踊町が奉納 1番手は新橋町「阿蘭陀万歳」
秋の涼やかな風が感じられる中、午前7時、長崎くんちは新橋町の阿蘭陀万歳から始まった。

長崎検番の芸妓衆があでやかに舞うと、ユーモラスな表情の万歳と才蔵が登場。

長崎に流れ着いたオランダ人が生計を立てるため、万歳をして家々を回る様子を表していて、異国情緒たっぷりの踊りだ。
諏訪町「龍踊」青と白2匹が天高く舞う「双龍の舞」
総勢200人が参加する諏訪町。

かわいらしい子龍に、青と白2匹の龍が踊り場で天高く舞った。

龍の動きを止めることなく龍方(じゃかた)が瞬時に入れ替わる「棒交代」や、青龍と白龍が一緒に登場する「双龍(そうりゅう)の舞」など、息もつかせぬ動きに会場からアンコールを意味する「モッテコーイ」の大きな歓声が上がった。

山下寛一 総監督は「朝からとにかく声を出せと、出したら緊張感が少しはほぐれるよと言っていたので、朝の教訓が生かされたのではないか」と満足の出来に胸をなでおろした。
新大工町「詩舞・曳壇尻」5回転半が成功!
3番手は新大工町の詩舞と曳壇尻。

20人の根曳全員が初挑戦だが、息のあった力強い曳き回しを披露。5回転半を成功させた。
白采添根曳の児島正吾さんは「初めてとは思えないぐらいみんなしっかりやってくれた。天気もいいので充実した3日間にしたい」と話した。

詩舞は女性10人の舞人が、扇を手に凛々しくも美しい所作で群舞を披露した。
榎津町「川船」網打は一網打尽
榎津町は「川船」を奉納。

網打船頭の小学3年・古賀優多くんが最初の見せ場「網打ち」に挑んだ。

波の助けもあり、見事、一網打尽に仕留めた。

古賀優多くんは「諏訪神社で稽古した時は左右には人はいなかったけど、本番は四方に人がいたので緊張した。くんち3日間では、全部鯉を捕る自分を見せたい」と意気込んでいた。

根曳を務める父・友一朗さんはそばで見守り「息子の方がしっかり努力してきているので感無量。家族みんなで町民一体となって楽しいくんちにしたい」と話した。

榎津町の船は1951年(昭和26年)に作られ、現存する7つの川船の中で最も古いといわれている。伝統の右回しで軽快に船を回し、くんちファンから大きな歓声が上がった。
西古川町「櫓太鼓・本踊」旭道山の化粧まわしをつけて“弓取式”
相撲とゆかりの深い西古川町のだしものは、「櫓太鼓」と「本踊」だ。

戦禍のウクライナから避難してきた高校生・エゴール・チュグンさんが弓取式に初挑戦。

相撲を続けられる感謝の気持ちを込めた。化粧まわしは、元力士の旭道山さんが実際に使っていたものを譲り受けての奉納となった。

9人の子供たちは、本踊・長唄「諏訪舞清流晒女(すわにまうきよきながれのさらしめ)」をきらびやかに舞った。
賑町「大漁万祝恵美須船」鯛を釣り上げ、大漁を祝う
トリを務めるのは、賑町の「大漁万祝恵美須船」。

長崎くんちで唯一「海の漁」を表す船だ。賑町は多くの子供たちが登場するのが特徴で、囃子などもあわせると59人にもなる。
踊り馬場に活きのいい海の幸が並び、えびす様が立派な鯛を釣り上げた。

20人の根曳が最重量級4.5tの舟を地響きをあげながら豪快に回すと、大勢のくんちファンから「モッテコーイ」の声が響き渡った。
「流鏑馬」競走馬を引退した馬が登場 父は…
だしもののあと、諏訪神社の境内では、疾走する馬から的をめがけて矢を放つ「流鏑馬」が奉納された。

長崎のまちの発展やくんちの成功などを願うもので、6人が射手を務めた。

45cm四方の的の中央に扇がある「仕掛け的」を射抜くと紙吹雪が舞い、会場は大いに沸いた。

馬にも注目。競走馬を引退した「レッドジェネシス」だ。父は「ディープインパクト」。諏訪神社での初めての奉納も、力強い走りで魅了した。

長崎諏訪流鏑馬奉賛会の本田殖也代表は「馬自体も緊張していたかと思うがよく頑張ってくれた」と話し、節目のくんちに相応しい流鏑馬ができたと安心した様子だった。
ご神体がお旅所へ「お下り」
午後は、諏訪・住吉・森崎の3体の御神体をのせた神輿をお旅所へ運ぶ「お下り」だ。

午後1時。神輿守町の担ぎ手たちが、諏訪神社の長坂から下りてきた。

神輿の下をくぐると御利益があると言われていて、神輿が行く先々で人が集まる。訪れた人たちは「家族が健康でありますように」「推しをいつまでも推せるように願った」と話し、ご利益をあやかった。

3体の御神体は無事、お旅所に安置された。
町のシンボル「傘鉾」がパレード
6つの踊町の「傘鉾」が勢ぞろいした。

傘鉾は町のシンボルだ。「飾(だし)」と呼ばれる飾りや、刺繍などが施された「垂(たれ)」で町の歴史などを表している。

諏訪町の傘鉾は、垂には白狐が伝統の長崎刺しゅうであしらわれている。傘鉾を間近で見られるのが「傘鉾パレード」の醍醐味だ。

傘鉾の重さは100kg以上。一人で担ぎ「ヨイヤー!」の掛け声で勢いよく回すと、沿道の人たちは見入っていた。
くんちは9日までの3日間で、長崎は祭り一色に包まれる。
(テレビ長崎)