令和元年創業ながら懐かしい雰囲気に満ちた喫茶店が鹿児島市にある。昭和っぽい内装に懐かしのゲーム機、昔ながらの味のナポリタンが人気で幅広い世代に愛されている。

昭和の空間を再現した喫茶店

鹿児島市玉里団地の小さなアーケード街にたたずむ「喫茶店ぽっけ」。中に入ると、木目のカウンター、大理石風のテーブル、赤い座面のレトロな椅子、温かみのある電球色の明かりが出迎えてくれる。どこを切り取っても「ザ・昭和」という雰囲気だが、創業は令和元年と新しい。

令和元年創業の喫茶店ぽっけ
令和元年創業の喫茶店ぽっけ
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マスター夫婦の思い出から生まれた空間

お店を営むのは、有里武志さんと妻・律子さん。これまでも飲食店で働いていた2人が夫婦で店を出すと決めたときイメージしたのは、子どもの頃家族と行った喫茶店。

幼い頃、何かと言うと親に喫茶店に連れて行かれたイメージがあるという武志さん。「家にはないものがいっぱい出てきて、ワクワクした」と振り返る。内装の壁紙やクロスに、今ではあまり見かけない「昭和っぽい」ものを選んだのは「昔の喫茶店の特別感というか、ぜいたくしてる感みたいなのが欲しくて」。もちろんコーヒーにはこだわるが、カフェでもコーヒースタンドでもなくあくまで「喫茶店」なのだ。

有里武志さんと妻・律子さん
有里武志さんと妻・律子さん

レトロゲームから珈琲チケットまで昭和の詰め合わせ

昭和へのこだわりはほかにも。インベーダーゲームの貯金箱に、ミニファミコンなどが並ぶコーナーもある。中でも密かな人気なのがルーレット式のおみくじ器。自分の星座のイラストの上にある溝に100円入れレバーを引くとおみくじが出てくる、正に昭和の喫茶店の「定番アイテム」。もちろん実際に使える。

ルーレット式のおみくじ器
ルーレット式のおみくじ器

そしてレジの横には「珈琲チケット」が並ぶ。1冊5000円で500円の飲み物が11杯飲めるので1杯分お得。昭和の喫茶店の常連さん必須アイテムだ。とはいえ、支払いはキャッシュレスにも対応し、令和の利便性もちゃんと取り入れている。

人気の「珈琲チケット」
人気の「珈琲チケット」

記憶の中の味を再現したメニュー

朝7時から営業するぽっけ。午前11時までにドリンクを頼むとトーストとで卵がサービスでついてくる。この日も昭和の時代の着物を着こなした常連さんがカウンターでコーヒーを飲みながらくつろいでいた。「最初にコーヒーを飲んだ頃に行っていた(喫茶店の)雰囲気をどこかで感じているのかもしれない」と話す。

ゆったりと自分の時間を過ごす
ゆったりと自分の時間を過ごす

自家焙煎のコーヒーは1杯ずつ布のフィルターを使ったネルドリップ方式で入れている。クリームソーダ、レモンスカッシュ、牛乳と卵、砂糖を混ぜた懐かしくて優しい甘さのミルクセーキと、メニューも昭和感たっぷりだ。

奄美から取り寄せたパンで作る「のりトースト」(税込550円)も楽しめる。2024年閉店した東京・神田の老舗純喫茶「エース」直伝のレシピという。

そして看板メニューが「鉄板ナポリタン(単品)」(税込900円)。「昔のナポリタンって甘さがあった気がして、ケチャップだけだと酸味が強くて、ちょっと違うなと色々まぜて。あのとき食べたのを食べたい、みたいな感じ」と武志さん。昔、喫茶店で食べたあの味に近づけるため、試行錯誤して作り上げたという。タマネギ、ピーマン、ウインナーと麺を炒め鉄板に敷かれた薄焼き卵の上にのった一品は、午前中で売り切れることもある人気メニューだ。

幅広い世代に愛される空間

全日本コーヒー協会によるとピークの昭和50年代後半には全国に15万店以上あったという喫茶店も令和になると6万店を下回った。でもひき立てのコーヒーの香りが漂う落ち着ける空間は、多くの人の記憶に残る特別な場所だ。そして「喫茶店ぽっけ」は若い人にも愛されているのだ。

「最初はやっぱり『懐かしい』って方が来られるのかなと思っていたんですが、『レトロが新しい』とか『レトロがかわいい』とかで若い子たちが来ると新鮮だなと思う」と律子さんは話す。

店名の「ぽっけ」には、"エプロンのポケットに入った小銭で気軽に来てほしい"という思いが込められている。令和にオープンしたのに、どこか昭和を感じる喫茶店。そこは、昭和の喫茶店に魅せられたマスターの懐かしさと優しさが詰まった空間だった。

(動画で見る:【ザ・昭和】 令和生まれの“昭和を感じる”喫茶店 子供の頃の懐かしさを再現

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鹿児島テレビ
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